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動学的総需要曲線・総供給曲線  6−1  フィリップス曲線

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第6章  動学的総需要曲線・総供給曲線 

企業は入手したいだけの労働力を雇 用し、勤労者もその実質賃金率で供給 したいだけ労働を提供するとき、労働 市場は完全雇用が成立しているといわ れる。

この、完全雇用の下でも摩擦的失業 と自発的失業が存在する。

摩擦的失業  仕事をやめてから 次の仕事につくまでの失業。

自発的失業  現在の賃金率では働く意思のない、自発的な失業。

・  自然失業率仮説

政府がケインズ的な経済政策をとり、失業率を引き下げようとする場合 のマネタリスト的含意。

当初自然失業率にあるとして、景気刺激策をとると、賃金率が上昇し労 働者は一層働くようになり、失業率は低下。そして短期フィリップス曲線 に沿って移動し、物価が上昇する。

いずれ労働者は、賃金の上昇はすべて物価上昇で打ち消されていること に気が付き、熱心に働くことを止める。そして失業率はふたたび高まり当 初の自然失業率U*に戻る。

長期的には、このような政策は、失業率は自然失業率に膠着し、ただ物 価が上昇することになる。

長期フィリップス曲線は、自然失業率で垂直な直線として引くことがで きる。

・スタグフレーション

物価上昇率が著しいと人々の労働意欲が減退、完全雇用水準が低下して 自然失業率が高まる。その結果フィリップス曲線が右にシフトして物価上 昇と高失業率が同居することになる。

物価上昇率

失業率 長期フィリップス曲線

短期フィリップス曲線 π

π π

e e

1 2

O

U U

U1 *

6―3  動学的総供給曲線(インフレ総供給曲線)

  総供給量と物価上昇率の相関について有効な分析道具を持ち合わせなか ったケインジアンは、マネタリストのフィリップス曲線を借用して、動学 的総供給曲線とした。

時間のタームを加えて、時間の経過に 伴う物価水準の変化量について検討する。

動学的総供給曲線は、総供給量と物価 上昇率の関係を示す。

      π=πe+α(Y−YF

・  動学的総供給曲線の導出

生産水準が完全雇用水準を超える時、

賃金は上昇し物価を引き上げる。

生産水準が完全雇用水準を下回る時、賃金は下降し物価を引き下げる。

生産量の完全雇用を保証する水準との格差に比例して物価上昇率が上昇 する右上がりの曲線として描かれる。

・  動学的総供給曲線と予想物価上昇率

動学的総供給曲線は、物価に対する賃金の変化の影響を重視するが、次 期の物価が上昇すると予想する(期待物価上昇率)ならば、それに応じた 賃金の引き上げを要求することになり、その分だけ物価を引き上げる。そ して、動学的総供給曲線を上方にシフトさせる。

動学的総供給曲線は、座標(完全雇用産出量YF、期待[予想]物価上昇 率πe)を通る右上がりの曲線である。

物価上昇率 π

πe

O 産出量Y

YF

S S'

6―4  動学的総需要曲線(インフレ総需要曲線)

物価水準の変化による総需要曲線のシフトの経路を示す。

総需要曲線は、IS曲線とLM曲線の交点で示され、物価の変化によっ て実質貨幣供給量が変化して、LM曲線をシフトさせ、このLM曲線と変 化のないIS曲線との交点が移動する。この移動の軌跡をたどるのが、動 学的総需要曲線である。

・  動学的総需要曲線の導出

総需要曲線の動学分析では、総需要曲線のシフト条件を検討する。

総需要曲線(国民所得)は、実質貨幣供給量や政府支出が増加すること により、右側にシフトする。

      ΔY=β(m−π)+γg

        ΔY:総需要の増分

    ΔY=Y−Y-1と置き換えると動学的総需要関数は、

    Y=Y-1+β(m−π)+γg

       :名目貨幣供給量の増加率、

      π:物価上昇率

       :政府支出の増加率       β:信用乗数(定数)       γ:政府支出乗数(定数)

動学的総需要曲線は、座標(前期の 国民所得Y-1、名目貨幣供給量m)を 通る右下がりの曲線。

・  動学的総需要曲線のシフト

  (1) 名目貨幣供給量を引き上げると曲線を上にシフトさせる。

物価上昇率 π

m

Y-1

O 産出量Y

  (3) 前期の国民所得Y-1の変化によりシフトする。

      Y-1が大きくなると曲線は右にシフトする。

6−5  所得水準と物価上昇率の決定

・ 短期均衡

貨幣供給量の増加率mにたいする動 学的総需要曲線と、期待(予想)物価 上昇率πにたいする動学的総供給曲 線の交点で、国民所得水準と物価上昇 率の短期的な同時均衡点。

この均衡は、いまだ失業が存在する 過少雇用均衡を意味する。

・  長期均衡

長期均衡の調整過程。

前提条件

貨幣供給量はmで不変。

予想物価上昇率は1期前の現実

の物価上昇率。

完全雇用国民所得はYF

短期均衡に続く第1期では、第0 期で成立した物価上昇率π0 が予想 物価上昇率πe0 となり、これに対応 する形で動学的総供給曲線がシフト、

需要曲線との交点に均衡点は移動す る。

この新しい均衡産出量と貨幣供給

量増加率に対応するように動学的総 需要曲線はシフト。また供給曲線も この均衡点が示す物価上昇率に調整される。

そして、この需要曲線と供給曲線の交点があたらしい均衡点となる。

物価上昇率 π

産出量 Y π

π

Y0 Y

0 e0

F

S

D 短期均衡

物価上昇率 π

産出量 Y Y

F

S

D

m 長期均衡

その結果、最終的に完全雇用産出量、貨幣供給量増加率で、動学的総需 要曲線と動学的総供給曲線は交差し、この点が長期均衡点となる。

長期均衡点の性格

① 物価上昇率は貨幣供給量に等しい。

② 国民所得は完全雇用を達成する水準となる。

③ 現実の物価上昇率と予想物価上昇率が等しい。

第7章  経済成長理論 7−1  ハロッド・ドーマー型経済成長理論

  ケインジアンのIS−LM分析による均衡国民所得が、時間とともにど のように変化するのかを考えるのが、ハロッド・ドーマーの経済成長理論 である。

・  投資の二重性

  投資は、一面では総需要の構成要素であるとともに、他面、投資は資本 の増加を意味することから、総供給の増加を実現することになる。

  この投資の2面性を、前者を需要創出効果、後者を産出効果と呼ぶ。

  需要創出効果

  財市場が均衡している時、貯蓄Sは投資Iと等しくなることから。

I=sY ただし、s:貯蓄率(限界貯蓄性向)

  産出効果

  国民所得Yの生産に要する資本の比率 v を資本係数と呼び、投資と 資本の関係は次のように表される。

I=vΔY

均衡条件 上の2式から、

ΔY   s ――― = ― Y   v

ΔY/Yは経済成長率を示し、需給均衡を実現する経済成長率は保証成

長率と呼び GWと記す。

貯蓄率s

Gw  = ――――――

資本係数v

この経済成長率を

完全雇用を実現する経済成長率は、すくなくとも人口増加率と技術の進 歩による労働生産性の上昇率をあわせた値に等しい必要がある。

  この人口増加率n+労働生産性上昇率λを自然成長率GNと呼ぶ。

        G  =  n + λ

  この保証経済成長率、自然経済成長率と実際の経済成長率(GRとする)

が等しいとき、需給が均衡する同時に完全雇用を実現する。

・  不安定性定理(ナイフ・エッジ定理)

ハロッドとドーマー・モデルでは、このような保証成長率と自然成長率 が等しくなるのはあくまで偶然の産物で、いったん乖離したならばしだい に均衡点から離れてしまうことになるとする。

現実の経済成長率GRが保証成長率GWを上回ると、svsvより大 きく、ゆえにvの方がvより大きいということを意味する。

需給均衡を実現しようとして現実の資本係数 vを需給均衡する資本係 数vに近づけようとして上昇すると、その結果経済成長率はいっそう上昇 し、両者の乖離を拡大する。

GNGRより上回る場合、労働供給が労働需要を上回るから、完全雇用 を実現するために現実の成長率を高めようとしても、失業が増加してしま う。

7−2  新古典派の経済成長理論

・  新古典派の経済成長理論

生産関数 YFKL)のもとで生産がおこなわれると、労働1単位当 たりの生産量(y)は、労働1単位当たり資本量(k)の関数となる。

y=f(k)

コブ・ダグラス型生産関数を前提とすると、k の増加にたいする増加関 数であり、しかもその増加率は逓減する。

コブ・ダグラス型生産関数

YaKαL1−α

縦軸に生産量 f(k)、横軸に労働1単位当たり資本量 k をとると、右のよ うな曲線となる。

この曲線上の点と原点を結ぶ直線の傾きは、

f(k1) Y1/L11 1

――― = ――――― = ―― = ――

k11/L11 v1

すなわち、資本係数v1の逆数となる。

なお、 f(k1) は生産関数で後掲の Y1  と同じと考えてよい。

・  均衡資本労働比率

この生産性曲線上の点で、財市場の均衡が維持される点の横軸座標が均 衡資本労働比率を示す。

財市場での均衡条件が満たされるときは、投資と貯蓄が等しくなること から、

k=sfk

:労働力の成長率(人口増加率)

k期における1人当たり資本量

:貯蓄率

左辺のnkは完全雇用を維持するために必要な投資額で、 ・・需要側 右辺のsf(k)は貯蓄額を表す。この式を整理すると、 ・・供給側

fk) 1

―― = ――――― = ――

k v

となり、均衡条件を示している。

・  定常成長経路の安定性

均衡資本労働比率をk*とすると、現実のk1k* を下回る場合、

n f(k1)

―― < ――― 、すなわちnk1<sf(k1)となり、貯蓄が投資を上回

s k1

ることになる。その結果、投資が増加して均衡点k*に向かう。

逆にk2k*の時には、投資が貯蓄を上回るが、資金不足から投資は減少 し均衡点k*に向かう。

f(k)

O k

傾き

傾き

k(   )  k1

1

ns

f(k) f(k)

f(k ) f(k ) f(k )

*

1

1 *

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