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遠過去

ドキュメント内 チャガ=ロンボ語 (ページ 93-96)

8. 単純時制形

8.2 過去

8.2.2 遠過去

次に,各人称形のOMを接合したパターンを示す.SMは3sgである.

肯定形 否定形

OM.1sg: n-é-le-ng’≠kab-(ꜜá) e-ng’≠kab-á ku OM.2sg: n-é-le-k≠kab-(ꜜá)e-k≠kab-á ku  OM.3sg: n-é-le-m’≠kab-(ꜜá)e-ḿ’≠kab-á ku  OM.1pl: n-é-du≠kab-(ꜜá) ~ n-é-du≠káb-ae-du≠kab-á ku  OM.2pl: n-é-mu≠kab-(ꜜá) ~ n-é-mu≠káb-ae-mu≠kab-á ku OM.3pl: n-é-va≠kab-(ꜜá) ~ n-é-va≠káb-ae-va≠kab-á ku  structure: SḾ-le-OM≠[v]stem(H) -(ꜜá)

~ SḾ-le-OM≠[v́]stem(H) -a

[OM=sg] SM-le-OM≠[v]stem(H)-á ku

OMを接合しても,全体的な音調パターンは変わらない.ただし,OMが複数形の場合に,語末音節でH が実現する場合と,次末音節でHが実現する場合という形で実現のユレが確認される.

8.2.2 遠過去

NEG: mukoṛ-ié ki-laló /klaló/ ki-shá /kshá/ ku /múkoṛyé klaló kshá ku/

SM.2pl≠’cook’-PST2 CPx.7-'food' APx.7-‘good’ NEG

「あなたたちはおいしい料理を作らなかった」Hamkupika chakula kizuri.

この時制形は,F -ie によってマークされる 22.1.3 で見たように,とくに動詞語末の母音連続は,後続 要素がない環境では半母音化して実現するため,とりわけ文末においては /ye/ という形で実現する.

否定形は文末に置かれる否定詞 ku によって表示される.

8.2.2.2 構造の一般化

まず,遠過去形の構造を,動詞形態論のテンプレートにしたがって示せば次のようになる.

≪遠過去≫

SM- NEG2- Ø- (OM-) ≠stem -(í)é

以下に遠過去形の基本活用パターンを示す.音調は単独発話におけるそれである.まず L 動詞 ≠

loli-a「見る」に各人称形のSMを接合した形式は次のとおりである.

肯定形 否定形

SM.1sg: ngí≠loli-íé /ngílolyé/ ngiloli-íé ku SM.2sg: ú≠loli-íé /úlolyé/uloli-íé ku SM.3sg: n-é≠loli-íé /nélolyé/eloli-íé ku SM.1pl: dú≠loli-íé /dúlolyé/duloli-íé ku SM.2pl: mú≠loli-íé /múlolyé/muloli-íé ku SM.3pl: vé≠loli-íé /vélolyé/veloli-íé ku structure: SḾ≠[vv]stem(L)-íé SM≠[vv]stem(L)-íé ku

肯定形では,SM位置に IHが実現し,否定形ではそれが現れない(NTP).また肯定形,否定形ともに,

F -ie でHが実現する.したがって,結果的にこの時制形では,肯定形と否定形の音調上の違いは,NTP

のみということになる.

次に,各人称形のOMを接合したパターンを示す.SMは3sgである.

肯定形 否定形

OM.1sg: n-(é)-nǵ’≠loli-íé /nénǵ’lolyé/ e-ng’≠lólí-íé ku OM.2sg: n-é-k≠loli-íé /néklolyé/e-klólí-íé ku

22 厳密にはTAM Ø- と F -ie の組み合わせで表現される.

OM.3sg: n-(é)-ḿ’loli-íé /n(é)ḿ’lolyé/e-m’≠lólí-íé ku OM.1pl: n-é-du≠loli-íé /nédulólyé/e-du≠lólí-íé ku  OM.2pl: n-é-mu≠loli-íé /némulolyé/e-mu≠lólí-íé ku OM.3pl: n-é-va≠loli-a /névelolyé/e-va≠lólí-íé ku  structure: [OM=sg] S()-OḾ≠[vv]stem(L)-íé

[OM=pl] SḾ-OM≠[vv]stem(L)-íé

SM-OM≠[v́v́]stem(L)-íé ku

肯定形では,SM位置にIHが実現し,否定形ではそれが現れない(NTP).ただし,肯定形でOMが単数 形の場合,SM位置ではなくOM位置でIHが実現する発音も認められる.否定形の場合は,NTPが確認 され,ku の遡及的音調拡張は,語幹初頭音節まで伸びている.しかし,OMを取らない形では,Hは -ie のみに付与されており,これが音声的なユレなのか,体系的に意味のあるズレなのかは不明瞭である.

次に,H動詞 ≠kab-a「叩く」に各人称形のSMを接合した形式は次のとおりである.

肯定形 否定形

SM.1sg: ngí≠kab-íé /ngíkabyé/ ngi≠kab-íé ku

SM.2sg: ú≠kab-íé /úkabyé/u≠kab-íé ku

SM.3sg: n-é≠kab-íé /nékabyé/e≠kab-íé ku

SM.1pl: dú≠kab-íé /dúkabyé/du≠kab-íé ku

SM.2pl: mú≠kab-íé /múkabyé/mu≠kab-íé ku

SM.3pl: vé≠kab-íé /vékabyé/va≠kab-íé ku

structure: SḾ≠[v]stem(H) -íé SM≠[v]stem(H)-íé ku

L 動詞と同様の音調パターンを示している.つまり,肯定形では,SM 位置に IHが実現し,否定形では それが現れない(NTP).また肯定形,否定形ともに,F -ie で高音調が実現する.

次に,各人称形のOMを接合したパターンを示す.SMは3sgである.

肯定形 否定形

OM.1sg: n-(é)-nǵ’≠kab-íé /nénǵ'kabyé/ e-ng’≠kab-(í)é ku OM.2sg: n-é-k≠kab-íé /nékkabyé/e-k≠kab-(í)é ku OM.3sg: n-(é)-ḿ’≠kab-íé /néḿ'kabyé/ e-ḿ’≠kab-(í)é ku  OM.1pl: n-é-du≠kab-íé /nédu'kabyé/e-du≠kab-(í)é ku OM.2pl: n-é-mu≠kab-íé /némukabyé/e-mu≠kab-(í)é ku OM.3pl: n-é-va≠kab-íé /névakabyé/e-va≠kab-(í)é ku structure: [OM=sg] S()-OḾ≠[v]stem(H) -íé

[OM=pl] SḾ-OM≠[v]stem(H) -íé

[OM=sg] SM-OM≠[v]stem(H) -(í)é ku

肯定形においては,L動詞同様,単数形OMと複数形OMでパターンが異なる.前者の場合は,HがOM 位置でも実現する(IHの拡張?).後者の場合は,(L動詞であれば語幹初頭音節でHが実現するところで あるが)SM位置のみでIHが実現する.否定形では,Hが動詞語末のみで実現している.

8.2.3 状態過去

ドキュメント内 チャガ=ロンボ語 (ページ 93-96)