VIII. 安全性(使用上の注意等)に関す
6. 重要な基本的注意とその理由及び処置方
重篤な
infusion reaction
発現時期・頻度通常、初回点滴静注開始後
30
分~2
時間後よりあらわれる。重篤な
infusion reaction
の約80%
が初回投与時に発現している(米国添付文書より)ことから、特に初回投与後は患者の状態を十分に観察すること。なお、本剤の再投与時にも重篤な
infusion reaction
があ らわれるおそれがあるので、注意すること。31
-症 状重篤な
infusion reaction
として、低血圧、血管浮腫、低酸素血症、気管支痙攣、肺炎(間質性肺炎、アレルギー性肺炎等を含む)、閉塞性気管支炎、肺浸潤、急性呼吸促迫症候群、心筋梗塞、心室細動、心原 性ショック等が報告されており、死亡に至った例も報告されている。
危険因子
以下の患者については、
infusion reaction
の発現頻度が高く、かつ重篤化しやすいので患者の状態を十分 に観察して投与すること。・血液中に大量の腫瘍細胞がある(
25, 000 /µL
以上)など腫瘍量の多い患者・脾腫を伴う患者
・心機能、肺機能障害を有する患者 観察項目
本剤投与中は、血圧、脈拍、呼吸数等のバイタルサインのモニタリングや自他覚症状の観察を行い、また、
投与後も患者の状態を十分に観察すること。
対処法
重篤な
infusion reaction
が発現した場合には、直ちに投与を中止し、積極的に支持療法(酸素吸入、昇圧剤、生理食塩液、気管支拡張剤、副腎皮質ホルモン剤の投与など)を行うなど適切な処置を行い、症状 が回復するまでは患者の状態を十分に観察すること。本剤の投与を再開する場合は、症状が完全に消失し た後、中止時点の半分以下の注入速度にて患者の状態を十分に把握しながら投与を再開する。なお、再開 の可否を判断するための基準は確立していない。
†<参
考>欧州の添付文書では、この
infusion reaction
で重篤な状態に至った症例について、症状発現時に血 中TNF-
αやIL-6
等のサイトカイン濃度が上昇していたことが報告されていることから、サイトカ イン放出症候群(cytokine release syndrome
)と記載している。(33
ページ参照)次ページ以降に重篤な
infusion reaction
を発現した代表的な症例の経過を示す。32
-(1)
血液中に大量の腫瘍細胞があるなど腫瘍量の多い患者に投与したときの経過[外国症例]12) 年齢
性別 原疾患 副作用
経過及び処置
71
歳 女性慢性リンパ 性白血病*
(
B
細胞性)悪寒、息切れ、低血圧、低酸素血症、肺浸潤
入院時 意識は明瞭、臨床症状なし。複数の頸部リンパ節、
CT
スキャンによ り腋窩、傍大動脈、胃周囲部、肝門、骨盤内及び鼠径部にびまん性リ ンパ節腫脹、肝腫大を確認。ヘモグロビン値9.2 g/dL
、白血球数234,300 /µL
(リンパ球84%
)、血小板数25,000 /µL
。クレアチニン値、カルシウム値及びリン酸値正常。尿酸値上昇(
557 µmol/L
)。左心室 機能正常(駆出率67%
)。胸部X線像正常。投与
2
日前 コルチコステロイド投与開始。投与前 アセトアミノフェン、ジフェンヒドラミン前投与。
投与開始 本剤投与開始(注入速度
25 mg/
時)。1
時間後 注入速度の漸増開始。注入速度
37.5 mg/
時の時点で悪寒発現。投与中断。2
時間後3
時間後 低血圧(90/60 mmHg
)、息切れ(軽度)、下肺野の捻髪音が発現。洞性頻脈を除き、心電図正常。
補液(
500 mL
)、コルチコステロイド及び抗ヒスタミン剤投与。血圧は徐々に回復(
105/75 mmHg
)。5
時間後 強い息切れ、低血圧(95/65 mmHg
)、低酸素血症(動脈血CO
2分圧31
mmHg
、動脈血O
2分圧62 mmHg
)発現。クレアチニン上昇(154 µmol/L
)。胸部
X
線で、びまん性肺浸潤を確認。強心支持療法、利尿薬投与。9
時間後 心肺虚脱発現、患者死亡。既往歴 不明
[外国症例]13) 年齢 性別
原疾患
[合併症]
副作用 経過及び処置
78
歳 男性慢性リンパ 性白血病*
(アルキル化 剤難治性)
[代償性アル コール性肝硬 変、ミエロパ シーを伴う前
立腺癌]
呼吸困難、頻呼吸、発熱、低酸素血症、呼息性喘鳴、錯乱、肺浸潤
投与前 補液、アセトアミノフェン(経口)、ジフェンヒドラミン(静注)によ る前投与。
白血球数
74,000 / µ L
、血小板数27,000 / µ L
。 投与開始 本剤投与開始(注入速度50 mg/
時)。60
分後100 mg/
時に注入速度を上昇。急激な呼吸困難、頻呼吸、発熱(
39.1
℃)、低酸素血症、呼息性喘鳴、錯乱発現。胸部X線にて新たな肺浸潤及び、以前より認められた両側 性胸水(少量)を確認。
~
75
分後白血球数
18,000 /µL
、血小板数20,000 /µL
以下。本剤投与を中止(総投与量:
125 mg
)。メチルプレドニゾロン投与、アルブテロール吸入、血小板輸血、フロセミド投与、酸素吸入、ジフ ェンヒドラミン追加投与。数時間で症状は改善。
2
日後 腹水発現3
~4
日後2
回の穿刺により腹水を除去(培養結果は全て陰性)。超音波検査によ り、肝硬変と診断(肝静脈血栓症でないことを診断)。10
日後 患者の希望により全ての治療を中止。ホスピスへ転院。13
日後 原疾患・合併症により死亡。既往歴 腹水
*
慢性リンパ性白血病は、国内においては効能・効果未承認の疾患33
-[外国症例]14) 年齢
性別 原疾患 副作用
経過及び処置
26
歳 女性慢性リンパ 性白血病*
(B細胞性)
血小板減少(G4)、頻脈、悪心、肝酵素上昇、LDH上昇、d-ダイマー上昇(G3)、
発熱、悪寒、低カルシウム血症、低蛋白血症、CRP 上昇、プロトロンビン時間延 長(G2)、嘔吐、低カリウム血症、貧血(G1)
投与前 IL-6 20 pg/mL、TNF-α 25 pg/mL、リンパ球数
89,300 /L
(CD20 陽性細胞90.8%)、血小板数 13,700 /L。
投与開始~
10
時間後重度の
infusion reaction
†(発熱、悪寒、嘔吐、血小板減少、血液凝 固パラメータ低下、LDH
上昇(最高値:2,000 U/mL以上)、肝酵素 上昇)発現。血小板減少に対し、血小板輸血を実施。
投与
90
分後:IL-6 244 pg/mL
、TNF-
α351 pg/mL
。 投与7
時間後:IL-6 40 pg/mL、TNF-α 47 pg/mL。症状及び血清パラメータ異常は
2
日間持続。投与
48
時間 後血小板数の回復開始。
治療効果:SD(不変)。TTP(腫瘍増殖抑制期間)3週間半。
既往歴 不明 先行 治療歴
VACOP-B
療法(エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン)
自家骨髄移植
正常値:IL-6 <25 pg/mL、TNF-α <20 pg/mL †原著ではサイトカイン放出症候群
*
慢性リンパ性白血病は、国内においては効能・効果未承認の疾患(2) 脾腫を伴う患者に投与したときの経過
国内の臨床第Ⅱ相試験において、脾腫を伴う患者に投与され、2例の副作用による中止例が報告され ている。いずれも本剤の投与中止後、副作用は回復している。
[国内症例]
年齢
性別 原疾患 副作用
経過及び処置
70
歳 男性マントル細胞 リンパ腫 病巣部位:
表在性リンパ節、
脾腫、胃粘膜下、
骨髄
血圧上昇、疼痛(G3)、発熱、悪寒、頻脈、末梢性虚血、虚脱感、呼吸障害
(G2)、AST(GOT)上昇(G1)
投与開始
1
時間後本剤投与開始(注入速度
25 mg/時)
突然、左腹部(脾腫病巣部)に激痛を訴え、頻呼吸と収縮期血 圧
210 mmHg、頻脈(160 /min
台)、四肢冷感発現。ヒドロコルチゾンコハク酸エステル
500 mg
が静注され、酸素吸 入が行われた。同時に悪寒、戦慄、体温上昇(39.7 ℃)発現。ECG
及びSpO
2モニターを装着して経過が観察されたが、その 後徐々に回復に向い、1時間半後には脈拍数(100 /min)、血圧(130/80 mmHg)、呼吸数(20 /min)ともに安定したため、酸 素吸入中止。
2
日後 経過観察中に異常は認められず、後治療に移行。既往歴 なし 先行 治療歴
CHOP
(シクロホスファミド水和物、ビンクリスチン硫酸塩、ドキソルビシン塩酸塩、プレドニゾロン)CH(O)P(シクロホスファミド水和物、ドキソルビシン塩酸塩、プレドニゾロン)
34
-[国内症例]
年齢
性別 原疾患 副作用
処置及び経過
61
歳 男性マントル細胞 リンパ腫
病巣部位:
左右鼠径部リン パ節、
悪寒、虚脱感、多汗(G3)、発熱、嘔吐、呼吸障害、血小板減少(G2)、血 圧下降、頻脈、頭痛(G1)
脾腫
投与開始
1
時間後本剤投与開始(注入速度
25 mg/
時)強い悪寒、虚脱感、発汗が発現。注入速度を低下させ(
5 mg/
時)、ヒドロコルチゾンコハク酸エステル(
500 mg
)及びd -
クロルフ ェニラミンマレイン酸塩(5 mg/
アンプル)の静注を行い、一時 これらの症状は弱まった。3
時間後 再び強くなり発熱を伴ったため、被験者が投与の中止を希望し、投与を中止。
既往歴 多血症
先行 治療歴
CHOP
(シクロホスファミド水和物、ビンクリスチン硫酸塩、ドキソルビシン塩酸塩、プレド ニゾロン)ESHAP
(エトポシド、シタラビン、シスプラチン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステル)エトポシド(経口)
シクロホスファミド水和物(経口)
3.腫瘍量の急激な減少に伴い、腎不全、高カリウム血症、低カルシウム血症、高尿酸血症、高 Al-P
血症等の腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome) があらわれ、本症候群に起因した急性腎不全による死 亡例及び透析が必要となった患者が報告されている。血液中に大量の腫瘍細胞がある患者において、
初回投与後
12~24
時間以内に高頻度に認められることから、急激に腫瘍量が減少した患者では、血 清中電解質濃度及び腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分観察すること。また、本剤を再投与し た時の初回投与後にも、これらの副作用があらわれるおそれがある(「重大な副作用」の項参照)。<解 説>
腫瘍崩壊症候群(
tumor lysis syndrome:TLS
)の定義治療により腫瘍細胞の急速な崩壊が起こる結果、大量の核酸、リン酸、カリウムが細胞内より血中に放出 され、致命的な電解質異常及び尿酸やリン酸カルシウムの析出による重篤な腎不全が生じることをいう。
発現時期
初回投与後
12
時間~24
時間以内に多くあらわれる。危険因子
末梢血液中の腫瘍細胞数が多い患者では、腫瘍崩壊症候群の発症の危険性が高いため注意すること。他に は脱水、腎機能障害のある患者でも発症の危険性が高いといわれている。
観察項目
本剤投与後、急激に腫瘍量が減少した患者では、血清中電解質等(
Na, K, Cl, P, Ca
等)、腎機能検査(BUN,
クレアチニン,
尿酸)を行い、患者の状態を十分観察すること。対処法
点滴中にあらわれた場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置(生理食塩液、高尿酸血症治療剤等の投与、
尿のアルカリ化、透析等)を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察する。本剤の投 与を再開する場合は、症状が完全に消失した後、中止時点の半分以下の注入速度にて患者の状態を十分に 把握しながら投与を再開するが、再開の可否を判断するための基準は確立していない。