第 2 章 表面プラズモン素子の設計および測定原理
3.4 半加算器の作製と実験による特性評価
3.4.2 走査型近接場光学顕微鏡法による特性評価
作製した表面プラズモン半加算器について,近接場光顕微鏡を用いて近接場光強度分布を評価し た。図3.8に,実験系の概略図を示す。また,本実験で使用した測定機器を表3.5にまとめる。
図3.8 実験系の概略図
表3.5 実験系使用機器一覧
作製した半加算器について,図3.8に示した実験系を用いて,以下の手順で実験を行った。
1. 石英基板の裏面に平行ビームを入射(270 Hzの周波数でチョッピング)
2. Au厚膜に形成した透過型の単一スリットを介して表面プラズモンが励起
3. 誘電体導波路へ表面プラズモンが結合
4. 設計・作製した誘電体パターンに沿って表面プラズモンが伝播
機器名称 販売会社 型番
波長可変レーザ(波長1310 nm) 光伸光学工業 LS-201 光ファイバ型無限回転偏波制御回
路
雄島試作研究所 YM-PR-02-1.3-FC 近接場顕微鏡システム 日本分光 NFS-520 近接場プローブ(TFプローブ) 日本分光 ―
光電子増倍管 浜松ホトニクス H10330B-75 ピエゾステージコントローラ ナノコントロール NCM7302C
デジタルロックインアンプ NF回路設計ブロック LI-5640
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5. ギャッププラズモンが励起して導波路に沿って伝播
6. 近接場プローブを作製した導波路(Au薄膜)の表面に沿って走査
7. 近接場プローブを介して誘電体配線からしみ出した表面プラズモンおよびギャッププラズ モンをロックイン検出
8. 検出した近接場光を光電子増倍管で増幅
9. 光電子増倍管の出力情報を近接場光顕微鏡システムで可視化
近接場光顕微鏡による測定から得られた近接場光強度分布を図3.9に,半加算器の電界強度出力 特性を表3.6に示す。表3.6において,各電界強度は最大出力値で規格化されている。入力さらに,
解析結果および実験結果から得られたオンオフ比の一覧表を表3.7に示す。
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(a) 入力”00” (b) 入力”01” (c) 入力”10” (d) 入力”11”
図3.9 実験で得られた近接場光強度分布
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表3.6 規格化電界強度の解析結果と実験結果の比較
論理入力 論理出力 解析結果 実験結果 A B 参照信号 XOR AND XOR AND XOR AND
0 0 0.25 0 0 0.00 0.12 0.02 ±0.02 0.24 ±0.04
0 1 0.25 1 0 0.72 0.13 0.72 ±0.03 0.27 ±0.05
1 0 0.25 1 0 0.71 0.11 0.99 ±0.09 0.16 ±0.05
1 1 0.25 0 1 0.01 1.00 0.09 ±0.02 1.00 ±0.09
表3.7 オンオフ比の最大値と最小値まとめ 論理演算の種類
(最大値または最小値)
解析結果 オンオフ比(dB)
実験結果 オンオフ比(dB)
AND(最大値) 9.65 5.82
AND(最小値) 8.90 5.35
XOR(最大値) 26.19 17.16
XOR(最小値) 21.82 8.97
半加算器全体(最大値) 27.64 17.16 半加算器全体(最小値) 7.43 4.30
図3.9より,多モード干渉計内の干渉パターンが図3.6に示した解析結果とよく一致しているこ とを確認した。また,表3.4,表3.5より,半加算器全体で少なくとも4.3 dBのオンオフ比での演 算動作を実験的に確認した。XORポートからの出力表面プラズモン強度が低く,ANDポートから の出力が高いのは,2段目の 2×2 多モード干渉計へ入力する参照信号の強度が入力 ABの強度に 対して十分小さくない(2分の1程度)ことが原因であり,回折格子による表面プラズモン励起効 率をより正確に制御することで,オンオフ比が改善できると考えられる。
以上より,多モード干渉を用いた表面プラズモン半加算器の実現可能性を実験的に確認した。
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