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対流圏における酸素濃度とCO2濃度の変化

我々は、独自に開発した8(02/N2)測定装置を用いて、これまでに南極や北極 および日本での地上定点観測ならびに航空機や大気球などの機動力を用いた観 測を開始した。本報告では'1999年4月から開始した日本上空における観測の 結果についてまとめる。地表の大気は、宮城県仙台市の育葉山(38oN、 140oE) にある東北大学理学部合同研究棟屋上において1カ月に1 ‑2回の頻度で採取 している。青葉山は仙台市中心部の西側に位置し、周囲は森林に囲まれており、

理学部は青葉山の山頂に位置し、合同研究棟はその理学部の中でも最も高い建

̲物である。仙台市街などの都市からの汚染の影響を避けるために、大気採取は

西風が吹いている時を選んで行っている。 8(02/N2)測定用の試料空気は、 ‑78℃

のメタノールドライアイストラップにより除湿されたあと、専用のパイレック スガラスフラスコに大気圧で採取している。 CO2濃度測定用の試料空気も、同 時に別のパイレックスガラスフラスコに大気圧+1.0kgf/cm2の圧力で加圧採取し ている。上空の大気採取は、 4km以下の高度については単発のセスナ機で、そ れ以上の高度については仙台と福岡に就航しているJAS定期旅客機MD80ない

しMD90により月1回の頻度で実施している。

日本上空で観測された8(02rN2)およびco2濃度を、それぞれ図13と図14に 示す。 8(02/NJはどの高度でも明瞭な季節変化を示しながら経年的に減少して

いる。一方、 CO2濃度も明瞭な季節変化を示しながら経年的に増加している。

まず8(02/N2)とCO2濃度の季節変化成分について考察する。地表付近の8(02/N2)

は3月はじめから半ばにかけて極小となり、 7月おわりから8月はじめにかけ て極大になっており、その平均振幅は141per meg.である。上空になるにつれて 極小や極大が現れる時期が遅くなり、地上と対流圏界面の間の季節変化の位相

のずれは1から2カ月程度になっている。また、振幅も上空ほど小さくなり、

高度2knで98permeg、高度4kmで88permeg、圏界面付近では38permcgとな っている。このような観測結果は、 8(02伽2)の季節変化を引き起こす原因が地 上にあることと整合している。同様に、 CO2濃度についても地表付近の季節変 化が最も大きく、高度が上がるにつれて振幅が小さくなり、位相も遅れている。

CO2濃度と8(02/N2)の季節変化を比べると、両者が対称的な変化をしており、一 方の極大がもう一方の極小に対応していることがわかる。 CO2濃度の季節変化

振幅は地表付近で15.6ppmv、高度2knで10.8ppmv、高度4kmで7・5ppmv・圏 界面付近で6.2ppmvとなっている。

co2濃度変化に対する8(02伽2)の変化量を計算すると、地表付近では‑83±

0.4per meg/ppmv、高度2knで‑8.1±0.7per meg/ppmv、高度4knで‑9・1 ±1・lper

meg/ppmv、圏界面付近で‑5.8±0.6per meg/ppmvとなった。これまでの研究によ

れば、 co2濃度の季節変化は陸上植物の光合成活動と呼吸作用によって作り出 されていることが明らかにされている(Francy etal., 1995)。さらに、陸上植 物の活動によって引き起こされる8(02/N2)とCO2濃度変化の比は‑5・3 per meg/ppmvと評価されている(Severinghaus 1995)。我々の観測によって得られ

た8(02/N2)とCO2濃度の比は絶対値で比較した場合、こ.の比より明らかに大き ぐ、特に4kn以下の高度では1.5‑1.7倍にも達している。その原因は、海洋と 大気間の02循環とCO2循環に違いがあるためである。すなわち、大気と海洋 間のCO2交換は海洋中の無機炭酸の解離作用により大幅に抑えられており、 C02 に関しては大気と海洋の両リザ‑バーが平衡に到達する時間が数年にも及ぶ。

一方、海洋中の02の溶解度はヘンリーの法則によって温度のみで決まるため、

海洋生物の活動などによって作り出された大気と海洋間の02の分圧差は数週間 で解消される。このため、 8(02/N2)の季節変化成分には陸上植物活動による影 響のみならず、大気海洋間の季節的な02交換の影響も含まれており、特に対流 圏中層以下の高度で海洋の影響が強く現れていることが明らかになった。

次に8(02/N2)とCO2濃度の経年変化成分について考察する。 8(02/N2)は全ての 高度で経年的に減少しており、その平均減少率は地表付近で‑19.7per meg/yr、

高度2knで‑28.7per meg/yr、高度4kmで‑19・8per megyr、圏界面付近で‑15・3per

meg/yrであった。高度2knでの低下が異常に大きくなったが、これは1999年 の観測開始がこの高度での8(02/N2)の極大時期に当たっており、経年変化と季

節変化を分離するデータフィッティングに際して末端のデータに強く影響を受

け、季節変化成分の一部が経年変化成分に取り込まれたためである。このため、

高度2kmのデータを除外して求めた対流圏全体の平均的な8(02伽2)の減少率は‑

18.2±2.5permeg/yrとなった。同様にCO2濃度の経年変化率は、地表付近でl・59、

高度2knで1.29、高度4kmで1.55、圏界面付近で1.92ppmv/yrとなった。この データも高度2kmが他と大きく異なるため除外して平均値を計算すると、 1.69

±0.2ppmv/yrとなった。

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図13 日本上空で観測された8(02/N2)の変化.地上の空気試料は仙台市郊外の青葉 山の東北大学理学部合同研究棟屋上で採取され、高度2kmと4kmの空気試

料はセスナ機により福島県沖の海上で採取され、 8kn‑Tropopauseの空気試料

は仙台と福岡間に就航している定期旅客機で採取された。

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図14 図13と同様。ただしCO2濃度の変化を表す。

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第7章 酸素濃度とCO2濃度の経年変化から求めた地球規

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