• 検索結果がありません。

5. 今後の課題と提言:3 年間の試行をふり返って

5.6 今後の展望:総括

5.6.2 課題と提言

本章「今後の課題と提言:3 年間の試行をふり返って」では、体験奨励制度 の過去 3 年間の試行を鑑み、諸種観点からこれまでの課題をとりあげつつ、

こらからの方向性について検討してきた。本項ではそれらの見解を総合的に ふまえ、体験奨励制度の今後の在り方について、その制度自体の存続という 根本的な問いも含め下記いくつかの視点から提言するものである。

1) 体験奨励制度自体の継続について

当該制度は、我が国の未来を担う青少年の健全な成長には豊かな原体験が 基盤となるべきであるという理解のものと取り組まれている、国の繁栄にも 関わる社会意義の高いものである。したがって、表題の問いについて回答は、

「今後も是非継続していくべきである」ということが強く言えるであろう。

前述したように、そもそもこの制度の発端は、平成 25(2013)年 1 月に提出 された中央教育審議会の答申「今後の青少年の体験活動の推進について」を 受けた、文部科学省による「体験活動推進プロジェクト」等の事業の一環とし て、体験活動の評価・顕彰制度の構築にむけた試行である。

その答申では、①体験活動の機会の創出、②社会経済の変化と「社会を生き 抜く力」、③体験活動を推進する社会的な仕組みの構築の 3 点が、青少年の体 験活動に着目する理由として挙げられている(当該答申については、詳しく は当報告書「2.1 青少年の体験活動における現状と課題: 『答申』から考える」

にて参照されたい)。その 3 観点は互いに関連し連鎖するものであり、別の見

方をすれば、それらの点が現代社会、そしてそこに生きる青少年教育に欠落

し、そのため彼らの健全な成長への影響の危惧とも捉えられる。すなわち、青

少年をとりまく環境の大きな変化により、心身たくましく人生を生き抜いて く力が失われている現代社会において―②、そのような「生きる力」を体得し 社会をより良く生きていくための学びと成長の源泉となる体験活動の機会を 増やすことが求められ―①、そしてその多様な場を提供可能にするシステム を作り運用していくことの重要性―③が提唱されているのである。当該体験 奨励制度は、まさに上の①及び②を支え、拡大促進していくための③につい ての試行となる。このような国の取り組むべき指針、そしてその応対しその 実践となっている当該制度は、社会的にも重要な取組であり、今後も継続す ることでより質の高い制度構築への努力と実現が求められるのである。

以下に続く項目ごとの見解は、今後より質の高い充実した青少年育成に通 じる体験奨励制度を構築し、またそれがより普及していくためにはどうすべ きかについて、これまでの試行とそこから浮かび上がってきた課題をふまえ た上での提案である。

2) 体験奨励制度の内容 (1) 対象者について

これまでの 3 年間の試行においては、国際アワードの制度に倣って実施し てきたため、体験活動参加者は 14 歳~25 歳(主として、高校生・大学生)の 青少年を中心に取り組まれてきた。しかし 3 年目にはそれに加え、ジュニア 版として小中学生(小学生 4 年生以上)を対象とした体験活動を実施した。

このジュニア版の試行については、別項にて報告がされているが、それまで の国際アワード制度の方法をこれまでの経緯から多少参考にしたものの、そ れに縛られることはなく試行してみたものである。参加者エントリーからア ドバイザーの関わりも含めた修了までの一連の実施プロセス、また体験活動 の種類や内容について、より日本の社会や文化背景に配慮して設計し進めら れた。その結果明確になったのは、体験活動開始から終わりまでとても効率 的かつ効果的に円滑に運営できたということであった。

これらの取組をふまえ、また前項で触れた答申が出された我が国の青少年 体験活動の実情と必要性の背景を勘案すると、国際アワード制度での中心対 象者となる高校生・大学生の年代層では十分ではないことでこと言えよう。

むしろ、 3 年目で試行したように小学生からの開始を基盤として、中学~高校

~大学(大学院)と各年代の積み上げ式の一連プロセスで考えていくことが

望ましいと考える。また、そのように小学生というより早い時期から体験活

動を意識し取り組むことは、中学生になってから始めるのに比較して、当然

より多く(量)の多様(質)な体験を重ねることにもなる。質量ともに豊かな

体験をしている青少年ほどその心身へのより良い成長、そしてその後の人生

に好影響を及ぼしていく傾向にあることが調査によって分かっている(詳し

くは、当報告書「2.2 青少年の体験活動に関する調査研究:実態調査も交え て」を参照のこと。また、国立青少年教育振興機構でも、体験活動における教 育効果について定期的に調査し発表をしている)。その効果を考えれば、小学 生のできるだけ早い時期から意識的な体験活動に取り組むに超したことはな く、そうすることが望まれるのである。

加えて言えば、その小学生(4 年生)~大学生(及び大学院生)の一連の体 験プロセス仕組みが確立し安定した運用が見えてきたところで、現行の小学 校 4 年生以上の対象者をより下位学年からのスタートとすることも考えられ る。さらに、その小学生~大学生までを軸とし、その前後となる下は幼稚生や 上は就職後の社会人へと年齢層を広げていくことも期待できるであろう。

(2) 「英国エディンバラ公国際アワード」の観点:今後も “義務” として導入 すべきか

これまでの 3 年間の試行は、国際アワード制度を参考にし、またその取組 実践も国際アワードの内容(参加年齢・活動区分・期間・レベル制、等)を核 に進められてきた。それゆえ、国際アワードに設定される(ブロンズ)レベル の取得が義務化されていた。また、活動参加者を支えるボランティアのアド バイザー及びその養成講習会もその制度に準じてきたというのが現状であっ た。今後において我が国独自の体験活動奨励の仕組みを構築しそれに基づき 推進していくということを前提とした場合、 3 年間の試行をふりかえって、日 本の社会・文化様式をふまえて表題の問いを考えると、これまでと同様にそ の制度を中核に据えて、つまりレベル取得を義務化して進めていくのは得策 ではないというべきであろう。

これは国際アワードを完全に切り離すということを指摘するものではなく、

連携の在り方を変えるということである。今後のその連携の在り方における 一案としては、体験活動奨励制度への参加者に、国際アワードというインタ ーナショナルな体験活動の認定プログラムがありブロンズレベルの認定も可 能なことを紹介し、関心のある人達にエントリーや手続き等について、国際 アワード事務局につなぐというサポートを適宜していくというものである。

すなわち、これまで義務化されていた国際アワードのレベル取得は個々の選 択制になる。この点については、前出の韓国における事例に見られる連携ア プローチと類似したものとなるであろう。

これまでと同様に国際アワードのレベル取得を必須化する形で進めると仮

定した場合は、体験奨励制度と国際アワードの二種のレベル認定というダブ

ルスタンダードで進行していくことになり、これは参加者側もそれを支える

アドバイザーや事務局再度の作業が複雑になることを意味している。そして

このような煩雑化が体験活動の普及・拡大の低下を招くことが想定されるの

である。また先述したように、我が国の体験活動制度を小学生からのエント リーを入り口とし、続く中学・高校・大学時代(及び社会人)までの一連のプ ロセスとしてその仕組みを考えた場合には、およそ高校・大学時代が中心と なる国際アワード制度とはエントリー上のズレが見られ、この点からも国際 アワードの導入は義務ではなく選択とすることの妥当性が指摘できるのであ る。

このような点の国際アワードとの連携についての今後の考え方は、上掲の 別項「『英国エディンバラ公国際アワード』との連携」(5.5.2 課題/5.5.3 提 言)において検討しているため、そちらも参照いただきたい。

(3) 体験活動の領域と期間、レベル制度、等

体験活動の領域については、これまでは国際アワードの内容に重ねてきた ため、 「運動体験」 「教養体験」 「奉仕体験」 「自然体験」の 4 区分について、毎 週約 1 時間以上の活動を 3 ヶ月間、そして「運動体験」「教養体験」「奉仕体 験」の内の一つの活動は 3 ヶ月を超えて 6 ヶ月間(半年間)継続することで 修了証、同時に国際アワードの「ブロンズ」レベルが取得できるものであった

(「自然体験」については、「1 泊 2 日の宿泊活動/達成のために費やした時間 が合計で 12 時間以上、1 日あたり最低 6 時間以上であること」が条件)。

一方で、3 年目に試行された小・中学生を対象にしたジュニア版では、「ボ ランティア体験(必須)」 「自然体験(必須)」 「学習体験または運動体験」の 3 領域であった。そしてジュニア版の場合、実施頻度・期間については小学生の 場合は 8 週間(2 ヶ月間)の継続が条件となっていた。より具体的には、ボラ ンティア体験が「週 1 日 1 時間または隔週で 2 時間程度/8 週で 8 時間程度」、

自然体験が「3 時間程度の体験を 2 回または 6 時間の体験 1 回/※家族旅行、

修学旅行は除く」、学習体験または運動体験は「週1日 30 分、または隔週で 1 時間程度/8 週で 4 時間程度」という基準であった。また中学生の場合は 10 週 間(2 ヶ月半)の継続を基準とし、ボランティア体験が「週1日1時間または 隔週で 1 時間程度/10 週で 10 時間程度」、自然体験が「4 時間程度の体験を 2 回または 7 時間の体験1回/※家族旅行、修学旅行は除く」、学習体験または 運動体験は「週1日 30 分、または隔週で 1 時間程度/8 週で 5 時間程度」とな り、小学生版よりも約半月ほど体験量が増える条件となっている。

今後、小学校からの体験活動奨励を始めるということになった場合は、当

然この試行された内容条件を基準としつつ、経年を重ねる中で少しずつ改善

していくことが妥当と思われる。また、高校生・大学生(及び大学院生)のレ

ベルについても、現段階において具体的な数字をここで示すことはできない

が、小中学生版を元にし、参加者の成長段階に応じて質と量をより増やし充

実させていくことで内容基準の設定がなされるのが妥当であろう。