第 5 章第4章
2.6 関連研究のまとめ
ここまで多数の研究を例示してきた.チャット併用会議は,デジタルな議事録を作成し たり,遠隔からの議論参加を促す研究の流れの中で,チャット機能を取り入れたところ大 きな効果が得られたことから始まった.バックチャンネルという枠組みから考察が行わ れ,マルチスレッド的側面に有効性があることが分かってきている.
意見の検索においては,構造に基づいて検索するシステムが一定の精度を達成してい る.チャットや議論支援システムを口頭議論と併用する場合においても,どの意見がどの 意見を受けて発言されたのか正確に認識することが重要であり,特に,デジタル・データ と口頭意見との関連づけが重要である.この研究成果は意見の要約に応用することがで
図2.13 Ink Blots
きる.
意見の要約は,様々な自然言語処理的アプローチが存在しているが,辞書ベースによる 言語処理の難しさが報告されている.意味タグや投票によるシステムも合理的な着想では あるが,選択される発言の重要度は聴衆にとっての重要度であって,発表者にとっての重 要度ではない.発表者にとっての重要度は,発表者自身の入力に基づいて行われるべきで ある.
フィードバックでは情報を簡約して表示する研究が行われているが,簡約された情報量 ではチャットから意見をくみ取ることはできない.そのため,チャット上で重要な発言に 対して強調などの視覚的処理を行う方向性が良いと考えられる.あらかじめ指定したキー ワードに基づいて機械学習させる研究が良い精度を達成したと報告されているが,チャッ ト併用会議では音声口頭での議論はチャット・ログ上に存在しないため,名詞の分析とは 異なるアプローチが必要である.
第 3 章
チャットはプレゼンテーション発表 型議論に貢献しているか
チャット併用会議における最初の疑問点は,聴衆と発表者の認識のずれである.聴衆は 発言機会が増えたことからチャット併用会議を評価しているが,発表者はチャットに有用 でない発言があふれることを危惧している.これは,チャット・ログから発表者自身に関 係のあるチャット発言を抽出しづらいため,発表者の視点からはメリットよりもデメリッ トが大きく感じられているのではないかと考えられる.そこで本章では,チャットは議論 に貢献しているかどうかについて検討を行う.