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第 2 章 伸縮性導体の超伸長化

2.3 伸縮性導体の伸長性におよぼすエラストマー種類の影響

2.3.2 超伸長実験

図 2.3.2(a)は、エラストマー基板上に印刷された配線に対して、伸長前後の体積抵抗率を測定

した結果を示す。ポリクロロプレン導電配線をポリクロロプレン基板上へ(図 2.3.2(b))、ポリ ウレタン導電配線をポリウレタン基板上へ形成し(図2.3.2(c))、伸長実験を行った。、配線の形

状は幅3 mm、長さ20 mm 厚み0.36 mm である。伸長前、導電配線は銀フィラーが56vol%で、

体積の半分近くが不導体エラストマーであるが、フレーク状銀粒子がマトリクス中でパーコレー ションネットワークを形成しているため、ポリウレタン導電配線の抵抗率は2.8×10-4 Ω·cm、ポ リクロロプレン導電配線の抵抗率は2.1×10-5 Ω·cmを示した。ポリクロロプレン伸縮性導体は極 めて優れた抵抗率を示すが、わずか20%ひずみを与えただけで導電配線中にマイクロサイズのク ラックが生じて(図 2.3.2(d)と(e))、体積抵抗率は初期抵抗率の 1000 倍以上に増加した。40%

ひずみでポリクロロプレン導電配線に目視可能な亀裂が生じ(図2.3.2(f))、60%以上のひずみで 配線は破断して(図 2.3.2(g)) 導電性を失った。一方、ポリウレタン導電配線は、ポリクロロプレ ン導電配線に比べて初期状態の抵抗率は若干大きいが、80%ひずみにおいても10-3 Ω·cm台を維 持している。

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図 2.3.2 (a)伸長前後におけるポリクロロプレン導電配線およびポリウレタン導電配線の抵抗

率。 (b)ポリクロロプレン導電配線および(c)ポリウレタン導電配線の外観図。(d)0%ひずみおよび

(e)20%ひずみを負荷したポリクロロプレン導電配線の表面 SEM 観察。(f)40%ひずみおよび

(g)60%以上のひずみを負荷したポリクロロプレン導電配線の表面写真。

ポリウレタン導電配線をさらに延伸し、0%ひずみから100%ひずみごとに配線の抵抗率を測定 した。その結果を図2.3.3(a)に示す。ポリウレタン導電配線は、100%ひずみの伸長ごとに、徐々 に抵抗率を上昇させているが、400%ひずみまで10-1 Ω·cm以下の低い抵抗率を保った。そのため、

一部の配線にポリウレタン導電配線を用いたLEDの点灯実験を行うと、図2.3.3(b)と(c)に示すよ うに、ポリウレタン導電配線は400%ひずみへの伸長前後でLEDを点灯させ続けた。図2.3.3(d)–

(f)の表面SEM観察より、200%ひずみおよび400%ひずみを負荷されたポリウレタン導電配線で

は、銀粒子が離れだしていると考えられる。しかし、伸長中において、配線の厚みや幅は伸長前

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に比べて減少しているため、フレーク状銀粒子のネットワークは維持されている。600%ひずみ時 では20μm以上の大きなクラックが見られ(図2.3.3(g))、配線は2.4 Ω·cmの抵抗率を示して導 通をまだ保っている。600%以上のひずみを与えると、装置の測定限界である1.3 × 10+1 Ω·cm (107 Ω)を超えた。ポリウレタンとフレーク状銀粒子の密着性、および、配線とポリウレタン基板の密 着性が高いため、ポリウレタン導電配線はエラストマーの伸長限界である 800%ひずみまで伸長 することが可能で、基板と配線部の剥離や、配線の断線などは生じなかった。

図2.3.3 (a)100%ひずみごとに測定したポリウレタン導電配線の抵抗率。ポリウレタン導電配

線を用いたLED点灯実験、(b)0%ひずみ時および(c)400%ひずみ時の外観写真。(d)0%ひずみまた は(e)200%ひずみ、(f)400%ひずみ、(g)600%ひずみを負荷したポリウレタン導電配線の表面SEM 観察。

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