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第5章 実験結果 I 磁化特性についての評価

5.2 超格子試料の磁化測定の結果

B1シリーズ試料の磁化測定の結果

第4.2節で述べたB1シリーズの試料は(Zn,Cr)Te磁性層の厚さを12nmと固定し、ZnTe:N層の窒素濃 度を01.5×1020cm-3の範囲で変化させたものである。非磁性層ZnTe:Nの窒素濃度[N]によってこのシ リーズの磁化がどのように変化するかをSQUIDにより評価した。まず、このシリーズの磁化の磁場 依存性を図5.14に示す。2KでのM-H測定において、窒素濃度[N]の増加に伴い飽和磁化が減少し、ヒ ステリシスが小さくなることが見えた。しかし、窒素濃度[N]が7×1019cm-3以上では、M-H曲線の変 化は見られなかった。

前述した(Zn,Cr)Te薄膜試料と同様に、3つの特徴的な温度TBTC及びΘPの[N]/[Cr]比に対する依存 性をプロットしたものを図5.15に示す。[N]/[Cr]比の増加に従って、この3つの温度が低くなること が分かった。しかし窒素濃度が最も多い1.5x1020cm-3の試料においても強磁性的な特性は維持される ことが観測された。

B2シリーズ試料の磁化測定の結果

4.1節で述べたZnTe:N試料のXRD測定の結果から、窒素濃度が約1020cm-3を超えると、ZnTe:N層の

格子定数がZnTe層の格子定数より小さくなり、結晶性が悪くなることが分かった。それに、B1シリ ーズのM-H測定の結果で窒素濃度[N]が7×1019cm-3以上になると磁化は大きく変化しなかった。その ため、B2シリーズの超格子試料はZnTe:N層の窒素濃度を約7×1019cm-3と一定にし、(Zn,Cr)Te磁性層 の厚さを123nmの範囲で変化させたものである。このシリーズの試料において、(Zn,Cr)Te磁性層 の厚さを変えると、磁化がどのように変化するかを磁化の磁場依存性を示すことによって紹介する。

図5.16に磁性層の層厚の減少によって、飽和磁化が減少し、さらに層厚が3nmの試料では強磁性が 消失することが見られた。図5.17に示すように、B2シリーズの試料では層厚の減少に伴って、3つ の特徴的な温度TB、TC及びΘPが減少することが分かった。磁性層の層厚が3nmの試料ではTB、TC及 びΘPが2K以下となることが分かった。この試料をBSと標記する。

B3シリーズ試料の磁化測定の結果

B2シリーズの磁化測定の結果から、BS試料では、ZnTe:N層の窒素濃度が7×1019cm-3、(Zn,Cr)Teの

膜厚が3nmという条件で常磁性的な振る舞いが見られる。また、(Zn,Cr)Te層の厚さを3nmに固定し て、非磁性層ZnTe:Nの窒素濃度を減少させた場合、磁性がどのように変化するかということをB3 シリーズの試料において評価した。B3シリーズの試料は(Zn,Cr)Te磁性層の厚さを3nmと固定して、

ZnTe:N層の窒素濃度を7×10190cm-3の範囲で変化させたものである。BS試料はこのシリーズの中に

含まれている。

図5.18に磁化の磁場依存性を示す。非磁性層の窒素濃度[N]の減少に従って、飽和磁化が増加し、

ヒステリシスが大きくなることが見られた。図5.19に示すように、[N]/[Cr]比が0.14のときは3つの 特徴的な温度TB、TC及びΘPは2K以下であったのが、[N]/[Cr]比の減少に従って、これらの温度は上 昇することが分かった。

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 -1.5

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5

Magnetization (

B/Cr)

[N]cm-3

[N]/[Cr]

0 0 2.4E19 0.048 4.5E19 0.114 7.1E19 0.166 9.4E19 0.226

T=2K H plane

Magnetic Field [T]

0.1 0

10 20 30

( K )

TB TC

T

B

, T

C

( K )

Concentration ratio [N]/[Cr]

0 40 80 120 160 200 240 図5.14: B1シリーズ試料のM-H曲線

Θ

P

図5.15: B1シリーズの試料における3つの特徴的な温度 TB、TC及びΘPの[N]/[Cr]比に対する依存性

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 -1.6

-1.2 -0.8 -0.4 0.0 0.4 0.8 1.2 1.6

Magnetization (

B/Cr) T=2K

H plane

Magnetic Field [T]

[N]cm-3 thickness(nm) 7E19 12

7E19 9 8E19 6.7 5E19 2.8

12 10 8 6 4 2

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36

( K )

T

B

, T

C

( K )

thickness (nm)

0 20 40 60 80 100 120

TB TC

図5.16: B2シリーズ試料のM-H曲線

Θ

P

図5.17: B2シリーズの試料における3つの特徴的な温度 TB、TC及びΘPの[N]/[Cr]比に対する依存性

BS試料:

常磁性

-0.8 -0.4 0.0 0.4 0.8 -2.0

-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

Ma gn et iz at io n ( 

B

/C r)

T=2KH plane

[N]cm-3 [N]/[Cr]

5E19 0.1 3E19 0.043 1E19 0.016 3E18 0.005 0 0

Magnetic Field [T]

0.01 0.1

0 4 8 12 16 20 24

( K )

TB TC

T

B

, T

C

( K )

Concentration ratio [N]/[Cr]

0 40 80 120 160 図5.18: B3シリーズ試料のM-H曲線

Θ

P

図5.19: B3シリーズの試料における3つの特徴的な温度 TB、TC及びΘPの[N]/[Cr]比に対する依存性

BS試料:

常磁性

0.01 0.1 0

2 4 6 8 10 12

14 Cr 6~9%

Cr 3%

Cr 1%

T B (K)

Concentration ratio [N]/[Cr] 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0

4 8 12 16

TB:<2K TB:4.5K

TB:5K TB:5K

TB:8.6K 7.6K 6.7K 5K 5K

TB:5K 5K 5K 3.8K <2K

thickness (nm)

Concentration ratio [N]/[Cr]

B1 series B2 series B3 series

5.3 磁化測定の結果のまとめ

(Zn,Cr)Te:N薄膜試料

(Zn,Cr)Te薄膜の試料におけるブロッキング温度TBの組成比に対する依存性をまとめたものを図

5.20(a)に示す。組成比の増加に伴い、ブロッキング温度TBは概ね減少する傾向を示している。Cr組

成に関わらず、組成比が約0.1を超えると、強磁性が消失することが見られる。磁化測定の結果から 窒素とCrの組成比が約0.1程度に達すると、強磁性が抑制されると考えられる。

超格子の試料

超格子試料の構造パラメータとしての(Zn,Cr)Teの層厚及び窒素とCr組成比[N]/[Cr]に対して、各 試料のブロッキング温度TBをまとめたものを概略的に図5.20(b)のように示す。磁性層の層厚が12nm と一定のB1シリーズの試料では組成比の増加に従って、ブロッキング温度TBが減少することが分か った。非磁性層ZnTe:Nの窒素濃度が約7×1019cm-3と一定にしたB2シリーズの試料では磁性層の層厚 の減少によって、ブロッキング温度TBがが減少することが分かった。特に、磁性層の層厚が3nmの BS試料([N]/[Cr]~0.14)では主に常磁性成分が存在する。さらに、磁性層の層厚が3nmと一定にしたB3 シリーズの試料では組成比の減少に従って、ブロッキング温度TBが増加することが分かった。

第6章ではXAFS測定によりCr 3d電子状態、Cr原子周りの局所構造の変化を評価し、磁性の変化 との相関について検討する。第7章では、Cr 3d電子状態の変化により、Crの分布と強磁性の抑制さ れるメカニズムとの関連について考察する。

(a) (Zn,Cr)Te:N試料 (b) 超格子試料

図5.20(a): (Zn,Cr)Te:N試料のTBの組成比に対する依存性

(b): 超格子試料において作製条件のパラメータとTBの組成比[N]/[Cr]に対する依存性。

Bs 試料:

No FM