第 3 章 機械設備保全作業教育支援システムの開発 31
3.5 運用試験
提案方法が,化学プラントで多く使用されている遠心ポンプの分解作業の進捗判定 に適用した.遠心ポンプの分解作業を8工程に区分した分解作業は(1)ケーシング,
(2)羽根車,(3)地面カバー,(4)ボールベアリング,(5)メカニカルシール,(6)ベ アリングカバー,(7)ボールベアリング,(8)主軸の取り外し工程から成す.これらの 作業に対し,SURFおよび提案方法を用いて作業進捗の判定精度を比較した.さらに,
作業の未完了箇所検出機能を確認した.
3.5.1 作業の進捗判定
分解点検作業の進捗状況判定の一例として,第4工程の例を以下に述べる.遠心ポ ンプの入力画像を図3.5に示す.入力画像には,作業者の足,道具および床のテープ線 などが写っている.SURFより検出されたキーポイント第1工程から第8工程までの テンプレート画像のキーポイントの数を表3.1に示している.表3.1の上の段のキー
ポイント数は,外れ値を除外する処理が行われていない.表3.1下段は外れ値となる キーポイントを除外した後のキーポイント数を示している.キーポイントの数,一致 キーポイント数が同一の場合には,テンプレート画像番号が低い方が選ばれるように している.本例の場合,外れ値除去処理前の結果からは,作業進捗の段階としては第3 工程のテンプレート画像が選ばれる.提案方法により外れ値に相当するキーポイント を除去した結果,作業進捗は第4工程であると正しく判定された.
表3.1 図8の入力画像に対するキーポイントの数
第1工程 第2工程 第3工程 第4工程 第5工程 第6工程 第7工程 第8工程
処理前 6 2 11 11 8 2 5 1
処理後 3 1 7 10 5 2 3 1
図3.5 入力画像およびSURFにより検出された一致キーポイント
図3.6 第3工程のテンプレート画像および一致キーポイント
図3.7 第4工程のテンプレート画像および一致キーポイント
3.5.2 作業未完了箇所の検出
次に,第5工程を一例として分解作業の未完了箇所の有無を判定した結果について 述べる,遠心ポンプの入力画像を図3.8に示す.背景差分処理によリ入力画像とテン プレート画像の差分を求める,作業未完了箇所を検出した結果を以下に示す.入力画 像とテンプレート画像の検出キーポイント数はそれぞれ350個と307個となった.そ のうち画像補正に使用されたキーポイント数は各23個となった,アフィン変換行列A は式(3.16)に示す.
A=
0.9926 −0.0214 20.4055 0.0214 0.9926 −19.4475
0 0 1
(3.16)
変換行列Aを用いて,逆行列A−1 を求めた.
A−1 =
1.0070 0.0217 −20.1264
−0.0217 1.0070 20.0264
0 0 1
(3.17)
図3.8の入力画像を逆行列A−1 を用いて変換した.その後入力画像とテンプレート 画像との間で差分処理を行った結果を画像を図3.10に示す.次に大津の方法により,
分離度が最大となる閾値Th の値を求めた結果,閾値はTh=71.0となった.図3.11に 二値化処理後の結果,第5工程には未完了箇所(メカニカルシール取外し)があるこ とを正しく検出することができた.
図3.8 入力画像
図3.9 第5工程作業のテンプレート画像
図3.10 アフィン変換後の差分画像
図3.11 二値化後の画像(メカニカルシールの検出)
3.5.3 処理時間
入力画像は,インターネットを介してサーバーに送信され, テンプレートマッチン グにより進捗判定および作業未完了箇所の判定が行われた.テンプレートの数を29個 に増やし,テンプレートマッチングに要した処理時間をSSD法および提案方法につい て比較した.SSD 法による処理時間は,テンプレート画像の数の増加に伴って急激に 増加した.29枚のテンプレート画像に対してのテンプレートマッチングに要した処理 時間は130秒であった. 提案方法では,29枚のテンプレート画像に対するのテンプ レートマッチングに18秒を要した.処理時間は85%短縮された.