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}   \一聯

・おかあさんを よびに  いきました。

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 この追加により、JSL児童達は「ああ、そうだったのか。」と漸く内容 を理解したようであった。筆者は当初、児童達が普段から読書好きでは ないので理解カが低く、その前に起こっている事が想像できないのであ ろうと、思った。しかし、児童Bは読書好きなので釈然としない思いも

あった。

 そこで、児童Bの母親に尋ねたところ、「ブラジルでは、手ともが昆 虫を集める習慣は全くない。ブラジル人は、昆虫は怖いものだと思って いる。」と教えられた。ペルーの児童Dの父親からも同様なことを教えら れた。フィリピンの児童Cの母親からも、「フィリピンでは、子どもが小 さい時から昆虫に触るなと言っている。それは、毒を持っ昆虫が多く危 険だからだ。日本へ来て、スーパーマーケットに虫取り網が売ってある のを見て、何に使うのか分からなかった。」と教えられた。

(10)考察

 このJSL児童の保護者の説明により、筆者にも漸く「三人の児童の育 った文化では昆虫に対する態度が日本とは異なるために、児童たちは内 容が理解で一きなかった。」ということが、理解できた。しかも、児童たち は、「文化の違いであると、自分の言葉では説明できなかった。」ことも 分かった。リライト文を使わなければ、このことに筆者も児童も気が付 かなカ、ったと思える。リライト文を使用すると、文化の違いを見つけや すいという効果が発見できた。

 筆者がよく使用している市販の問題集の『教科書ぴったりテスト』や

『学級担任のための国語資料集、短文・長文・P l SA型のカがつく、

まるごと読解カ、文学作品』の4年生の「白いぼうし」、及び『小学校国 語 学習指導書4土 光村図書』の三冊をみても、「どうして、ぼうしの 中にちょうがいたのか、だれかが入れておいたのか。」という質問はされ

ていない。

 つまり日本語文化を持つ人にとっては、ここに蝶の入っている帽子が おいてあるということは、まったく不思議なことではないのである。幼 稚園の帽子に園児の名前が書いであることから、幼稚園児が帰り道で飛 んでいる蝶を見つけ、自分の帽子でつかまえて地面の上に置き、虫取り 網と虫がごを取りに、母親を呼びに行っているということをほとんどの       35

日本人は想像するということである。それ故、どの書籍にもそこは触れ られていないのであろう。

 文中に書かれていないことを想像することが読書の醍醐味だから、筆 者の追加は国語の常道からは外れているかも知れない。しかし、日本語 がまだおぼつかないJSL児童たちが、話の内容をより良く理解し日本語 の物語に慣れていくためには、このような追加が必要である。学習の最 後に「この女の子は何ですか。」という質問に、子どもたちは、「ちょう かも知れない。とてもおもしろい。」と答えた。.一応の目的は達したと思

える。

(11) 制作したリライト文とイラストについて

 ここで示したりライト文は筆者がリライト文というものを最初に制作 した2004年のものである。従ってあまり深く考えることなく、短さのみ を追求している。授業後の反省点として以下のことをあげる。

 (1)では、イラストでみかんを描いているもののリライト文にはない。

そのため、(7)でみかんをタクシーカ、ら出してくるのが唐突な感じがした ようである。ここは、.rみかんをいっこ、のせています。」とするべきで あろう。初級用はこれでよいが、中級用では、「お母さんにおくってもら ったみかんをいっこ、のせています。」として、松井さんの人柄をふくら ませるようにしたい。

 (4)では、rわざわざ」という言葉を使っている。しかし、rわざわざ」

は、かなり難解な言葉であり、JSL児童はとまどったようである。そこ で、ワークシート(3.5.9で示す。)では、「わざわざ」を使わず、

r(   )くんが、ここにおいたんだな。」として、だけお君がおいた のであることに自然に気づくようにしている。

 同様に、(7)では、「みかんを だしました。」という表現にもJSL児 童はとまどっていた。ここも、「(   )から みかんを だしまし

た。」とワークシートでは表現し、「タクシーから」を導くように工夫し

た。

 次にイラストに関しての反省点を述べる。イラスト(8)は、「ぼうしを カ、、Sミせました。」という意図で描いたが、JSL児童の中には、ぼうしの中 からみかんを取りだしたと思う者もいた。(9)の「いしをおきました。」

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のイラストも、手の表現が不適切で、児童は置いたのか取ったのか、と まどっていた。この「白いぼうし」のイラストだけは図工専科の教員で はなく、近隣の大学からボランティア指導員として来ている大学生が筆 者と合議を重ねて描いたものである。これらのイラストは、まだ改良の 余地があると思える。ただ描画の専門家でなくても一般の者が描いたイ ラストでも、JSL児童の学習には十分に使えることが確かめられた。JSL 児童の指導に関わる者は画を描くことを敬遠することなく、関係者で合 議しながら積極的に取り組んでいくべきであると思う。

3.5 授業の実践記録(3)

4年生教材『白いぼうし」を用いての一般学級での一斉授業

(1)日時12008年(平成20年)6月10日(火)、3時間目(10:45−11:30)

(2)場所・形態:JSL児童Eが在籍する4年生の学級での一斉授業

(3)題材1.白いぼうし(4年生教材)

(4)学習のねらい

  ①児童は「聞く」、「読む」という活動を通して物語の粗筋を知る。

  ②児童は指導者の質問に答えることで物語のおもしろさにふれる。

(5)参加児童の状況

  4年生の普通学級の児童35人(JSL児童Eを含む)

(6) 学習の経過

 筆者は、前記のように、第2段落でr白いぼうしが、ここに置いであ るということは、その前に、どんなことが起こったのですか。」という 質問がここでは重要であると考えた。そこで、JSL児童の在籍学級の児 童たちが教科書の本文を一読したすぐ後に、以下のワークシート(1)を 配布し、解答を得た。

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ワニクシート(1)と正答、及び正答数

ぽうしをつまみあげたとたん、、s、わっと何かが 飛び出しました。」と、書いてありますが、何が 飛び出したのですか。

正答(もんしろちょう)

正答数34/35(誤答1)

この白いぼうしは、だれのぼうしですか。

正答(たけのたけおくんのぼうし)

正答数34/35(誤答1)

それは、どこでわかりますか。

正答(ぼうしのうらに赤いししゅう糸でぬいと りがしてある)

正答数31/35(誤答4)

松井さんが、「ははあ、わざわざここに置いたん だな。」と、言っています。だれが、なにをここ に置いたのですか。

正答(たけのたけおく君が、しろいぼうしを)

正答数32/35(誤答3)

わざわざということばから、ここにぼうしを置

<前にどんなことがあったのでしょう一。 rだれ が、何を、どうして、どうなった。」と、思いま すか。そうぞうして書きましょう。

正答(たけのたけおくんが、白いぼうしで、も んしろちょうをつかまえ、そこに置いていった。

正答は下線の五点が入っているものとした。)

正答数5点6人、4点12人、3点8人、2点3

人、1点2人、O点4人(他の部分を引き写して

いる)

松井さんが、rこの子は、どんなにがっかりする だろう。」と言っています。だれが、どうしてが っかりするのだと思いますか。

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正答(たけのたけお君が、せっかくつかまえた ちょうがいなくなってしまったので、がっかりす

る。)

正答数25/35人(半分正答9、誤答1)

松井さんが、夏みかんに白いぼうしをかぶせた のは、どんなことを思いついたからですか。

正答(ちょうのかわりに夏みかんをあげようと

思った。)

正答数21/35人、(半分正答7人、誤答7人)

 (JSL児童Eは、在籍学級の総数に含まれている。JSL児童Fは他の学 級なので別に調査したが、結果はほとんど同じであったので省略する。)

(7)質問⑤の解答について

 以下に、質問⑤の『わざわざということばから、ここにぼうしを置く 前にどんなことがあったのでしょう。「だれが、何を、どうして、どうな

った。」と、思いますか。そうぞうして書きましょう。』のJSL児童Eの 在籍学級での回答数を棒グラフで示す。

原文一読後の質問⑤の正答数(下段の数字は人数)

正答5点≡

正答4慮 正答3点…

不十分2点:

    □

不十分1点…

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