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財政金融政策

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8−1  財政政策とクラウディング・アウト

1  政策目標と政策手段

  経済政策の目標

①完全雇用、

②物価の安定、

③経済成長、

④分配の公正、

⑤国際収支の均衡。

  この目標を達成するために、政府は、財政政策、金融政策を行う。

  財政政策  政府支出あるいは課税の額をコントロールして、経済

安定 をはかろうとする政策。その手段として次のような

政策がとられる。

    支出面から

      ①財政投融資に関する政策

      ②財・サービスの経常購入に関する政策       ③所得の再分配の目的で行う補助金政策

    財源調達面から       ①租税政策

      ②国債の発行に関する政策 2  財政の自動安定化機能

  政府が積極的に政策手段を講じるまでもなく、財政には景気変動を鎮

静化する機能が備わっているとする。これを財政の自動安定化機能

(ビルトイン・スタビライザー)とよぶ。

例えば、累進的所得税や失業保険。

  それに対して、政府がおこなう財政政策を自由裁量的財政政策という。

  自動安定化機能は、不況、インフレーションを抑制するが、これを改善 する効果は小さいため、自由裁量的財政政策の発動が必要となる。

3  財政政策の効果

  政府が財政政策により、政府 支出を増加させると、IS曲線 を右にシフト(IS0IS1)させ、

あらたなLM曲線との交点で均 衡する。

  政府支出の増加により、その 政府支出乗数倍だけ国民所得を 増加させる(Y0Y1')が、国民 所得の増加は貨幣の取引需要を 増やすことになり、その結果利

子率を引き上げる(i0→i1)。そして、利子率の上昇は、投資の減少をもた らし、国民所得を減少させる。(Y1'→Y1

  結局、政府支出の増加による国民所得の増加は、投資の減少による国 民所得の低下により減殺されることになる。このメカニズムをクラウディ ング・アウトとよぶ。

  減税の場合も、政府支出の増加とおなじプロセスをたどり、国民所得 を増やす。増税の場合は、その逆で、国民所得を減らす。

4  クラウディング・アウト

クラウディング・アウト 財政政策の効果が利子率の変化によって

減殺されてしまうことを意味する。

利子率

国民所得 i

O Y IS IS

1

0

LM

i i

Y Y

1

0 0

1 Y '1

  利子率の変化にたいして投資 がより敏感に反応するほど、す なわち、投資の利子弾力性が大 きいほど(=IS曲線の傾きが 小さいほど)、クラウディング・

アウトは大きい。

貨幣需要の増加がより大きな 利子率の上昇をもたらすほど、

すなわち貨幣の投機的需要の利 子弾力性が小さいほど(=LM

曲線の傾きが大きいほど)、クラウディング・アウトの程度は大きい。

貨幣需要の利子弾力性がゼロという極端な例においては、LM曲線は垂 直となり、財政政策の効果は利子率の変化を生ずるのみで、国民所得には 効果をもたない。マネタリストは、これを1つの根拠に、裁量的財政政策 の無効性を主張している。

5  リカードの等価定理と公債の負担

・  公債の発行方法とクラウディング・アウト

政府の支出の増加には、その財源として増税か公債の発行が行われる。

  ここまでの議論は、税は一 定と仮定してので、暗黙の内 に公債の発行による財源の調 達を想定していた。

財政政策による利子率の上 昇を、金融政策による貨幣供 給量の増加(公債の中央銀行 による引き受け)で打ち消す ことにより、クラウディン グ・アウトは回避できる。

利子率

国民所得 i

O Y IS IS

1

0

LM

i i

Y

1

0

利子率

国民所得 i

Y

O IS IS

1

0

LM

i

Y LM1

0

Y0 1

・  ライフ・サイクル仮説とリカードの等価定理

このように公債発行によりクラウディング・アウトを回避できるとし たが、リカードの等価定理(同値定理)によれば、いずれその公債は増税 による収入で償還されることになるため、合理的で長期的な視野をもつ個 人は、将来の増税を予測して消費を控えるであろうとする。その結果、政 府支出の増加による総需要の増加を減殺されることになる。

8−2  金融政策の手段 

1  金融政策の代表的手段

金融政策とは、マネーサプライの増減によって経済活動に影響を与え ようとする政策。

・  公定歩合政策

中央銀行から市中銀行への貸出金利を操作して、直接ハイパワード・

マネーを増減させる政策。

市中銀行の企業などへの貸し出し金利も連動するため、企業の設備投 資に影響を与える。(コスト効果)

また、公定歩合の変更は、政府の経済政策の方針を表明することであ り、企業の景気見通しに影響し、投資意欲を高めたり抑えたりする。(アナ ウンスメント効果)

・  公開市場政策

中央銀行が公開市場において債券を売買し、ハイパワード・マネーを 増減させると同時に金利水準をコントロールしようとする政策。

売りオペレーションと買いオペレーションがある。

・  法定準備率操作

金融機関が預金の一定割合を中央銀行に預け入れねばならない制度を 預金準備制度とよび、この一定割合が法定準備率(類語として支払準備率、

現金準備率)である。

法定準備率を操作することにより、マネー・サプライに影響すること ができる。

その他、窓口規制により、中央銀行から市中銀行への貸し出しが管理 される。

2  金融政策の効果

金融政策によりマネー・サプライが 増加すると、LM曲線を右にシフト

LM0LM1)させ、その結果、利子率 を引き下げる(i0i1)と同時に国民所 得を増加させる(Y0Y1)。

3  金融政策の有効性

・  流動性のわな

人々がこれ以上利子率は下がらない、

すなわちこれ以上債券価格は上がらない と考える水準に達すると、わずかな金利 の低下により多くの債券が売られる結果、

貨幣需要が大きく増加する。このような 時、LM曲線は水平となり、金融政策は 無効になる。

・  投資の利子弾力性

IS曲線が垂直となるケース(投資 の利子弾力性がゼロ)でも金融政策は 無効になる。

たとえば、将来の景気にたいする企 業の期待がきわめて悲観的だとすると、

利子率

国民所得 i

Y O

IS

LM

i

Y LM1

0

Y0 1

i

0

1

利子率

国民所得 i

Y O

IS LM

i

Y

LM1

0

i

0

1

LM0 LM1 i

O

Y 利子率

国民所得

利子率が低下しても企業の投資意欲には影響しない。

・  ラグと期待の問題

財政政策が直接的に総需要に影響するのにたいして、金融政策は、実際 に効果をもたらすまでに時間の遅れ(ラグ)が存在する。そのため、効果 が発揮するころには経済状態が変わってしまっていて、かえって経済を撹 乱することにもなりかねない。

  この政策の発動から効果があらわれるまでの遅れを外部ラグとよぶ。

いっぽう、政策を実施するまでの遅れを内部ラグといい、財政政策に みられる。

4  ポリシー・ミックス

財政政策と金融政策は、おなじく国民所得に効果をもつものの、その 経路は大きく異なる。たとえば、財政政策によれば国民所得を増やすと同 時に利子率を上昇させて国

民所得の増加を減殺する。

その一方で、金融政策によ れば国民所得を増やすと同 時に利子率を引き下げるこ とになる。そのため、2つ の政策を適切に組み合わせ て実施するポリシー・ミッ クスが必要となる。

利子率

国民所得 i

O Y IS IS

1

0

LM

i i

Y Y

1

0 0

1 Y '1

LM

0

1

8―3  国際経済における財政・金融政策

1 固定相場制下の財政・金融政策とポリシー・ミックス

(資本移動の無い経済)

  IS曲線とLM曲線の交点で決まる均衡国民所得YE が完全雇用国民所 得YFに一致するとは限らない。

  国際収支が貿易収支に限られる経済では、国際収支均衡国民所得をY

とすると、

  Y<Y<Yの場合

  拡張的財政政策(IS曲線の右シ フト)あるいは金融緩和政策は、国 民所得を増加させ、失業を減少、国 際収支を赤字化する。

  緊縮的財政政策あるいは金融引き 締め政策は、国際収支の赤字を縮小、

国民所得を減少、失業を増大させる。

  ゆえに、YFとYBが一致していな い限り、財政政策、金融政策あるい はポリシー・ミックスによって、完

全雇用と国際収支均衡の2つの目標を同時に達成することは不可能である。

(資本移動のある経済)

  国際資本移動は自国利子率iと他国利子率i*との格差に依存して決ま る。そして他国利子率を所与とすると、自国の資本収支は利子率iが高く なるほど黒字が拡大する。

  一方、国民所得が増加するほど輸入が増え、赤字を増やす。

その結果、国際収支均衡線BB線は右上がりの曲線として描かれる。

完全雇用と国際収支均衡が同時に実現するための条件は、

利子率

国民所得 i

Y Y Y YB E F

E E' B

B

LM

IS IS' i

i

E E

*

BB線とY=YF線(垂直線)の交点。

  拡張的財政政策によるIS曲線のシ フトと金融引き締め政策によるLM曲 線の左へのシフトというポリシー・ミ ックスによって実現できる。

  さらに、国際間の資本移動が完全で ある場合、わすがな利子率の上昇で無 限大の資本の流入をもたらすため、BB 線は国内利子率と海外利 子率が等し くなるように水平な直線として描くこ とができる。

2   財政政策・金融政策の効果

ⅰ  固定相場制の場合

国際資本移動が完全な場合(マンデ ル・フレミングモデル)

拡張的財政政策は、IS曲線を右にシ フト、国民所得が増加、利子率が上昇、

海外からの資本流入をもたらす。国際収 支を黒字化。国際収支の黒字化は、マネ ー・サプライを増加させ、LM曲線を右 にシフト、国民所得を増加。失業が減少 する。(有効)

金融緩和政策は、LM曲線を右にシフト、

国民所得を増やし、利子率を低下させる。

資本流出。国際収支を赤字化。

マネー・サプライを減少させてLM曲線 を左にシフトさせ、利子率を引き上げ国民

利子率

国民所得 i

Y Y Y F

E E' B

B

LM

IS IS' i

i

E E

*

LMʼ

利子率

国民所得 i

O Y

LM IS

B B

i *

利子率 i

O Y

LM IS

B B

i*

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