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「隠ぺい又は仮装の行為者」の範囲

第 6 章 重加算税賦課の現状と問題点

第 2 節 「隠ぺい又は仮装の行為者」の範囲

「隠ぺい又は仮装の行為者」の範囲ついて、通法68条1項において、「・・・納税者 がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺ いし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出して いたときは・・・重加算税を課する。」と定めているが、納税者以外の者が隠ぺい又は仮

3 八ッ尾[2000]、はしがきより。

4 池本[1983]、39頁。

装行為を行い、これに基づいて過少申告が行われた場合には、納税者本人に対して重加 算税を課すことはできるのだろうか。できるとするならば、それはどのような場合に限 られるのかといったことについて、法令上は特に定めはない。

したがって、通法 68 条 1項を文理的に読むと、重加算税の賦課要件である隠ぺい又 は仮装の行為者は、原則として納税者本人が行った場合と理解することができる。しか し、重加算税の賦課要件について、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の隠 ぺい又は仮装の行為があり、結果として過少申告であれば、納税者において過少申告を 行うことの認識までは要しないのであると解すれば、隠ぺい又は仮装の行為者は納税者 本人に限定されないことになる。一方、納税者の責めに帰することのできない事由によ る隠ぺい又は仮装の場合や、隠ぺい又は仮装行為について、納税者がその事実を知り得 ないような場合は、重加算税の賦課は相当でない、という考え方もできる5

そこで、通法上の文言である「納税者」が法人の場合の「隠ぺい又は仮装」の行為者 がいかなる範囲の者であれば重加算税が賦課されているのかを、法人税の判決・裁決を まとめてみる。

(1) 隠ぺい又は仮装の行為者が法人の代表者である場合(平成 5 年 10 月 12 日裁決

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法人の代表取締役として、実質的に経営の主宰者と認められる者の行った売上金額の 除外、個人名義預金等への留保は、当該法人の隠ぺい又は仮装行為となるかが争われた 事例である。

「隠ぺい又は仮装行為者は、納税義務者たる法人の代表者に限定されるものではなく、

その役員又は家族等で経営に参画していると認められる者の行為は、法人の代表者がそ れを知らなかった場合であっても、当該法人の行為と同視されるべきものと解するのが 相当である。」と述べられており、法人の代表取締役として、実質的に経営の主宰者と認 められる者の行った売上金額の除外、個人名義預金等への留保は、当該法人の隠ぺい又 は仮装行為と同視すべきであるとして重加算税賦課を適法としている。

(2) 隠ぺい又は仮装の行為者が法人の役員である場合(静岡地裁昭和 44 年 11 月 28 日判決

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取締役、監査役が法人の所得を隠ぺいした場合、その事実を会社代表者が知らなくと も重加算税を課することができるかが争われた事例である。

原告会社の取締役や監査役が、所得を故意に本社に報告せず、隠ぺいしたことが推認 される。問題は、原告会社の代表者が上記隠ぺいの事実を知らない場合にも、重加算税

5 朝倉[2000]、18頁。

6 平成51012日裁決、『裁決事例集』4615頁。

7 静岡地裁昭和441128日判決、昭和34年(行)第1号、『税務訴訟資料』57607頁。

の規定の適用があるかどうかであるが、重加算税の制度の趣旨が隠ぺい又は仮装したと ころに基づく過少申告、もしくは、無申告による納税義務違反の発生を防止し、それに より申告納税制度の信用を維持するところにあるところからして、隠ぺい又は仮装の行 為を納税者個人の行為に限定すべきではなく、その従業員や家族等が右の行為をした場 合にも納税義務者がそれを知っているかどうかにかかわりなく重加算税が賦課されるも のと解するのが相当である。原告会社の代表者の知、不知に関係なく重加算税は賦課さ れることになり、被告税務署長がなした重加算税の賦課決定は適法である。

(3) 隠ぺい又は仮装の行為者が法人の従業員である場合(大阪高裁平成 13 年 7 月 26 日判決

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経理担当の従業員がした不正経理であっても、法人に対する重加算税の賦課は適法で あるとされた事例である。以下、それぞれの判決について記述する。

① 第一審判決

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重加算税は、違反者に対して課される行政上の措置であって、故意に納税義務違反を 犯したことに対する制裁としての刑罰ではないから(最高裁昭和45年9月11日第二小 法廷判決・刑集24巻10号1333頁参照)、従業員を自己の手足として経済活動を行って いる法人においては、隠ぺい・仮装行為が代表者の知らない間に従業員によって行われ た場合であっても、原則として、法人自身が右行為を行ったものとして重加算税を賦課 することができるものというべきである。本件において、不正経理の行為者は、決算や 確定申告に関わる帳簿資料の作成を任されていた主要な経理職員であって、その隠ぺ い・仮装行為は、長期間にわたって行われ、売上除外額等も多額にのぼり、容易に発見 できるものであったにもかかわらず、X会社は、従業員に経理処理を任せきりにして、

何らの管理・監督もしないまま放置してきたものであるから、X会社に対して重加算税 を賦課することは適法である。

② 控訴審判決

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通法 68 条 1項の趣旨は、加算税を課すべき過少申告行為が課税要件事実の隠ぺい・

仮装という手段で行われた場合に、違反者に行政上の制裁として重加算税を賦課するこ とにより、申告納税制度の適正円滑な運営を図ろうとする法技術上の制度であるから、

納税者において仮装・隠ぺいした事実に基づき申告するという認識を要さず、結果とし

8 大阪高裁平成13726日判決、大阪高裁平成10年(行コ)第67号等、『税務訴訟資料』251 号順号8954。

9 平成101028日判決、大阪地裁平成8年(行ウ)第86号~90号、『税務訴訟資料』238 892頁。

10 大阪高裁平成13726日判決、大阪高裁平成10年(行コ)第67号等、『税務訴訟資料』251 号順号8954。

て過少申告の事実があれば足りるものと解される(最高裁昭和62年 5月 8日第二小法 廷判決・税資 158号 592頁参照)。本件において、X会社は、従業員に経理帳簿の作成 を任せきり、納税の際にも右従業員が作成した経理帳簿に基づき作成された総勘定元帳 や決算書類等で申告を行ったところ、これら経理帳簿等に虚偽の記載が存在したため、

客観的にみて、X会社が仮装・隠ぺいの事実に申告をなしたことになったのであるから、

重加算税賦課の要件を満たしており、本件重加算税賦課決定に違法はない。

最高裁 最高裁平成13年(行ヒ)第306号・平成13年12月20日決定(不受理)。

(4) 隠ぺい又は仮装の行為者が税理士である場合(平成 3 年 7 月 25 日裁 決

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顧問契約を締結している税理士が、重加算税の賦課要件を満たす過少申告をした場合、

これを請求人が認識していたか否かにかかわらず、請求人は重加算税を負うとされた事 例である。

「重加算税賦課制度の目的は、隠ぺい又は仮装したところに基づく過少申告、無申告 による納税義務違反の発生を防止し、それによって申告納税制度の下における納税義務 者の自主性の強化促進を図るとともに、同制度の信用を保持するところにあり、納税義 務者本人の刑事責任を追及することにあるのではないと解すべきである。

上記のような通法第 68 条の立法趣旨にかんがみると、隠ぺい又は仮装の行為をした 者が、納税義務者本人ではなく、その代理人、補助者の立場にある者で、いわば納税義 務者本人の身代わりとして、同人の所得金額の計算の基礎となる事実に関与し、課税標 準等又は税額等の計算に変動を生じさせた者である場合を含むものというべきである。

この場合、納税義務者が納税申告書を提出するに当たり、その隠ぺい又は仮装行為を知 っていたか否かによって、同条項の適用の可否が左右されることはないものと解すべき である。」

さて、以上のように「隠ぺい又は仮装の行為者」の範囲を見てみると、その範囲は原 則的には納税者自身が行った隠ぺい仮装が対象となる。しかし、判例では重加算税制度 の趣旨および目的から納税者以外の者が行った隠ぺい仮装行為であったとしても、それ が納税者本人の行為と同視することができるときには、重加算税の賦課ができるとされ ていることがわかった。

小括

通法68条1項は、過少申告加算税の規定に該当する場合において、「納税者がその国

11 平成3725日裁決、『裁決事例集』4213頁。