8. 軸及びハウジングの設計
軸受が正しく選定されても,その軸受が取付けられる軸 受周りが正しく設計されていなければ,軸受の機能を十分発 揮することはできない。特に針状ころ軸受は他の転がり軸受 と比べて軌道輪の肉厚が薄いので,軸及びハウジングの設計 には特別な考慮をはらわなければならない。
8.1 軸受取付け部の設計
保持器付き針状ころを単体で用いて軸の肩で直接,アキ シアル方向に案内する場合(図8.1)は,保持器の側面が接 触する軸の肩の部分は仕上げを良くし,またかえりがあって はならない。高速又は重荷重で運転される際にはその接触面 を焼入れし,研削仕上げする。
止め輪を用いて保持器のアキシアル方向案内を行う際
(図8.1)は,止め輪の切断部が直接保持器に接触しないよ うに保持器と止め輪の間にスラストリングを使用する。この ときに用いる止め輪は,NTN針状ころ軸受用として設計し たNTN軸用止め輪WR形がある。(寸法表B-267ページ参照)
図8.1 スラストリングによる固定
図8.2 アキシアル方向固定
図8.3 スラストリングの案内面の設計 保持器
止め輪 スラストリング
スラストリング 軸受
止め輪
0.6〜1mm 5〜6mm
角をまるめる
切欠き溝
切欠き溝
ラジアル針状ころ軸受はアキシアル方向には自由に動き 得るので,軸のアキシアル方向位置決めとしては,片側に玉 軸受あるいはスラスト軸受を使用する。しかし,アキシアル 荷重が小さく,また回転速度もあまり高くない場合には(例 えば歯車箱のあそび歯車)図8.2に示めすように軸にスラス トリングを取付け,ハウジングの端面との間に滑り軸受を形 成して,アキシアル方向の位置決めをする。このような設計 では,その案内面に十分潤滑が行われるように注意する。図 8.3はスラストリングの一例で案内面に油溝を加工したもの である。この油溝と平面部の境は面を取り,ばりがあっては ならない。
一般に針状ころ軸受を正しく取付けるためには内輪,外 輪とも,それぞれアキシアル方向に位置決めして,運転中に
(1)内輪
内輪を軸に正しく固定するためには,軸の肩の面は軸心 に対して正しく直角に仕上げ,また軸の隅の丸みは内輪の面 取り寸法より小さくする。
引抜き作業を容易にするため,図8.4に示すように引抜き 治具の爪のための切欠き溝を軸肩に設け,図8.5に示す方法 で引抜治具により内輪を引き抜く。
内輪をアキシアル方向に簡単に固定するためにNTN軸用 止め輪WR形(寸法表B-267ページ参照)が使用できる
(図8.6)。そのほか図8.7及び図8.8に示すようにエンドプ レートあるいは側輪を用いてアキシアル方向に固定すること もできる。
8. 軸及びハウジングの設計
NTN引抜治具
内 輪
側 輪 図8.5 引抜治具具による取外し
図8.6 止め輪による内輪固定方法
図8.7 エンドプレートによる内輪固定方法
図8.8 側輪による内輪固定方法
(2)外輪
外輪をアキシアル方向に固定するためハウジングの肩の 形状は,内輪の項で述べたと同様の注意が必要である。
外輪をアキシアル方向に固定する例を図8.9及び図8.10 に示す。
外輪もNTNハウジング用止め輪BR形(寸法表B-269ペ ージ参照)が使用できる。NTN止め輪は断面高さの小さい 針状ころ軸受に適合した寸法を採用している。しかし,断面 高さが十分大きい場合は,市販のJIS規格止め輪を使用する こともできる。
図8.9 蓋による外輪固定方法
図8.10 止め輪による外輪固定方法 蓋
止め輪
止め輪
8. 軸及びハウジングの設計
NTN8.2 軸受の取付け関係寸法
8.2.1 肩の高さと隅の丸み
軸及びハウジングの肩高さhは,軸受の最大面取寸法rs maxより大きくして,軸受端面が平坦部で接触するように設 計する。隅の丸みrasmaxは軸受の最小面取寸法rs minより 小さくし,干渉しないようにする。一般に表8.1に示す軸及 びハウジングの隅の丸みの半径と肩の高さを用いる。
軸受を取付けるときに関係のある軸及びハウジングの寸 法は,各軸受の寸法表に記載されている。この寸法表に示す 肩の直径は肩の面取りを除いた軸受側面と接触する有効な肩
の直径を示している。 8.2.3 スラスト軸受の取付け関係寸法
スラスト軸受は負荷と剛性の面で軌道輪の支持面を十分 に広くする必要があり、寸法表記載の取付け関係寸法を採る。
(図8.12)
そのため,ラジアル軸受より軸受及びハウジングの肩高 さは大きくなる。(各スラスト軸受の取付け関係寸法につい ては寸法表に記載している。)
rs min ras max h(最小)
単位 mm
0.15 0.2 0.3 0.6 1 1.1 1.5 2 2.1 2.5 3 4
0.15 0.2 0.3 0.6 1 1 1.5 2 2 2 2.5 3
0.6 0.8 1 2 2,5 3.25 4 4.5 5.5 5.5 6.5 8
表8.1 軸及びハウジングの隅の丸みの半径と肩の高さ
表8.2 軸及びハウジングの隅部の研削逃げ寸法
rs min
rs min
rs min
rs min
ras max h ras max h
rs min
rs min
rcs
rcs
b
b t t 1
1.1 1.5 2 2.1 3 4
2 2.4 3.2 4 4 4.7 5.9
0.2 0.3 0.4 0.5 0.5 0.5 0.5
1.3 1.5 2 2.5 2.5 3 4 rs min b t rcs
単位 mm
rs min
ras max
rs min
(a) (b)
軸受 間座 軸受
間座
図8.12
8.2.2 間座及び研削逃げを用いる場合
応力集中を緩和し軸の強度を増すために,隅の丸みras maxを軸受面取寸法より大きくする必要があるとき(図 8.11a),又は軸の肩が低く十分な接触面積が得られないと き(図8.11.b)には,軸肩と軸受との間に間座を用いる。
軸又はハウジングのはめあい面を研削仕上げした場合の 寸法を表8.2に示す。
8. 軸及びハウジングの設計
NTN8.3 軸及びハウジングの精度
針状ころ軸受の軌道輪は薄肉になっているので,その軌 道面の精度は取付けられる軸及びハウジングのはめあい部の 精度が影響する。
通常の使用条件における軸及びハウジングのはめあい部 の寸法精度,形状精度及び表面粗さとはめあい面に対する肩 の振れ公差を,表8.3に示す。
二つ割ハウジングを使用する場合は,合せ面の内径側に 逃げを取ることによって,ハウジング合せ面を締めつけたと き,外輪の変形を小さくさせる方法もある。
表8.3 軸及びハウジングの精度(推奨)
特 性 軸 ハウジング
寸法精度 真円度 円筒度
肩の直角度(最大)
はめあい面の粗さ
IT6(IT5)
IT3 IT3
IT7(IT6)
IT4 IT3 0.8a 1.6a 備考( )内は精度等級5級以上の軸受に適用する。
(最大)
8.4 軌道面の精度
針状ころ軸受では軸及びハウジングを直接その軌道面と して用いることが少なくない。ラジアルすきまを規定の許容 差内におさめ,高い回転精度を得るためには,軌道面の寸法 精度,形状精度及び表面粗さは,軸受の軌道面と同等でなけ ればならない。軌道面の精度及び表面粗さの仕様を表8.4に 示す。
表8.4 軌道面の精度(推奨)
8.5 軌道に用いる材料と硬さ
軸又はハウジングの外径面又は内径面を軌道面として用 い る と き は , 十 分 な 負 荷 容 量 を 得 る た め , 表 面 硬 さ を HRC58〜64にする必要があり,表8.5に示す材料などに 適切な熱処理をして使用する。
特 性 軸 ハウジング
寸法精度 真円度 円筒度
肩の直角度(最大)
表面粗さ
IT5(IT4)
IT3(IT2)
IT3
IT6(IT5)
IT4(IT3)
IT3 軸径φ80以下 :0.2a 軸径φ80を超えφ120以下 :0.3a 軸径φ120を超え :0.4a 注)( )内は高回転精度の場合に適用する。
(最大)
表8.5 軌道に用いる材料
鋼 種 代表例 規 格
高炭素クロム軸受鋼 SUJ2 JIS G 4805
ステンレス鋼 SUSU440C JIS G 4303
炭素工具鋼 SK85
JIS G 4401 ニッケルクロムモリブデン鋼
SNCM420
クロム鋼 SCr420
クロムモリブデン鋼 SCM420 JIS G 4053
(旧:JIS G 4105)
JIS G 4053
(旧:JIS G 4104)
JIS G 4053
(旧:JIS G 4103)
(旧:SK5)
鋼を浸炭焼入れ又は浸炭浸窒焼入れにより表面硬化させ るとき,JISでは表面からHV550までの深さを有効硬化層 と定義している。有効硬化層深さの最小値は式(8.1)にて 概略で表わされる。
Ehtmin≧0.8Dw(0.1+0.002Dw)………(8.1)
ここで,
Ehtmin:最小有効硬化層深さ mm Dw :ころの直径 mm
8.6 軸受の許容傾斜
軸のたわみ,軸及びハウジングの加工精度,取付け誤差 などによって,軸受の内輪と外輪とは多少の傾きを生じるこ とがある。許容傾斜は軸受の形式,荷重,軸受内部すきまな どによって異なるが,寿命低下及び保持器の破損の恐れがあ るためその目安は一般用途の場合,表8.6に示す傾斜度以下 で使用する必要がある。
表8.6
軸受形式 許容傾斜度 ラジアル針状ころ軸受 1/2 000 スラスト軸受 1/10 000