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命令形と接続法

ドキュメント内 チャガ=ロンボ語 (ページ 80-85)

7. 命令形と接続法

(5) a. sóm-a

‘read’-F

「読め」Soma!

b. som-ení

‘read’-F.PL

「読め(対複数)」Someni!

(6) a. kúnd-a

‘love’-F

「愛せよ」Penda!

b. kund-ení ~ kúnd-ení

‘love’-F.PL

「愛せよ(対複数)」Kuleni!

(1) のみが不規則な形であるが,それ以外は単音節語幹も含め,語幹とFのみという構造である.対複数 の命令は,Fを -eni に交替させる.動詞構造のスロットを用いて一般化すれば,次のように記述できる.

≪命令形(肯定)≫

SM- NEG2- TAM- (OM-) ≠stem -a

≪命令形(肯定・対複数)≫

SM- NEG2- TAM- (OM-) ≠stem -eni

7.1.2 否定

命令の否定形,すなわち禁止「~するな」に相当する表現は次のようである.

(7) a. u-tá≠sh-(ꜜé)

SM.2sg-NEG.SUBJ≠’come’-SUBJ

「来るな」Usije!

b. mu-tá≠sh-(ꜜé)

SM.2pl-NEG.SUBJ≠’come’-SUBJ

「来るな(対複数)」Msije!

(8) a. u-tá≠end-(é)

SM.2sg-NEG.SUBJ≠’go’-SUBJ

「行くな」Usiende!

b. mu-tá≠end-(é)

SM.2pl-NEG.SUBJ≠’go’-SUBJ

「行くな(対複数)」Msiende!

(9) a. u-tá≠l-ꜜé

SM.2sg-NEG.SUBJ≠’eat’-SUBJ

「食べるな」Usile!

b. mu-tá≠l-ꜜé

SM.2pl-NEG.SUBJ≠’eat’-SUBJ

「食べるな(対複数)」Msile!

(10) a. u-tá≠saku-é /utásakwé/

SM.2sg-NEG.SUBJ≠’watch’-SUBJ

「見るな」Usiangalie!

b. mu-tá≠saku-é /mutásakwé SM.2pl-NEG.SUBJ≠’watch’-SUBJ

「見るな(対複数)」Msiangalie!

(11) a. u-tá≠som-é

SM.2sg-NEG.SUBJ≠’read’-SUBJ

「読むな」Usisome!

b. mu-tá≠som-é

SM.2pl-NEG.SUBJ≠’read’-SUBJ

「読むな(対複数)」Msisome!

(12) a. u-tá≠kund-é

SM.2sg-NEG.SUBJ≠’love’-SUBJ

「愛するな」Usipende!

b. mu-tá≠kund-é

SM.2pl-NEG.SUBJ≠’love’-SUBJ

「愛するな(対複数)」Msipende!

これは,聞き手が単数であれば2sgの,複数であれば2plのSMをとって,Fは -e という形式が用いら れる.これは,7.2で扱う接続法(subjunctive)の形で,日本語に訳せば「~するように」という表現で おおむねカバーできる概念(未実現,あるいはirrealisである事態の表現)を表わす.命令の否定は,こ の接続法形の否定形によって表現される.接続法形において,否定概念は第2否定辞(NEG2)スロット に充填される ta- という形式で表示される.

≪命令否定=禁止=接続法否定形≫

SM(2sg)- ta- TAM- (OM-) ≠stem

≪命令否定=禁止=接続法否定形(対複数)≫

SM(2pl)- ta- TAM- (OM-) ≠stem

7.2 接続法 7.2.1 概要

接続法とは,法(mood)概念のひとつで,事態(事象 event)を,未実現(irrealis)のものとして 捉える場合の表現である.日本語では,おおむね「~するように」という形式に置き換えることができ

る.7.1.2の否定命令=禁止は,すなわち「~しないように」という表現ということになる.接続法の肯

定形について,以下に具体例を示す.

(13) lasímá ngi≠síhili-é /ngisíhilyé/

‘must’ SM.1sg≠’go out’-SUBJ

「私は出発しなければならない」Lazima niondoke

(14) boṛá u≠som-é

‘good, better’ SM.2sg≠’read’-SUBJ

「あなたは読んだ(勉強した)方がよい」Bora usome.

(15) m’≠(a)mb-i-(é) /m’mby(é)/ e≠sh-é sasá ifi OM.3sg≠’say’-APPL-SUBJ SM.3sg≠’come’-SUBJ ‘right now’

「彼(女)にすぐ来るように言って」Mwambie aje sasa hivi.

(13) は1sgを主語に取る形で,動詞構造だけを取れば「私が出発するように」という概念(より実際的

には「私が出発しましょうか」という申し出)を表わすが,lasima という副詞要素とともに用いること で,「~しなければならない」という義務の表現になる.(14) は boṛa という同じく副詞的な要素と用い ることで「あなたは~した方がよい」という意味を示す.(15) は主節動詞も,またその補部の形式も接 続法形である.前者は,「あなたが彼(女)に言うように」(2sgの SMが脱落),後者は「彼(女)が来 るように」という意味を表わす.

7.2.2 構造の一般化

まず,接続法の構造を,動詞形態論のテンプレートにしたがって示せば次のようになる.

≪接続法(肯定)≫

SM- NEG2- TAM- (OM-) ≠stem

≪接続法(否定)≫

SM- tá- TAM- (OM-) ≠stem

以下に接続法の基本活用パターンを示す.音調は単独発話におけるそれである.まずL動詞 ≠end-a

「行く」に各人称形のSMを接合した形式は次のとおりである.

肯定形 否定形

SM.1sg: ngí≠end-(é) ngi-tá≠end-(é)

SM.2sg: ú≠end-(é)u-tá≠end-(é)

SM.3sg: é≠end-(é)e-tá≠end-(é)

SM.1pl: dú≠end-(é)du-tá≠end-(é)

SM.2pl: mú≠end-(é)mu-tá≠end-(é)

SM.3pl: vé≠end-(é)va-tá≠end-(é)

structure: SḾ≠[v]stem(L)-(é) SM-tá≠[v]stem(L)-(é)

肯定形,否定形とも,F位置でHが実現する(単独発話では実現しないこともある).肯定形ではSM位 置で,否定形ではNEG2位置でHが実現する.

次に,H動詞 ≠kab-a「叩く」の活用パターンを示す.

肯定形 否定形

SM.1sg: ngí≠kab-(é) ngi-tákab-(é)

SM.2sg: ú≠kab-(é)u-tákab-(é)

SM.3sg: é≠kab-(é)é-tákab-(é)

SM.1pl: dú≠kab-(é)du-tákab-(é)

SM.2pl: mú≠kab-(é)mu-tákab-(é)

SM.3pl: vá≠kab-(é)va-tákab-(é)

structure: SḾ≠[v]stem(H)-(é) SM-tá≠[v]stem(H)-(é)

H動詞も,L動詞同様の音調パターンを見せる.つまり,接続法形においては,音調パターンの対立が中 和していると見てよさそうである.

ドキュメント内 チャガ=ロンボ語 (ページ 80-85)