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第 2 章 伸縮性導体の超伸長化

2.4 ポリウレタンベースの伸縮性導体を用いたひずみセンサ

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図2.4.1 銀含有量48 vol%および56 vol%、64 vol%のポリウレタン導電配線での伸長実験。(a)

抵抗値測定。(b)応力測定

銀含有量48 vol%および56 vol%、64 vol%のポリウレタン導電配線において、0%ひずみ時の断

面観察を行った。その結果を図2.4.2(a)–(c)に示す。この図よりボイド含有量をカウントした結果、

いずれの配線も、10 μm以上のボイドを4個以下、5 μmから10 μmのボイドを22–28個含くん でいた(図 2.4.2(e))。今回使用した水分散型ポリウレタンはイオン系界面活性剤を含む。その ため、印刷時の起泡や乾燥中の発砲により配線中にボイドが発生したと考えられる。しかし、ペ ーストを泡立てやすいという利点がある。そこで、3 種類の銀含有量の中で、ペーストの粘度が 一番低い、銀含有量 48 vol%のポリウレタン導電配線において、ペーストをあえて泡立てて配線 を作製した(この配線を、泡立てた導電配線と呼称する)。図2.4.2 (d)は、泡立てた導電配線の 断面SEM画像である。この図より、泡立てた導電配線には、10 μm以上のボイドが13個含まれ ており、他の配線と比べると極めてその数が多い(図2.4.2(e))。泡立てた導電配線の抵抗率は、

多くのボイドが電気伝導を妨げているため、通常の方法で作製した銀含有量 48 vol%のポリウレ タン導電配線より大きくなり、3.5 × 10-3 Ω·cmである。しかし、泡立てた導電配線を一軸延伸さ せて電気抵抗値を測定すると、数%ひずみで抵抗値は減少しはじめて、10%ひずみでは初期抵抗 値に比べ抵抗値が約30%減少した。ボイド量を増やした伸縮性導体は、変形時に伸縮性導体中の ボイドが潰れることによって導電性パスが増加し、抵抗値が減少すると考えられる。よって、ペ ーストを泡立てて、ポリウレタン導電配線中のボイド含有量を増加させることで、伸長時に抵抗 値が減少するひずみセンサを作製可能である。

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図2.4.2 (a)–(d)ポリウレタン導電配線の断面SEM観察、順に銀含有量48 vol%、56 vol%、64 vol%、

および、銀含有量48 vol%での泡立て配線、図中の矢印は10 μm以上のボイドの代表例。(e)各配 線中のボイド含有量。(f) 伸長時の抵抗値変化:銀含有量48 vol%のポリウレタン導電配線におい てペーストを泡立てて作製した導電配線および通常作製した導電配線の比較

2.4.2 繰り返し疲労試験

ひずみセンサは、繰り返しひずみを与えても、その特性を維持する必要がある。図 2.4.3 は、

銀含有量48 vol%(泡立てた導電配線)と56 vol%、64 vol%のポリウレタン導電配線へ繰り返し

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5%のひずみを10回与え、変形中の抵抗値を測定した結果を示す。初期抵抗値は銀含有量48 vol%、

56 vol%、64 vol%の順に小さくなり、2.6 Ω、0.13 Ω、0.07 Ωであった。また、すべてのポリウ

レタン導電配線で、繰り返し疲労試験中に初期弾性率が低下するMullins効果[20]が原因で、ヒス テリシスな抵抗値変化や 0%ひずみ時に初期抵抗値に戻らない現象を示した。泡立てた導電配線 に関して、各サイクルの最大と最小の抵抗値は、2 サイクル目から 10 サイクル目までそれぞれ

0.35 Ωと0.26 Ω増加したものの、抵抗値とひずみの間に負の相関は10サイクル間連続して示し

ていることがわかる。6サイクル目を拡大すると(図2.4.3(b))、ひずみが増加すると抵抗値が減 少し、ひずみが減少すると抵抗値が増加するという傾向が確認できる。銀含有量 56 vol%のポリ ウレタン導電配線は、微小変形を与えても、低い抵抗値を維持していることが分かる。各サイク ルの最大と最小の抵抗値は2サイクル目から10サイクル目までいずれも0.09 Ω増加にとどまり、

銀含有量56 vol%のポリウレタン導電配線は試験終了後も0.22 Ωという低い抵抗値を維持してい

た。一方、銀含有量 64 vol%のポリウレタン導電配線において、各サイクルの最大と最小の抵抗 値は、2サイクル目から10サイクル目までそれぞれ0.23 Ωと0.25 Ω増加したものの、ひずみと 抵抗値には強い正の相関を10サイクル間示している。以上のように、ポリウレタン導電配線は、

銀含有量とボイド量を変化させるだけで、伸縮時に低抵抗値を維持する配線、ひずみと抵抗値の 間に正の相関を保持する配線、伸長時に抵抗値が減少する配線になり、繰り返し疲労試験中もそ れらの特性を維持していた。

図2.4.3 銀含有量48 vol%(泡立て配線)と56 vol%、64 vol%のポリウレタン導電配線へ繰り返 し疲労試験

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