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第 4 章 過少申告加算税における「更正の予知」

第 5 節 通達での取り扱い

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このように、この端緒把握説が支持されることについては一定の説得力があり、筆者 もこの説が多くの判決により支持されることに異存はない。しかし、端緒把握説にも弊 害がある。まず、調査着手説について、調査件数の多くの事案において脱漏所得が発見 されているという事実に鑑みると実務上ある程度の説得力を有している。次に、実際の 調査において端緒を把握されたとしても、どの段階でその端緒が把握されたかという判 断を具体的に行うことは非常に難しい。さらに、何をもって端緒把握とするのかは非常 に判断が難しく、実務上の取扱いとして端緒把握説を採ろうとすると返って判断基準が 曖昧になってしまう恐れがある。

そこで、次に裁判事例だけではなく、各種通達において「調査があることにより・・・

更正があるべきことを予知してされたもの」の取扱いがどうなっているのかを確認する。

まず、調査通達1-1の内容は「調査」の意義について下記の通り定めている。

「調査」の意義

(1-1)

(1) 法第 7章の2において、「調査」とは、国税(法第74条の2から法第74条の 6 までに掲げる税目に限る。)に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者 の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分 を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法 令の解釈適用など)をいう。

(注) 法第 74条の 3 に規定する相続税・贈与税の徴収のために行う一連の行為は 含まれない。

(2) 上記(1)に掲げる調査には、更正決定等を目的とする一連の行為のほか、再 調査決定や申請等の審査のために行う一連の行為も含まれることに留意する。

(3) 上記(1)に掲げる調査のうち、次のイ又はロに掲げるもののように、一連の 行為のうちに納税義務者に対して質問検査等を行うことがないものについては、

法第74条の9から法第74条の11までの各条の規定は適用されないことに留意 する。

イ 更正の請求に対して部内の処理のみで請求どおりに更正を行う場合の一連の 行為。

ロ 期限後申告書の提出又は源泉徴収に係る所得税の納付があった場合において、

部内の処理のみで決定又は納税の告知があるべきことを予知してなされたもの には当たらないものとして無申告加算税又は不納付加算税の賦課決定を行うと きの一連の行為。

調査通達 1-1(3)の規定は、同通達 1-1(1)について事前通知や調査終了手続に適 用される場合の「調査」の範囲を制限するものである。該当の通達によると、部内の処 理(内部処理)のみで決定又は納税の告知を行う場合は、無申告加算税や不納付加算税 を課さないことを明確にしている。このことは、明らかに加算税通達の取扱いに反して いる(通達での取り扱い下線部分)21

さらに、調査通達1-2において「調査」に該当しない行為について定められているこ とは、前述したとおりであるが、これらについても要約すると従来の内部調査に基づい て当該納税者に対して過少申告等を指摘して提出された修正申告書等に関して、「更正が あるべきことを予知してされたものでない」などとして、過少申告加算税を課さないこ とを明らかにしている。この取扱いについても、従来の取扱いを大幅に変更するもので

21 この部分について、品川[2015]、133頁では、「国税通則法第7章の2に限定して発出された調査通 達でなぜ明らかにしたのか(明らかにする必要があったのか)定かではない。」として疑問を提示し ている。

ある。

小括

以上のように、「更正があるべきことの予知」の解釈については、判例を見た場合は端 緒把握説が多く支持されているが、この説に則ったとしても、調査が進行し先の申告が 不適正であり申告漏れの存することが発覚し更正に至る場合に、「客観的に相当程度の確 実性をもって認められる段階」をどう判断するかが重要となる。

この判断に関しては、判例の内容及び調査の段階において、認定が調査開始説に限り なく近づいたり、具体的額発見説に近づくことになる場合がある。結局、個々の事案に おいては、訴訟の審理課程における当事者の主張および立証の程度と、裁判所や国税不 服審判所における裁判官等の判断に委ねられることになる。

これに対して、過少申告加算税における賦課決定の基礎となる国税庁の取扱通達につ いては、前述したとおり加算税通達に関して、調査開始説に近い取扱いを指示している が、その後の調査通達において「調査」の概念を大幅に制限するようになった。その結 果、今後の判例を見守る必要があるが、過少申告加算税の「更正の予知」についての免 除規定は従来よりも認められやすくなる、つまりは過少申告加算税の賦課決定における 厳正さが薄れていくのではないかと考える。調査通達による「調査」という言葉の定義 を明確にしたことについて、租税法律主義における予測可能性という観点からは評価さ れるべきである。