5. 軸受内部すきま
5.1 軸受のラジアル内部すきま
軸受のラジアル内部すきま(初期のラジアル内部すきま)
とは,軸受を軸又はハウジングに取付ける前の状態で,軌道 輪(内輪又は外輪)のいずれかを固定して,固定されていな い軌道輪をラジアル方向に移動させたときの軌道輪の移動量 をいう。
ソリッド形針状ころ軸受(内輪付き)の,ラジアル内部 すきまの値を表5.1に示す。表5.1(1)は互換性すきまで,
内輪又は外輪を組み換えても,このすきまの値を満足する。
表5.1(2)は非互換性すきまで,すきまの範囲が狭く,内 輪又は外輪の組み換えはできない。すきま記号は小さい方か らC2,普通,C3,C4となり,非互換性すきまの場合は記 号"NA"が付く。
ソリッド形針状ころ軸受以外のラジアル内部すきまの値 は,それぞれの寸法表に記載されている解説の項を参照くだ さい。
5.2 運転すきま
5.2.1 運転すきまの設定
軸受の運転状態でのすきま,すなわち運転すきまは,初 期のラジアル内部すきまより,はめあい及び内輪と外輪の温 度差によって一般には小さくなる。この運転すきまは軸受の
寿命,発熱,振動,あるいは音響にも影響するので,最適に 設定する必要がある。
理論的には,軸受の定常運転状態での運転すきまが,僅 かに負であるとき軸受寿命は最大となるが,実際にこの最適 状態を常に保つことは困難である。何らかの使用条件の変動 によって負のすきま量が大きくなると,著しい寿命低下と発 熱を招くので,一般には運転すきまが零より僅かに大きくな るように初期のラジアル内部すきまを選定する。
通常の使用条件,すなわち普通荷重のはめあいを用い,
回転速度,運転温度などが通常である場合には,普通すきま を選定することによって適切な運転すきまが得られる。
5.2.2 運転すきまの計算
軸受の運転すきまは,初期のラジアル内部すきまと,し めしろによる内部すきま減少量及び内輪と外輪の温度差によ る内部すきまの減少量から式(5.1)で求めることができる。
δeff=δ0−(δf+δt)………(5.1)
ここで,
δeff:運転すきま mm
δ0 :初期ラジアル内部すきま mm
δf :しめしろによる内部すきまの減少量 mm
δt :内輪と外輪の温度差による内部すきまの減少量 mm
1
単位 μm
― 10 0 30 10 40 25 55 35 65 10 18 0 30 10 40 25 55 35 65 18 24 0 30 10 40 25 55 35 65 24 30 0 30 10 45 30 65 40 70 30 40 0 35 15 50 35 70 45 80 40 50 5 40 20 55 40 75 55 90 50 65 5 45 20 65 45 90 65 105 65 80 5 55 25 75 55 105 75 125 80 100 10 60 30 80 65 115 90 140 100 120 10 65 35 90 80 135 105 160 120 140 10 75 40 105 90 155 115 180 140 160 15 80 50 115 100 165 130 195 160 180 20 85 60 125 110 175 150 215 180 200 25 95 65 135 125 195 165 235 200 225 30 105 75 150 140 215 180 255 225 250 40 115 90 165 155 230 205 280 250 280 45 125 100 180 175 255 230 310 280 315 50 135 110 195 195 280 255 340 315 355 55 145 125 215 215 305 280 370 355 400 65 160 140 235 245 340 320 415 400 450 70 190 155 275 270 390 355 465 呼び軸受内径
d(mm)
を超え 以下
C2 普通 C3 C4
最小 最大 最小 最大 最小 最大 最小 最大 ラジアル内部すきま
1
表5.1 ソリッド形針状ころ軸受のラジアル内部すきま 表5.1(1)互換性軸受
2
単位 μm 呼び軸受内径
d(mm)
を超え 以下
C2NA 普通 C3NA C4NA 最小 最大 最小 最大 最小 最大 最小 最大
ラジアル内部すきま
2
― 10 10 20 20 30 35 45 45 55 10 18 10 20 20 30 35 45 45 55 18 24 10 20 20 30 35 45 45 55 24 30 10 25 25 35 40 50 50 60 30 40 12 25 25 40 45 55 55 70 40 50 15 30 30 45 50 65 65 80 50 65 15 35 35 50 55 75 75 90 65 80 20 40 40 60 70 90 90 110 80 100 25 45 45 70 80 105 105 125 100 120 25 50 50 80 95 120 120 145 120 140 30 60 60 90 105 135 135 160 140 60 35 65 65 100 115 150 150 180 160 180 35 75 75 110 125 165 165 200 180 200 40 80 80 120 140 180 180 220 200 225 45 90 90 135 155 200 200 240 225 250 50 100 100 150 170 215 215 265 250 280 55 110 110 165 185 240 240 295 280 315 60 120 120 180 205 265 265 325 315 355 65 135 135 200 225 295 295 360 355 400 75 150 150 225 255 330 330 405 400 450 85 170 170 255 285 370 370 455
表5.1(2)非互換性軸受
5. 軸受内部すきま
NTN(1)しめしろによる内部すきま減少量
しめしろをあたえて軸受を軸又はハウジングに取付ける と,内輪は膨張し外輪は収縮するので,軸受のラジアル内部 すきまは減少する。
内輪又は外輪の膨張あるいは収縮量は,軸受の形式,軸 又はハウジングの形状,寸法及び材料によって異なるが,近 似的には有効しめしろの85%程度である。詳細はA-35ペ ージ表6.4を参照ください。
δf=0.85・Δdeff………(5.2)
ここで,
δf :しめしろによる内部すきまの減少量 mm Δdeff:有効しめしろ mm
(2)内輪と外輪の温度差による内部すきま減少量 軸受の運転中は,一般的に外輪の温度が内輪又は転動体 の温度より5〜10℃ほど低くなる。ハウジングからの放熱 が大きいとき,又は軸が熱源に連なっていたり,中空軸の内 部に加熱された流体が流れていたりすると,内輪と外輪の温 度差は更に大きくなる。この温度差による内輪と外輪の熱膨 張量の差だけ内部すきまが減少する。
δt=α・ΔT・D0………(5.3)
ここで,
δt:内輪と外輪の温度差による内部すきま減少量 mm α :軸受鋼の線膨張係数 12.5×10−6/℃
ΔT:内輪と外輪の温度差 ℃ D0 :外輪の軌道径 mm
D0≒0.25(d+3D)
d :軸受内径 mm
D :軸受外径 mm
軸又はハウジングを直接軌道として用いるときは,軸を 内輪,ハウジングを外輪とみなして温度差(ΔT)を求める。
5.3 はめあいと軸受のラジアル内部すきま
軸とハウジングの穴の許容差が決定された場合,組立後 に適性すきまを得るような軸受の初期のラジアル内部すきま を決定する目安として図5.1に示すように簡便なノモグラム がある。図5.1は目安のため,詳細についてはNTNにご照会 ください。
例えば図5.1で,内輪付き針状ころ軸受のはめあいが J7/m6として与えられた場合,組立後の運転すきまを標 準にするためにはC3すきまが必要であることを示している。
図5.1 はめあいとラジアルすきまの関係 H6/7 J6
h5/6 j5 j6 k5 k6 m5 m6 n5 n6
普通 C3 C4
J7 K6 K7 M6 M7 N6 N7 ハウジングの 穴の公差域クラス
ラジアルすきま
軸の公差域クラス
6. はめあい
NTN6. はめあい
6.1 はめあいについて
転がり軸受は,内輪及び外輪を軸又はハウジングに固定 して,荷重を受けたときに、軌道輪と軸又はハウジングのは めあい面で,ラジアル方向,アキシアル方向及び回転方向に 相対的な動きが生じないようにする。はめあいにはしめしろ の有無により,『しまりばめ』『中間ばめ』『すきまばめ』が ある。
軸受を固定するには,軌道輪と軸又はハウジングとのは めあい面にしめしろを与えて,しまりばめとすることが最も 有効な方法である。またこの方法は,薄肉の軌道輪を全周に わたり均等な荷重で支えているので,軸受の負荷能力を損な わないという利点もある。一方,しまりばめでは軸受の取付 け,取外し作業の容易さが失われるなど,すべての場合に用 いることはできない。
6.2 適切なはめあいの必要性
不適切なはめあいが軸受の破損や短寿命になる場合があ るので,選定には充分な検討が必要である。はめあいに起因 する不具合には以下のような事例がある。
¡軌道輪の割れ,早期はく離及び軌道輪の移動
¡クリープ,フレッティングコロージョンによる軌道輪及び 軸,ハウジングの摩耗
¡内部すきま過少による焼付き
¡軌道面変形による回転精度不良,音響不良
6.3 はめあいの選定
はめあいの選定は,一般的に次のような原則によって行 われる。
軸受に作用する荷重の方向と性質及び内輪と外輪のいず れが回転しているかによって,各々の軌道輪にかかる荷重が 回転荷重,静止荷重又は方向不定荷重かに分けられる。
回転荷重及び方向不定荷重を受ける軌道輪はしまりばめ とし,静止荷重を受ける軌道輪は中間ばめ又はすきまばめに することができる(表6.1参照)。
軸受荷重が大きい場合又は振動・衝撃荷重を受けるとき,
中空軸,又は軽合金・プラスチック製ハウジングを用いる場 合にはしめしろを大きくとる必要がある。ただし,その際は,
ハウジングの剛性を考慮してハウジングの変形や割損,軸受 の変形,はめあい部のかじりや,それらに伴うはめあい精度 不良などの問題がないように注意する。
回転精度を高く保つ必要のある用途には,高精度の軸受 を用い,軸及びハウジングの寸法精度を良くして,大きなし めしろを与えないようにする。これは大きなしめしろによっ て,軸又はハウジングの形状が軸受の軌道に移り,軸受の回 転精度を損なう場合があり,これらを防ぐためである。
表6.1 ラジアル荷重の性質とはめあい
軸受の回転条件 図 例 荷重の性質 はめあい
内 輪 外 輪
内輪:回転 外輪:静止 荷重方向:一定
内輪:静止 外輪:回転 荷重方向:一定 内輪:静止 外輪:回転
荷重方向:外輪ととも に回転
内輪:回転 外輪:静止
荷重方向:内輪ととも に回転 内輪:回転または静止 外輪:回転または静止 荷重方向:方向が確定 できない
荷重方向が変動した り,不つり合い荷重 があるなど,荷重方 向が一定しない。
内輪回転荷重
外輪静止荷重
内輪静止荷重
外輪回転荷重
方向不定荷重
しまりばめとする。
しまりばめとする。 しまりばめとする。
すきまばめでもよい。
すきまばめでもよい。 しまりばめとする。
6. はめあい
NTN6.4 推奨はめあい
軸受が取付けられる軸及びハウジングの軸径,穴径の寸 法公差は,メートル系の場合にはISO 286及びJIS B 0401(寸法公差及びはめあいの方式)で標準化されている。
したがってはめあいは,軸径及び穴径の寸法公差を選定する ことによって定まる。
寸法及び荷重条件を要因として,一般的に用いられてい るソリッド形針状ころ軸受(内輪付き)の推奨はめあいを表 6.2に示す。表6.3にはめあい数値表を示す。
ソリッド形針状ころ軸受以外の推奨はめあいは,それぞ れの寸法表に記載されている解説の項をご参照ください。
表6.2(2)ハウジング穴の公差域クラス(推奨)
j5 k5 m5 m6 m6 n6 g6 h6 h5 公差域クラス 条 件
荷重の性質 荷重の大きさ 軸径 d mm
内輪回転荷重 又は 方向不定荷重
内輪静止荷重
軽荷重 普通荷重
一般的な用途 重荷重及び 衝撃荷重 中低速回転,
軽荷重 高回転精度を 要する場合
全寸法
〜 50
〜 50 50〜150 150〜
〜150 150〜
備考 軽荷重,普通荷重及び重荷重の区分は,次による。
軽荷重 Pr≦0.06Cr 普通荷重 0.06Cr<Pr≦0.12Cr 重荷重 Pr>0.12Cr
J7 H7 M7 N7 P7 J7 K7 M7 K6 公差域クラス 条 件
備考 軽荷重,普通荷重及び重荷重の区分は,次による。
軽荷重 Pr≦0.06Cr 普通荷重 0.06Cr<Pr≦0.12Cr 重荷重 Pr>0.12Cr
外輪静止荷重
外輪回転荷重
方向不定荷重
軽荷重で高回転精度を要する場合 普通及び重荷重
二つ割ハウジングで普通荷重 軽荷重
普通荷重 重荷重及び衝撃荷重 軽荷重
普通荷重 重荷重及び衝撃荷重 表6.2 ソリッド形針状ころ軸受のはめあいの一般基準(JIS 0級,6級)
表6.2(1)軸の公差域クラス(推奨)