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マクロ経済理論の新展開 9−1  ケインジアンとマネタリスト

ドキュメント内 untitled (ページ 60-74)

・  一般物価水準と市場観について

ケインジアンは市場は基本的には不均衡状態にあり、マネタリスト は、均衡状態にあると考える。

マネタリストは、市場が不均衡にあるときには、物価水準が変化して 不均衡が解消されるとする。

ケインジアンは、物価水準は硬直的であり、変化しても緩やかである とし、もし市場が不均衡であっても、価格による調整が期待できないこと から、不均衡は永続することになると考える。

・  政府の役割について

市場は本来不均衡にあると考えるケインジアンは、市場を均衡させる ためには政府の介入が必要であると説く。

ケインジアンの考える政府の役割は、市場を均衡させるために財政政 策を実施して、有効需要に影響を与えることであり、大きな政府を生ずる ことになる。

一方、マネタリストは、政府の役割は、市場機構が完全に機能するよう に調整役となるにとどまり、治安の維持や公共財の供給など小さな政府で よいとする。

・  IS−LM分析について

貨幣市場の均衡を示すLM曲線の形 状について、マネタリストとケインジ アンとは考えが違う。

  マネタリストは、貨幣数量説からL M曲線は垂直である(LMm)と考える。

  ケンジアンは、流動性選好説により LM曲線は右上がり とする。

利子率 i

Y LMm LMk

O

LM曲線が右上がりであると、財政政策を行うことによりIS曲線はシフ トし、LM曲線との交点は、右上に移動する。そして、利子率を引き上げ ると同時に国民所得を拡大させる。

  垂直のLM曲線にたいしては、財政政策によりIS曲線がシフトしても 利子率を上昇するだけで国民所得を拡大しない。

9−2  合理的期待派

マネタリストの考え方を継承したマクロ経済学の学派。

代表的経済学者に、ロバート・ルーカス、トーマス・サージェント、ロ バート・バローらがいる。

1  経済学で用いられる「期待」について

期待とは、将来のある経済変数の値にたいする、現時点での予想値を 示す。

期待には「静学的期待」「適応的期待」「合理的期待」がある。

静学的期待 現状を参考にして将来を予測すること。

適応的期待 過去の予測にたいする誤差を修正して、今後の予測 を行うこと。

合理的期待 現在利用可能な情報をすべて用いて、将来を予想す ること。

2  合理的期待と金融政策

マネタリストの考え方に合理的期待を導入することで、政府の財政政 策と金融政策の無効性を説く。

国民所得を増加させるための金融政策の含意。

・  ケインジアン

労働者は来期の物価水準は今期の物価水準と同じだと考え、「静学的 期待」を用いる。

金融政策により物価が上昇すると、貨幣賃金が硬直的であるため実質 賃金が低下する。物価動向に詳しい企業は、実質賃金の低下により、雇用 を増やし、国民所得を増やす。

・  マネタリスト

今期の物価水準が前期の予想と異なる場合、適切に修正して来期の予 想を立てる、「適応的期待」を用いる。

賃金が上昇して失業率が低下するが、同時に物価も上昇していて実質 賃金はもとのままであることに気付き、その結果失業率はもとにもどる。

長期的には、物価が上昇するだけで、国民所得や失業率は不変である。

・  合理的期待派

政府がマネー・サプライを増加させると同時に、労働者はインフレー ションを予測して、賃金の引き上げを要求する。

マネタリストの見解同様に、国民所得、失業率は不変で、ただ物価水 準 だけが上がり、金融政策は短期的にも長期的にも無効となる。

9−3  供給重視の経済学(サプライ・サイド経済学)

1  サプライ・サイド経済学の特徴 

需要側面を重視するケインズ派経済学への批判的立場から、1970 年代 後半から供給側面を重視する経済学が登場した。これをサプライ・サイド 経済学と呼ぶ。

サプライ・サイド経済学は、セイの法則を支持する。

セイの法則 供給はそれに等しい需要を作り出す。

ケインジアンは、市場の不均衡は有効需要の不足が原因とするが、サ プライ・サイド経済学は、政府の政策による投資意欲の減退が原因とみな す。

・  企業の投資意欲の強調

企業の投資意欲が経済を本質的に動かしているとの見解を持ち、政府 の行う経済政策(産業にたいする各種規制、企業の租税負担など)が企業 の投資意欲を萎縮させていると考える。

そして、政府は無用な有効需要政策をやめるべきことを主張する。

2  サプライ・サイド経済学の財政政策   ラッファー曲線 税率と税収の関係 を表した図。

税率があるにしたがってしだいに税収 も増加するが、税率があるレベル(t*)

を越えると労働意欲や投資意欲が減退し て、生産が減少し、税収も減少する。

サプライ・サイド経済学は、現行税率

税収

税率(%)

* O

をこのtより高いと考え、政府が減税すれば投資意欲がかきたてられ税収 は増えると説いた。

3  サプライ・サイド経済学の金融政策

マネタリスト同様、金融政策は国民所得を増加させることはできず、

ただ物価を上昇せるだけと考える。

しかしマネタリストはマネー・サプライの増加がインフレを起こすと するのにたいして、サプライ・サイド経済学は、財の供給の増加が需要の 増加に追い付かないからだとする。

・  金融政策の含意。

マネー・サプライの増加により利子率が低下。

利子率の低下により貯蓄が減少。

投資が減少して財の供給が過少となる。

その結果物価が上昇する。

第 10 章  国際経済学 

10 ―1 国際収支

1 国際収支表

国際収支表 一定期間に1国の居住者と外国の居住者との間

で行われた経済取引の記録。

国際収支表の項目

経常収支    貿易・サービス収支    貿易収支

          サービス収支

      所得収支

            経常移転収支

資本収支    投資収支         直接投資

          証券投資           その他の投資

貿易収支 輸出と輸入の差額

サービス収支 運輸・保険などのサービスの輸出入

所得収支 旅行者の国外での消費、投資の利子・配当、特許権 使用料、事務所経費などの受け取りと支払いの差額。

移転収支 対価を伴わない財・サービスの一方的移転の受け取 りと支払いの差額。

投資収支 延べ払い信用、借款、債券、外債の形による証券投 資などの資本取引のうち満期1年を超えるもの。株式投 資・直接投資などの満期の定めのない資本取引。

大蔵省は、1996 年1月から、国際通貨基金(IMF)の指針に沿って、

国際収支統計を上の説明のように改定した。

10 ―2 外国為替市場と為替レート

為替レート 自国通貨と外国通貨との交換比率

1ドル 120 円が 100 円になることは、1ドルを円で評価した価 値(円建レート)が下がることで、円高・円の増価・円の切り上 げを意味する。

外国為替市場 自国通貨と外国通貨を交換する市場

1 為替レートの決定と変動

為替レートは、外国為替市場における需要と供給の均衡点に決まる。

需要 財・サービスの輸入や短期・長期資本の海外流出。

供給 財・サービスの輸出や短期・長期資本の海外からの流入。

為替レートが下がると、財・サービスの円建て表示による輸入額が低 下して輸入数量も増加。外貨需要が増加する。

財・サービスの輸出は、外貨建て表示による輸出額が上昇して輸出数 量が減少。外貨供給が減少する。

自国通貨による価格の低下(上昇)にたいする輸入数量の増加(減少) の比率を、輸入需要の価格弾力性という。

外貨供給曲線は、外国における輸入需要の 価格弾力性により、その形状が決まる。

1より大きいとき 右上がりの曲線

1より小さいとき 右下がりの曲線

1のとき 垂直線

外貨需給が財・サービスのみの場合の外国 為替市場の安定条件

輸入需要の価格弾力性ηと輸出需要の価格 弾力性η*の和が1より大。 (マーシャル

=ラーナー条件)

為替レート

外貨需要

η + η* > 1

  すなわち、国際収支の価格弾力性がプラスであるということである。

この場合、円高ならば国際収支の黒字を縮小。円安ならば赤字を縮小す る。

2 資本取引と為替レート

・ アセット・アプローチ

今日では、為替の自由化や金融の自由化により、国際的な資金移動の 役割が大きくなっており、短期間でみると、外貨需給の多くが資産選択に 基づく国際資本取引から生じている。

為替レートの短期的な決定プロセスを、自国通貨保有による利益と外 貨通貨保有による利益の差により説明するのがアセット・アプローチであ る。

長期的には、購買力平価説が成立するが、短期的には外国資産に対す る需給の変化が為替レートの変動を説明する。

為替レートの決定

ドルで保有する場合の予想利益率が円で保有する場合の利益率と等し くなるように為替レートが決まる。

その結果、市場均衡の条件式は

円資産の利益率=ドル資産の予想利益率

      ea−e       i=i*+ ――――

      e

:国内金利 *:国外金利

:現行為替レート

a:期待為替レート

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