の推定
前章では主成分分析を用いることで脳波−トルク間の線形モデルを導出し,屈 伸動作を行った際の脳波を入力とすることで,トルクの推定に成功し,線形モデ ルの有効性が確認できた.しかし,脳波信号は時間に伴って変化する信号のため,
脳波とトルク間の時間遅延の考慮が必要となる.本章では,遅延を考慮した上で リアルタイム制御に向けた線形モデルの作成を行うことにより,脳波から肩関節 の屈曲/伸展動作時のパワーアシストを実現する.
6.1 線形モデルの作成手法
モデルの式を以下のように提案する.
YEM GM =a+
∑L k=0
∑N n=1
(bnkXEEGM (t−k)) (6.1)
ここで,タイムラグと言うパラメータを導入する.Lはタイムラグの数であり,N は計測する電極の数,Mは計測したサンプルの番号である.ただし,ここのタイ ムラグは計測や制御システム上の遅延ではなく,運動したときの脳波の変化の最 大値の時刻と発生した筋電の最大値の時刻の差を意味する.この式の係数を求め れば,モデルが作成できる.今回は最小二乗法を用いて,式(6.1)の方程式を解
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6.1. 線形モデルの作成手法 66 く.モデルは以下のような式で書き換えることができる.
YM = ΦM ·θ+εM (6.2)
ここで,YM はM個のサンプルの筋電信号の振幅である.εM は誤差であり,ΦM
は以下の式である.
ΦM =
XEEG1e
1 XEEG1e
2 · · · XEEG1ei 1 XEEG2e1 XEEG2e2 · · · XEEG2ei 1
...
XEEGM e1 XEEGM e2 · · · XEEGM ei 1
(6.3)
ここで,XEEG
M ei は計測された脳波であり,その中のeiは各電極の番号である.
θは係数の行列であり,以下の式となる.
θ = [
b1k b2k ... bnk a ]T
(6.4)
ここで,bnkはn個目の電極のk個目のラグに対応するベクトルである.
次に,最適解を得るため,目標関数J(θ)を以下のように定義する.
J(θ) = 1
2εTM ·εM = 1
2(YM −ΦM ·θ)T (YM −ΦM ·θ) (6.5) そして,θに対する偏微分が0の時,残差が最小となり,最適解を求められる.
すなわち,以下の式となる.
∂J
∂θ =− ·ΦTM(YM −ΦM ·θ) = 0 (6.6)
これにより,θの最適解が以下のように求められる.
θˆ=(
ΦTM ·ΦM
)−1
·ΦTM ·YM (6.7)
6.2. 実験設計 67
6.2 実験設計
提案手法を確認するため,実験を行った.本実験は,被験者を20代の健常な右 利き男性3名とし,あらかじめ実験内容を説明して同意を得た上で行った.
● 脳波の計測部位
第5章の結果より,運動時は脳全体が協調し,動作を実現する結論に至った.
したがって,計測時はにもできるだけ測定範囲を広げることでより多くの 情報を取得し,結果的に精度の向上につながると考え,本実験ではCP1と CP2の二点をP3とP4に変更した.そして,新たな計測点として,Czを選 定し,Fpzをグランド電極とした.したがって,最終的な計測点はFz,C3, C4,Cz,P3,P4,O1,O2の8点となる.
● 肩関節の表面筋電位の計測部位
第5章と同じく,筋電は肩関節の三角筋前部を計測点として用いた.
● 計測内容
図6.1のように,被験者は開眼状態で,5分間以内に連続で3 Kgの重りを 持ちながら肩の屈曲と伸展運動を行った.肩の屈曲と伸展運動を合わせて1 試行とした.脳波計測点は先ほど述べたようにFz,C3,C4,Cz,P3,P4,
O1,O2の8点として,それぞれ耳朶との差動増幅(単極誘導)を行った.同 時に,肩動作時に働く三角筋前部を計測点として筋電計測を行い,右手首を ボディーアースとした.試行回数は約80回である.実験内容を確認のため 実験中ビデオを録していた.
6.2. 実験設計 68
Electrode for EMG Head Cap
Fz
A2 (Ref)
C3 C4
G
G