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ころを、 02濃度の場合前述のように変動が非常に小さいため106倍してpermeg (パーメグ)を用いることにする。定義式により8(02/N2)値は、測定試料と標 準試料ゐ02モル分率の差を標準試料の02モル分率で割ったことになっている。

この値を、単位体積あたりの空気全量に対する02量の変化(ppmvスケール)

に換算するには、 8(02伽2)値に大気中の02の体積比0.2095を掛け算すればよい。

すなわち、 8(02/N2)値にして4.8per megの変化が、容量にしてIppmvの02濃度

変化に相当することになる。過去20年間の平均のCO2経年増加率はおよそ約

1.5ppmv/年であることから、これに対応した8(02伽2)変化は約7per meg程度と 見込まれ、通常質量分析計を用いて検出されるper血1オーダーの変化と比べて 桁違いに小さい。

我々の研究室ではこれまでに、質量分析計自体の試料導入部やその測定手法

に改良を加えることで、 C02の炭素安定同位体813Cに対して±0.02permi1 (2Pper meg)、空気の窒素安定同位体81刊に対して±0.02permi1 (20per meg)、同じく 酸素安定同位体8180に対して±0.05permi1 (5qper meg)という高精度での計測

法を確立してきた。それでも本研究の要求精度にはまだ1桁近く不足であるた め、過去の経験を活かしつつ、 02濃度測定装置を自作し、検出器として用いる 質量分析計自体に独自の改良を加え、分析手法の検討をおこなった。さらに基 準として厳密な安定性が要求される02標準ガスも自ら製造し、高精度02濃度 計測法の開発に取り組んだ。本報告では測定装置の開発と高精度化のためのさ

まざまな試験及び最終的な精度の検討、試料空気を実際に測定する場合に起こ る問題点とその対策などについて述べる。

5‑2 酸素濃度測定装置の開発

本研究で開発した装置の全体図を図6に示す。装置は、試料空気導入部、リ ファレンスガス導入部、可変ポリウム部、キヤピラリー、質量分析計、信号処 理系、真空排気系から構成されている。試料空気およびリファレンスガスの導 入部は、接ガス部の材質の違いによる気体分子の選択的な吸脱着や分別を避け るためパイレックスガラス製とした。さらに、ガラス製バルブのシール部には 脱ガスのほとんどないバイトン製オサリングが、また、配管の一部にはステン レススチールが用いられている。また、試料空気導入部とリファレンスガス導 入部において、それぞれのガスが接する部分のオーリングやステンレススチー ル部品の数を同数とし、配管構造も左右対称になるように設計した。さらに、

気体の分別を引き起こすような温度勾配や配管の狭陰部を作らないような注意 もしている。可変ボリューム部はパイレックスガラス製のピストンと外筒をや はりバイトン製オーリングでシールしたものであり、容積を19miから27dま で可変でき、左右の圧力差を830patm以下に調整することができる。

製作された試料空気導入部、リファレンスガス導入部、可変ポリウム部は、内 部の汚染物質を除去するために、まずアセトンで洗浄を行ない、その後純水に て6時間超音波洗浄し、再びアセトンによって洗浄した後テープヒーターによ

り120℃等温加熱しながら抽回転ポンプにより8×10‑3to汀以下で一週間加熱真 空引き処理を行なった。同じくリファレンスガス用の容量301のガラス容器も アセトン洗浄を行い、その後テープヒーターにより120℃にて等温加熱しなが らターボ分子ポンプにより一ケ月以上の高真空排気処理を行った。その後、 301 ガラス容器には第一次02標準ガスであるPLM37172シリンダーからガスを大

気圧+0.5atmで封入した。

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図6 酸素濃度測定装置の概略図

試料空気やリファレンスガスをほぼ大気圧でそれぞれの導入部に注入した場 合でも、質量分析計における02およびN2の主要分子スペクトルピーク値が計 測可能範囲を越えないようにキヤピラリーの設計をおこなった。ステンレスキ ヤピラリーは内径が最小̲のものでもせいぜい100BAmであるため、このような 条件を満足するような流量を得るためにはキヤピラリーの一部を機械的にかな り絞る必要がある。この場合、もし流路の一部が分子の平均自由行程より狭く なると、気体の流れは分子流となるため、分子量の違いによる分子速度の差が 大きくなり、気体の分別が癒着になると考えられる。このためステンレスキヤ ピラリーは使用できないと判断した。そこで、より内径の小さなものが選択で きるフューズドシリカキヤピラリーを使用することに一した。常温で気圧が数 iboTorrの場合に粘性流状態を保てる範囲にあり、しかも上に述べたような微 小な流量が得られる条件を満たすものとして、キヤピラリーの内径は25LAm、

長さは1.35mと決めた。フューズドシリカキヤピラリーはたいへん細いため、

熱容量が非常に小さく、中を流れる気体は周囲の温度変化の影響を強く受ける。

このことが、測定値のふらつきの最も大きな原因であることが実験から明らか になった。この影響を防ぐため、フューズドシリカキヤピラリーは断熱材で2 重に被覆した。

使用した質量分析計はFimigan社製のMAT‑252である。これは複数の試料導 入部とコレクターを備え、標準試料と測定試料の同位体比の測定に用いられる

Nier‑McKinney型と呼ばれるものであるoこのMAT‑252は、 02/N2測定のほか、

CO2、 N2、 02の同位体も測定可能な6個のファラデーカップ構成となっている。

02/N2測定においては、検出対象として02に対し質量数32もしくは34、 N2に 対し質量数28もしくは29の選択が考えられるが、 MAT‑252では分析管の形状 により02に対しては質量数32、 N2に対しては質量数29という最も質量数差の 小さい選択しか取り得なかった。また、アンプは質量数32の02に対して増幅 率1×109、質量数29のN2に対して増幅率3×1010のものを用いている。

信号処理系ではイオン電流が直流増幅器により増幅された後、 Ⅴ/Fコンバー タ、カウンタを通してA/D変換され、マイクロコンピューターに送られ、 8倍 が計算される。 02/N2測定では、リファレンスガスと測定試料が交互に分析管 に導入され、質量数32と29に対応する各ファラデーカップに流れるイオン電 流が測定され、その値から各測定回について測定試料のリファレンスガスに対

する8(02/N2)が計算される。ここで、 8(02/N2)は、

8(02/N2)=(RB&/もー1 ) × 1 06, (5.2)

ただし、 Rs&=Is.32m皿29, R㌔IA32nd29 (I法は各質量数のイオン電流の強度)で表され

る。測定はリファレンスガスと測定試料に対してそれぞれ13回と12回行われ、

測定試料の8億はその前後に測定したリファレンスガスのイオン電流強度を平 均した値に対して決定される。 12個の8倍の中に平均値からIo以上外れた測定 値があればアウトライア‑として2個まで除かれ、平均値が計算される。この 平均値を求める一回の測定を1ブロックの測定と呼ぶことにする。

5‑ 虫 酸素濃度測定装置の高精度化に伴う問題とその対策

5‑3‑1 試料空気導入の際の気体分別の問題と対策

試料空気を濃度分析装置に導入する際の気体分別の問蓮について考察する。

これには試料の導入方法による影響と温度変化による影響の2種類があること

が実験から明らかになった。まず試料空気の導入方法による影響について示す。

図6の装置のsampleflaskと301glass bottleの双方に同一の標準ガスを充填し、

それ以外の系を真空引きした。バルブvlを開けて系内に標準ガスを導入し、

速やかにバルブvlとV8を閉じた場合には測定値が+46 per megとなり、逆に バルブv13を開けて系内に標準ガスを導入し、速やかにバルブv13とV8を閉 じた場合には測定値が一84per megとなった。左右に同じガスを導入したにもか かわらず、どちら側からガスを入れたかに応じて測定値の符号が全く逆になっ ており、その差は130 permegにも達した。このことから、試料空気をバルブ で隔てた真空の細長い空間に広げた場合には、 02よりN2の方が先に拡散し、

系内で濃度の不均一が生じることが明らかになった。 02よりN2の方が拡散速 度が大きい理由は、分子の平均速度が質量の‑1/2乗に比例することによるもの であると推定される。すなわち、 Tを絶対温度、 Mを気体の分子量とした場合、

気体の分子速度vaは

vA=(8RoThT /M) la,

(5.3)

で与えられる。 25℃では質量数32の02の分子速度は4.442×104cm/sec、 28.02 のN2では4.745×104cm/secである。このために、バルブの開きかけの時には非 常に狭い空間を通して真空中に空気が拡散するため、そこで一時的に分子流 状態が生じ、 02に比べて分子速度の大きなN2が先に真空の空間に拡散したも のと思われる。その後、バルブが大きく開くにしたがって、空気は分子流状態 から粘性流状態となって分別せずに拡散するようになる。このような過程で真

空にした細長い空間にガス濃度の微妙な不均質が生じ、それが解消されないう

ちに中央のバルブを閉じたために精度の高い測定によってその差が検出された ものと思われる。系内に標準ガスを導入した後バルブv8を閉じるまでの時間 を変えてさらに実験を行ったところ、平衡時間として3.0秒を見込んでおけば 標準ガスは系内で十分均一になることが分かった。このため、装置のバルブ操 作の際には必ず30秒以上の待機時間を設けることにした。

試料空気導入の際に起こる分別のもう一つの要因は、ガス流路系の温度差や その変化である。図6のVlとV3の間の配管を‑78℃に冷却した場合と室温の

ままの場合について同一の試料を測定した結果、配管を冷却した場合の方が室 温の場合に比べて測定試料の8(02/N2)が約100Pr meg低かった。この実験によ り、 02はより低い温度の部分に優先的に集まることが分かった。 02濃度測定装 置は全体が空調された実験室に設置されており、試料空気やリファレンスガス が接する部分のほとんどは熱容量が大きいため、測定値への影響はあまりない。

しかし、シリカキヤピラリー部分だけは内径25LLm、外径でも約0.3mmとたい へん細いため、熱容量は他の部分に比べ桁違いに小さい。実際に、シリカキヤ

ピラリーに特別な配慮をせずに剥き出しの状態で測定を行なっていた研究の初 期には1ブロック測定における標準偏差が36‑100per megか、場合によっては それ以上のこともあり、季節変化振幅で100permeg程度、経年変化では10permeg オーダーの変化である実際の大気試料の8(02/N2)を分析できる状況ではなかっ た。装置のシリカキャピラリーの下には強い熱源となる油回転ポンプが3台あ ることからもその不安定さは温度変化の影響によるものである可能性が強いと 考えた。このため、シリカキヤピラリーをテフロン熱収縮チューブの中に通し、

さらにその外側をテフロンフレキシブルチューブで2重に被覆する改良を行っ た。その結果1ブロック分析における標準偏差が2qper meg以内にまで激減し た。よって、周囲の温度の変化による測定への影響の原因はほとんどがシリカ キヤピラリー部分で起こっており、これを防ぐにはこの部分の断熱が極めて重

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