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雇用の多様化 第1節 非正社員の現状

ドキュメント内 論文要旨 (ページ 51-77)

1.非正社員の分類

非正社員とは、正社員ではない雇用形態の労働者を指す。しかし、非正社員にははっき りとした定義はなく、正社員以外の労働者、という答え方が最も端的な表現である。正社 員は雇用期間を限定せず、直接企業と労働契約を結んでいる雇用形態をとる従業員と定義

されている。そのため、この定義に当てはまらない労働者全員を非正社員と呼ぶ。しかし、

非正社員は一様ではなく、パートタイム労働者、派遣労働者、契約社員など様々な分類が ある。これらの分類は契約方法や契約先など、それぞれに異なった特徴を持ち、業種や業 態によって主流となる雇用形態はそれぞれ異なる。

非正社員の雇用形態の分類は図表311の通りである。経済産業省経済産業政策局の調査に よると、雇用者として企業で働いている人のうち、役員と正社員を除いたすべての従業員 が非正社員として扱われている。規制緩和がも̀たらした雇用形態の変化は、 1997年から 2001年にかけて正社員の170万人の削減と非正社員の200万人の増加をもたらした。非正 社員の具体的な数は2005年の時点で1633万人とされており、 1994年の981万人と比較

しても、急速な増加である。

非正社員の主なものにはパートタイマーやアルバイトとしての就業形態(以下、 「パート タイム労働者」と称す)や派遣としての就業形態(以下、 「派遣労働者」と称す)、契約や 嘱託としての就業形態(以下、 「契約社員」と称す)があり、臨時や日雇いの労働者、請負 労働者はその他に分類されている。パートタイマーやアルバイトは、ここではパートタイ ム労働者として一括して表現するが、パートタイマーは主に主婦層に対して、アルバイト は学生の非正社員に対して用いられる呼称である傾向が一般的に強い。また、派遣労働者 と請負労働者の違いは労働者の受け入れ先が直接指揮命令するかしないかにある(図表 3・2)。しかし,請負業者が雇用や労働条件などの責任を負担するはずの請負で、注文者が請 負業者に雇用される労働者を直接指揮監督して仕事をさせる偽装請負が大きな問題となっ

ている1。

また、非正社員は雇用形態以外の要素、すなわち個人の生活に占める労働時間や勤労意 欲によっても分類することができる。図表3・3は勤労意欲を縦軸に、労働時間を横軸にとり, 非正社員をタイプ別に分けたものである。図から労働時間の長さと勤労意欲は相関してい るとは限らないことが分かる。勤労意欲が高い非正社員は基幹労働力化され、正社員とほ とんど代わらない職務や責任で働き、仕事の遂行能力も身につけていく。特に、労働時間 も長時間で正社員と同様に8時間労働が可能な非正社員は擬似パートと呼ばれ、仕事ぶり を見ただけでは正社員との判別がつきかねるなど、企業にとっては正社員に取って代われ る重要な戦力となりうる。このようなタイプの非正社員は、仕事に対して賃金だけでなく

1中野麻美、 『労働ダンピングー雇用の多様化の果てに』、岩波書店、 2006年、 5ページ、

95ページ。

やりがいを求めるため、企業側の適切な教育訓練などの実施が、非正社員のより高いパフ ォーマンスを引き出すことを可能にする。

しかし、非正社員の中には勤労意欲が高い労働者ばかりが存在するわけではない。 8時間 労働が可能でも、賃金も職務も「それなり」 「そこそこ」を求める労働者である。また家事 や育児の片手間に家計補助などを目的としたパートタイム労働者も多い。仕事に求める見 返りは人それぞれである。労働者は様々な価値観を持って働いているため、 「勤労意欲が低 いこと‑悪いこと」と言い切ることはできない。このようなタイプに分類される非正社員 には、責任が伴う業務を押し付けるよりは、定型的な補完業務を任せた方が労使双方にと ってメリットになる。労働時間の長短という一面だけで労働者を判断し、業務内容を区別 することは大きな危険を伴うと考えられる。

【図表3・1】雇用形態別の構成

(出所)経済産業省経済産業政策局「労働に関する参考資料・分析結果2006年12月15

日」 20

2経済産業省経済産業政策局「労働に関する参考資料・分析結果2006年12月15日」

蜘f

(2006年12

月24日確認)

【図表3・2】雇用形態別・雇用関係の違い

(出所)中野麻美、 『労働ダンピング‑雇用の多様化の果てに』、岩波書店、 2006年、 95 ページ、図3・1。

【図表3・3】非正社員の類型

(出所)筆者作成。

2.非正社員の増加の実態

非正社員は雇用形態や労働時間等によって様々な分類が可能であることは前述の通りだ が、非正社員はこれらの分類によらずとも増加の一途をたどっている。この急速な増加は 近年の労働市場の最大の変化であるとさえ言われており、 「雇用形態の多様化」の名のもと、

非正社員の構成や質は絶えず変化してきている。

雇用者における非正社員の割合の高まりは、図表3・4より明らかである。正社員の削減と 平行して進んできた非正社員の台頭は、たった三十年間で雇用者に占める割合を‑割以下 から三割強にまで押し上げている。具体的な数字としては、 1994年には981万人だった非 正社員は、 1999年には1335万人、 2003年には1637万人と増え続けた。その結果、 1994 年に四人に一人だった非正社員は、 2003年には三人に一人となった3。

このような急速な非正社員の増加には、労働力の需要側と供給側双方にその理由を求め ることができる。まず、需要側としての企業が非正社員化を推し進めた第一の理由として 考えられることは、不況を原因とした人件費削減の実現である。厚生労働省の「平成15年 就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、企業にとっての非正社員の雇用理由 で上位に上がったのは、賃金の節約と仕事の繁閑‑の対応、そして景気変動に応じた雇用 量の調整のための三点である4。実際、非正社員は正社員のおよそ三分の一のコストで雇用 することができ、労働時間や休日数、勤務体制などは正社員に比べて柔軟である。つまり 企業にとって非正社員とは、人件費の削減に効果的な景気調節のための安全弁として利用 されているものと考えられる。

そして第二に、営業時間や閉店時刻の規制が緩和され、年中無休、 24時間営業の店舗が 出現してきたことが挙げられる。特に24時間営業は、一日8時間フルタイムの固定的な勤 務時間の正社員だけでは対応しきれず、勤務時間が柔軟で、なおかつ細切れの労働時間で 働くことが可能な非正社員が企業にとって不可欠となったのである。

供給側の労働者にも二つの理由を挙げることができる。第一に、非正社員としての就業 形態を望む労働者の急増である。この労働者に当たるのは女性と高齢者である。既婚女性 は古くからの家族内の性別役割分業によって、正社員としての労働は物理的に困難な状況 に立たされている。そのため、家事・育児と仕事の両立を目指さなくてはならない既婚女 性は、正社員よりも柔軟に働くことができる非正社員の就業形態を選択せざるをえない。

また高齢化の進展で増え続ける高齢者の中には、体力面などの理由から短時間労働を望ん でいる人が多い。

厚生労働省の「中高年者縦断調査」によると、五十代のおよそ七割が60歳以降も仕事を

3労働政策研究・研修機構、 「労働政策研究報告書No.68 2006 雇用の多様化の変遷: 1994

‑2003」、 1ページ。

4厚生労働省「平成15年就業形態の多様化に関する総合実態調査結果の概況」

蜘tml (2006年12月

24日確認)

続けたいと考えている5.そのため自分の生き方に合わせて働くことを望む高齢者は、今後 団塊の世代の定年を迎えていく中でますます増加すると考えられる。

このように非正社員という雇用形態を選択してまで働こうとする労働者には、世帯主の 収入の伸び悩みや年金‑の不安という事情があるo不況を原因とした家計補助のための短 時間労働の需要の増大、これが供給側の第二の理由であるo

【図表3‑4】正社員と非正社員の比率

(出所)経済産業省経済産業政策局「労働に関する参考資料・分析結果2006年12月15

日」 6を若干修正D

【図表3・5】雇用者数と雇用形態の推移

60000000

50000000

40000000

< 30OOOOOO

20000000

1 0000000

0

1971 1982 1987 1992 1997 2002

国その他

■契約社負・嘱苫モ ロ派iL労働者 ロバート・アルバイト III正社員 E9会社な

(出所)総務省統計局「就業構造基本調査平成14年」 7o

5 『日本経済新聞』、2006年12月20日o

6経済産業省経済産業政策局「労働に関する参考資料・分析結果2006年12月15日」

h伽JhrwwmetiROjpkommitteehnaterialsAownloadSleshr612 18cO6i*f (2006年12 月24日確認)

7総務省統計局「就業構造基本調査平成14年」

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(2006年12月24日確認)

3.正社員と非正社員の処遇格差の問題 同じ職務で職場‑の貢献度が同じであっ あるという両者の処遇格差の問題は深刻 1億7000万円にのぼると言われているo

非正社員の賃金は正社員の約三分の‑で あるc この所得の格差は生涯賃金に換算すると、

図表3・6より、非正社員同士の性差による格差は して非正社員の時間当たり貸金の正社員に対する割合は約44%にとどま っている8oそのため正社員と非正社員の処遇格差の是正が急務とされるが、非正社員の仕 事に対する勤労意欲が個人によってずいぶん異なることは前述の通りである。これが非正 社員の安易な基幹労働力化を困難にし、処遇格差の問題をより複雑にしていると考えられ る。非正社員として働く人は多様な価値観やバックグラウンドを持っている。そのため一 様に処遇を改善し,正社員並みの労働時間や仕事の水準を求めるのは逆に職務満足度を下 げる危険性を伴う.そのため、企業は処遇格差の閉居を認識しながらも、その間題解決に なかなか着手できないのではないだろうかo

確かに、正社員と非正社員を区分する要因として、企業業績‑の共同責任の度合いや, その責任の範囲や重さの違い、企業側の都合による異動や転勤などがあることも事実であ る。しかし、非正社員の特徴として挙げられていた,転勤がないことや勤務時間の自由度 などの低拘束性という従来の特殊性は、現在では正社員にも当てはまるケースが少なくな い。正社員であっても転勤のないキャリア選択が可能となっている企業、フレックスタイ ム制の導入などがそれに当たるc これは正社員と非正社員のボーダレス化が起こりつつあ

ることの表れである。拘束性の高低による賃金格差は合理的であるが、雇用形態の違いに よる格差はもはや意味を成さないD

【図表3・6】労働者の平均所定内給与格差の推移 (一時間当たりの数値、男性労働者を100とした場合)

※厚生労働省「貸金構造基本統計調査」から。

(出所) 『中日新聞』、2006年12月31日。

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(2006年12月25 E]

確認)

ドキュメント内 論文要旨 (ページ 51-77)

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