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長崎大学 総合診療科

ドキュメント内 表紙/木下 平島 (ページ 37-56)

大 園 惠 幸 教授

家庭医の専門家からは、大学病院の総合診療科 の在り方については厳しい見方をされますが、日 本での家庭医療は着実に進んでおり、長崎県でも 離島や市内の小さな診療所と組んで、家庭医療の 確立に取り組んでいます。

私が今年の5月に家庭医療学会の会長をしてい た時に、日本家庭医療学会で後期研修プログラム というものが出来ました。このプログラムでは、

レジデント終了後、どのように日本で家庭医療を 根付かせていくかに重点が置かれています。

長崎大学の総合診療科の基本理念は家庭医療が 軸となっています。一般的に大学病院の中で家庭 医療は出来ないと言われますが、総合内科的な症 候診断をきちんと教える部門として非常に重要な 役割を担っています。総合診療科が出来て6年経 ちますが、2年ぐらい前から高次臨床実習(Clini-cal Clerkship)も始まりました。

総合診療科での重要な役割の一つは、他科で原 因不明であった患者様を総合的な視点から診るこ とです。例えば頭痛は内科だけではなく脳外科も関係します。また、心の面から症状が出ている方も いらっしゃいます。糖尿病であっても、心の部分は非常に関係があります。鬱や不安等も総合診療科 にとっては守備範囲になります。心の部分を診ることは難しいのですが、まずは受診された方に自分 が何をしてあげられるのかを考えていくことが重要です。

以前、頭痛の患者さんの問診で、「お子さんは?」と訊いただけでぽろぽろ涙を流された方がいらっ しゃいました。心の面はちょっとしたきっかけで引き出せることがありますし、そのきっかけを導き 出せるようになることが重要なのではないかと思います。

また、長崎では、地域医療と行動科学的な訓練をすることや、全人的といわれる分野にも力を入れ ています。

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大学というと医局の指示の下に働くイメージが ありますが、実際は多種彩々な人がそれぞれの目 的を持って取り組んでいます。スタッフには臨床 心理士、教員や医員、研修医、修練医(後期研修 医)など様々な人がいます。

総合診療科外来では症候診断を重視した診療を 行っています。体の面と心の面の両面から診てい くことは決して簡単ではありませんが、学生や後 期研修医が総合診療科に来てよかったと思われる のは、この症候診断をじっくり学べることにあり ます。

さらに生活習慣についても診ていかなければな りません。家庭医療にしても生活習慣っていうの は非常に重要な要素なのですが、意外と睡眠を生 活習慣に含めていないことが多いようで気になっています。睡眠時無呼吸だけではなく、心の面から 来る不眠や睡眠時の障害なども実際よく経験されます。

総合診療科が普通の内科と異なるところは、家族指向のケアを重視している点です。ですから難し くとも、一つ一つ丁寧に訊くこと、心の問題や生活習慣に目を向けること、こういった面を積極的に 取り入れた診療となります。

長崎大学病院では総合診療科専用の病床が5床 あります。診断が確定していない患者、心理的要 因の大きい患者、睡眠障害の患者、プライマリ・

い部分(救急・耳鼻科・皮膚科など)は、その診療科の専門医を訪ねて訓練しています。

後期研修医が入ってきたときの医局の忘年会の 写真です。自分が家庭医療を切り開いていくのだ という気概のある人が集まり、長崎大学の総合診 療科も少しずつ大きくなっています。

アメリカミシガン大学の家庭医療学科は世界的 に非常に有名で、家庭医療のメッカとなっていま す。私も長崎大学病院総合診療科の担当を任され る前、1999年から2000年にかけて客員研究医とし て、家庭医療の教育や研修そして診療をミシガン 大学で勉強させて頂きました。家庭医療における 診療や研究はもちろん、自分の家庭医療に対する 考え方を整理する上でも大変充実した留学であっ たと思います。

昨年、ミシガン大学家庭医療学科の助教授 Fet-ters先生が日本人健康プログラムに参加するため、

いらっしゃった際のスライドです。

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ミシガン大学でFetters先生や佐野先生との議 論で話題になったのは、日本の家庭医療において 産科・婦人科まで診る必要があるかどうかという ことです。更年期などの婦人科的な診療や産科的 な診療は出来たほうがいいのは勿論ですが、日本 の家庭医療にそこまで求めるかという問題があり ます。

ミシガン大学での研修中の出来事ですが、チャ イニーズレストランで佐野先生の誕生会を開いて いた時に、お産が始まったということで佐野先生は呼び出されてしまい、結局、主役不在のままイベ ントが終わったことがあります。産婦人科は24時間拘束される大変な診療科です。日本では専門医志 向の国民性があり、そして産婦人科専門医による長年の診療体制が既に確立されています。こうした 日本の医療事情の中で家庭医が婦人科や産科を診ることについては、国民の理解や診療体制の再編成 など多くの課題があります。

また、家庭医療の診療では他にも小児科やメンタルヘルスケアも必要です。そして何より教育が重 要です。ミシガン大学ではPh. D.が考えた素晴らしい教育システムがあります。

家庭医療の研究についてはclinical interestとresearch interestの両分野からの研究がありますが、ミ シガン大学の家庭医療学科では両方の部分を深く追求しています。

これは佐野先生の言葉です。家庭医療というも のは、大学病院だけで出来るものではないという ことが判ります。これらをフィロソフィーとして、

Fetters先生や佐野先生が家庭医療を世界中に根付

かせようと努力されているわけです。

この建物は、佐野先生が勤められていたEast Ann Arbor Health Centerです。ミシガン大学病院 は非常に大きく、そこから救急ヘリが飛び立つぐ らい大きな規模なのですが、佐野先生たちが実際 に活動しているのは大学病院ではなくこの地域拠 点です。この地域拠点では診療のみならず研修医 や学生の教育も行っています。大学病院の中で何 でもしているわけではなく、そこが日本との大き な違いです。長崎大学でもこうした拠点を学外に 作るために一歩一歩前進しています。

これは長崎大学医学部の6年生が佐野先生のと ころで、短期間研修させていただいていたときの 写真です。彼女は米国型の家庭医療に大変興味を 持ち、今後はアメリカでレジデンシーをやる予定 とのことでした。

ミシガン大学の先生方に家庭医療についての様々なことを教えて頂くために、定期的に長崎−ミシ ガンフォーラムを開催しています。一昨年は佐野先生に五島まで来てもらい、離島の医療現場を視察 して家庭医療やその教育について指導してもらいました。昨年はFetters先生に五島を訪問してもら う計画を立てましたが、あいにくの悪天候で残念ながら実現しませんでした。

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日本でも家庭医療の教育プログラムがいくつか できています。

アメリカでの家庭医療には30年から40年ぐらい の歴史がありますが、日本の地域医療の現場には 昔から、子供からおじいちゃんおばあちゃんまで 家族全員を診る医師がいて、そこに産婆さんや助 産師さんが加わる総合医療あるいは家庭医療と 言っても差し支えない診療体制があります。地域 医療を担っている先生方の中には総合医あるいは 家庭医と言えるような医者像があります。

長崎大学卒業後2年目ぐらいのときに、離島の小診療所へ出張診療に行った時のことです。週に1 度しか医者が行かないその診療所には、沢山の患者様が待っていました。ある方は「先生が診てくれ なかったら、私は1週間苦しまなければいけない。」と仰っていました。確かに、小離島から本土ま で診療に出向くことは、お年寄りにとって金銭的にも体力的にも大変な負担です。今は家庭医療とい う形で研修システムが出来ていますが、当時は患者様や看護婦さんが地域医療の指導医のようなもの でしたので、私も何とか地域のニーズに応えるため患者様や看護婦さんには大変お世話になりました。

家庭医は、大学病院や中核病院にずっといるわ けではありません。大学病院で勤務する医師が家 庭医でも、離島・へき地で勤務する医師だからと いって家庭医でもないのですから、私はへき地、

離島、地方、都市などどこへ行っても通用するよ うな家庭医を養成するシステムを作りたいと思っ ています。

平成16年度から初期臨床研修が必修化され、多

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