第 4 章 従業員の職務満足と継続就業意思の経年変化とその因果関係の解明 44
4.3 調査結果
4.3.2 対象者属性の違いによる継続就業意思(項目 Q1 )への影響 . 50
調査した対象者の男女比率は,2012年度0.53:0.47,2014年度 0.46:0.54,2015年
度0.54:0.46であり,男女比率に極端な差はない.3回の調査データを一括し,職位,
配偶者の有無,転職経験および性別の違いにより項目Q1に有意差があるといえるかを 分散分析により調べた.属性毎の分散分析表を表4.3から表4.6に示す.
職位を因子とする分散分析において,マイスターの平均値4.39,工員2級の平均値 3.96,工員3級の平均値3.51,検定統計量F0 = 120.4,有意水準を5%とするときの 棄却限界F(0.05,2,1605) = 3.00<120.4であることから,職位の違いにより項目Q1
に有意差のあることが示された.
配偶者の有無を因子とする分散分析において,配偶者なしの平均値3.90,配偶者あ りの平均値4.14,検定統計量F0 = 20.9,棄却限界F(0.05,1,1606) = 3.84<20.9で あることから,配偶者の有無により項目Q1 に有意差のあることが示された.
転職経験の有無を因子とする分散分析において,転職経験なしの平均値3.93,転職経
験ありの平均値4.02,検定統計量F0 = 3.52,棄却限界F(0.05,1,1606) = 3.84>3.52 であることから,転職経験の有無により項目Q1 に有意差があるとはいえないことが示 された.
性別を因子とする分散分析において,男性の平均値3.95,女性の平均値4.00,検定 統計量F0 = 1.05,棄却限界F(0.05,1,1606) = 3.84>1.05であることから,性別に より項目Q1 に有意差があるとはいえないことが示された.
以上の結果より,継続就業意思Q1の変化を経年変化および職位により層別して考察 する.配偶者の有無により項目Q1 に差が生じることが示されたが,配偶者の有無を因 子とする分散分析における分散比20.9は,職位を因子とする分散分析における分散比
120.4よりも小さいため,継続就業意思Q1 の変化を配偶者の有無により層別すること
は考慮しないことにする.
表4.3 職位分散分析表
因子 平方和 自由度 平均平方 F0値 P 値 職位 186.7 2 93.3 120.42∗∗∗ P <0.001
誤差 1243.9 1605 0.78
全体 1430.6 1607
表4.4 配偶者分散分析表
因子 平方和 自由度 平均平方 F0値 P 値
配偶者 18.4 1 18.4 20.91∗∗∗ P <0.001
誤差 1412.2 1606 0.88
全体 1430.6 1607
表4.5 転職経験分散分析表
因子 平方和 自由度 平均平方 F0値 P 値
転職経験 3.1 1 3.1 3.52 0.061
誤差 1427.4 1606 0.89
全体 1430.6 1607
表4.6 性別分散分析表
因子 平方和 自由度 平均平方 F0値 P 値
性別 0.9 2 0.94 1.05 0.305
誤差 1429.6 1606 0.89
全体 1430.6 1607
4.3.3 継続就業意思の時間的変化
(1)今の会社に勤めたいと考えている期間(項目Q1)
有効回答数は1,725であった.年度毎の人数割合を,図4.3に示す.半年以内の転 職(選択肢1または2)を考えている人数割合は,2012年度と比較して,2014年度 は1.8%減少し,2015年度は2.0%減少しているが,減少割合は小さい.一方,3年間 以上勤めることを望む人数割合には顕著な増加が見られ,2012年度と比較して,2014
年度は5.3%増加し,2015年度は12.0%増加している.選ばれた選択肢を点数と捉
え,平均値の差の検定を行った.調査年度毎の平均値,不変分散,有効回答数を表4.7 に示す.2012年度と 2014年度の平均値に差がないことを帰無仮説として平均値の 差の検定を行い,検定統計量はt0 = 1.82,有意水準を 5%とするときの棄却限界は t(1138,0.05) = 1.96 > 1.82となり,2012年度と2014年度の平均値には差がないと いえることが示された.次に,2012年度と2015年度の平均値に差がないことを帰無 仮説として平均値の差の検定を行い,検定統計量はt0 = 3.14,有意水準を5%とする ときの棄却限界はt(1134,0.05) = 1.96 <3.14となり,平均値に差があるとはいえる ことが示された.さらに,年度により選択肢1から選択肢5の人数割合に差がないこ とを帰無仮説として検定を行った.検定統計量は28.8,有意水準を5%とする場合の 棄却限界はχ2(8,0.25) = 17.53<28.8となり,年度により選択肢1から5の人数割合 に差があるとはいえることが示された.従って,会社に対する継続就業意思は年度進 行に伴い高まっていることが読み取れる.この結果は,図4.2において離職率が年度 進行に伴い減少していることを裏付けていることが分かった.
表4.7 今の会社に勤めたいと考えている期間(項目Q1)に対する回答集計
調査年度 平均値 不変分散 有効回答数
2012 3.9 0.92 551
2014 4.0 0.84 589
2015 4.1 0.85 585
図4.3 今の会社に勤めたいと考えている期間(項目Q1)に対する回答割合(調査 年度別全対象者)
(2)今の仕事を続けたいと考えている期間(項目Q2)
項目Q2に対する選択肢には,項目Q1 と同じ選択肢が用いられた.回答における各 選択肢の人数割合を図4.4に示す.半年以内に仕事内容の変更を望む選択肢1または2 の人数割合は,2012年度と比較して,2014年度は0.8%減少し,2015年度は0.6%減 少しているが,減少割合は小さい.一方,3年間以上今の仕事を継続することを望む 選択肢5の人数割合は,2012年度と比較して,2014年度は3.4%増加し,2015年度 は6.7%増加している.そこで,各選択肢の人数割合に年度による差はないことを帰無 仮説として検定を行った.検定統計量は9.2,有意水準を5%とするときの棄却限界は χ2(8,0.025) = 17.53>9.2となり,年度が変わっても今の仕事に対する継続就業意思 に差がないといえることが示された.従って,図4.1において仮定した個別の仕事に 対する継続就業意思Q2 により離職率の経年変化を直接説明することは難しいことが 示された.
図4.4 今の仕事を続けたいと考えている期間(項目Q2)に対する回答割合(調査 年度別全対象者)
図4.5 仕事への意欲(項目Q3)に対する回答割合(調査年度別全対象者)
(3)仕事への意欲(項目Q3)
回答は,1(意欲を感じない),2(どちらかといえば意欲を感じない),3(どちらかと いえば意欲を感じる),4(意欲を感じる)からなる4つの選択肢から選ばれており,各 選択肢の人数割合を図4.5に示す.選択肢1,4の人数割合には顕著な変化は見られな い.しかし,2012年度から2015年度にかけて選択肢2の人数割合は,6.0%増加し,
選択3の人数割合は4.4%減少している.そこで,各選択肢の人数割合に年度による差 はないことを帰無仮説として検定を行った.検定統計量は10.4,有意水準を5%とす るとき,棄却限界はχ2(6,0.025) = 14.45> 10.4となり,年度が変わっても仕事への 意欲に差がないといえることが示された.従って,離職率の経年変化を仕事への意欲 の変化により直接説明することは難しいことが示された.