5. 今後の課題と提言:3 年間の試行をふり返って
5.6 今後の展望:総括
5.6.1 これまでの取組概要
青少年体験活動奨励制度(以下、体験奨励制度)の試行は、文部科学大臣か らの諮問に対する中央教育審議会からの答申「今後の青少年の体験活動の推 進について
*」 (平成 25/2013 年 1 月)を受け、その具体的施策として、文部科 学省による「体験活動推進プロジェクト」等の事業を通して体験活動を推進 してくという取組に由来している。当該制度は、その事業の一つである「体験 活動を積極的に行って様々な力を身につけた青少年が社会で評価されるしく み」という体験活動の評価・顕彰制度の試行を通した調査研究について、文部 科学省からの委託事業として(一社)教育支援人材認証協会(以下、教育支援 協会)が受け、平成 25(2013)年度より開始された。
当該制度は、青少年が「運動体験」 「教養体験」 「奉仕(ボランティア)体験」
「自然体験」の 4 領域全てに一定期間継続的に取組、その内容条件を修了し た活動者が文部科学省から表彰される仕組みである。その 3 年間の試行では、
「英国エディンバラ公国際アワード」 (以下、国際アワード)制度が参考にさ れ進められてきた。
その国際アワードは、体験活動を通じた青少年育成を促進するプログラム で、1956 年から始まり 2016 年で 60 年目を迎える。世界 140 カ国以上で実施 されている国際的な体験活動制度の一つである。 14 歳~24 歳の青少年を対象 とし、 「サービス」 「スキル」 「フィジカル・レクリエーション」 「アドベンチャ ラス・ジャーニー」の 4 領域の体験活動全てについて、条件となっている期 間を継続的にやり遂げることで、実施した内容に応じて国際アワードで設定 された 3 ランクの認定がなされる(下位レベルより、ブロンズ・シルバー・
ゴールド)。活動参加者の体験活動の実施は、講習会を受講し認証制となる「ア ドバイザー」 (活動者の助言やサポートをする)や、各領域の活動において参 加者の活動を確認・指導する大人の「コーチ」というボランティアの協力のも と進められる。
今回の体験奨励制度の試行では、前記の活動 4 区分や活動参加者をサポー トするアドバイザー・コーチ制などの基本的枠組みをはじめ、活動期間や時 間などの内容や修了条件なども国際アワード制度の基準に重ねて実施されて きたものである。それゆえ、当該制度を修了することで、国際アワードレベル における最も基礎ランクとなる「ブロンズ」も修了したことの認定もなされ る仕組みとなっている(国際アワード制度自体や、当該体験奨励制度との関
*
文部科学省ホームページ(平成 28 年 3 月 14 日参照):
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1330230.htm
係性についてのより詳細は、その各ホームページや過去の報告書を参照され たい
**)。
そのような体制を基盤とし、過去 3 年間の試行においてはおおよそ以下の 概要において進行されてきた。
【1 年目】体験奨励制度の委員会委員やそこに深い関わりをもつ関係者を対 象者としてアドバイザー養成講習会が実施された。そして、そのア ドバイザーが関わりをもつ周囲の大学生等が主な活動参加者とな って試行された。 50 人以上の修了者数が目標として設定され、最 終的には 71 名の修了者となった。
【2 年目】初年度の大学生を対象とした参加者に、いくつかの中学・高校との 協力・連携のもと、主として高校生もが加わって活動参加者の幅を 拡げた。また、それにともない活動者を支えるアドバイザー数の増 加にも努めた。 100 人以上の修了者数が目標として設定され、最終 的には 149 名の修了者となった。
【3 年目】国際アワードを軸とした体験奨励制度の取組に加え、それとは別に 小学 4 年生以上を対象とした小中学生を対象とした「ジュニア版」
の試行が実施された。その試みにともない、全国の小中学校(9 校)
と地域の青少年教育の NPO 団体(1 組織)の協力・連携のもと進め られた。国際アワード制度を重ねた通常版(14~25 歳対象)では 300 人以上の修了者数が目標とされ、最終的には 366 名程度の修了 者となった。また、「ジュニア版」では 85 名(小学生 55/中学生 30)の修了者であった。
さらに 3 年目では、上記の「ジュニア版」に加えて「+BIZ(ビジ ネス)」体験が試行された。前述の国際アワード制度にビジネス体 験の要素を加えた活動である(「ジュニア版」及び「+BIZ」の詳細 については、当報告書の別項において掲載されているため、そちら を参照のこと)。
以上のように、 3 年間の試行において年々その修了者数を伸ばし、制度の拡 充に努めてきた。参加者、修了者、アドバイザーにおける人数の推移について は、続く下掲項目で示すものである。
**
青少年体験活動奨励制度ホームページ(平成 28 年 3 月 14 日参照):
http://www.japan-youth-award.net/index.html
英国エディンバラ公国際アワードホームページ(平成 28 年 3 月 14 日参照):
http://www.intaward.jp/
なお、当該体験奨励制度の全体像は、下図のようになる。
2) 参加者数・修了者数・アドバイザー数の動向
初年度から 3 年目までの試行において、年々、当該体験制度への参加者数 及びその修了者数の拡大に努めてきた。また、その活動参加者増の目標の遂 行に伴い、その活動を支援するアドバイザー数の増加も促進するため、その 認証のための養成講座を定期的に開催してきた。その動向は以下の通りであ る。
① 参加者数(エントリー数)と修了者の動向
年度 目標修了者数 参加者数 修了者数
1 年目[平成 25/2013 年度] 50 名以上 141 名 71 名
2 年目[平成 26/2014 年度] 100 名以上 235 名 149 名
3 年目[平成 27/2015 年度] 300 名以上 465 名 366 名
② アドバイザー数の動向(含、当該養成講座数)
年度 養成講座数 認証者数
1 年目[平成 25/2013 年度] 4 回
体験奨励制度アドバイザー養成 2 回
48 名
国際アワード版アドバイザー養成 2 回
2 年目[平成 26/2014 年度] 9 回
体験奨励制度アドバイザー養成 4 回
92 名
国際アワード版アドバイザー養成 5 回
3 年目[平成 27/2015 年度] 4 回 体験奨励制度アドバイザー養成 4 回
* 55 名
国際アワード版アドバイザー養成
*同日進行で合併しての回数 3) 諸外国における先行事例
日本における体験活動制度を検討するにあたり、初年度において外国での 先行事例を視察し関係者にヒアリング調査を実施した。一つは、当該体験制 度が参考とする国際アワードプログラムの誕生国である英国である。もう一 つは、主に奉仕活動についての体験活動を国策として奨励している韓国につ いて視察、検討した。どちらも、初年度(平成 25/2013 年度)の報告書に詳し いが、ここではそのヒアリング調査によって明確になった要点について整理 し、以下に提示するものである。
(1) 英国について[調査期間:2014 年 3 月 14 日〜20 日]
英国エディンバラ公国際アワードの認知度は若者・保護者、教員・社会教 育従事者の間で高い傾向があり、社会的承認が得られている。
学校や社会教育施設(ユースセンター)等の教育機関が窓口となり、国際 アワード担当の教員や社会教育専門職者(ユースワーカー)が存在し、若 者の参加を奨励し、活動を支援している。
支援者の役割は指導者という位置づけではなく、「教えるのではなく問い かけるという姿勢」、また「やらせるのではなく誘(いざな)う姿勢」と いったインフォーマル教育者としての力量が求められる。
教養体験(スキル)や運動体験(フィジカル・レクリエーション)は、私 的な習い事を活動の場として活用しているケースがある。
ボランティア体験は、若者が地域住民の手助けとなる活動を行う場合(例 えば犬の散歩、等)、地域住民との間に保険契約を結ぶ必要がある。しか し、保険料は高額なため障壁となり、そのようなボランティアの実現は難 しい。結局、校庭での園芸や清掃活動等、若者の興味に合わない内容にな ってしまう傾向がある。
自然体験は、地図を頼りに一日何キロも歩く、オリエンテーリングが定番
であった。国際アワード担当者は、若者のオリエンテーリングに同行はし
ないが、予め若者と相談して決めておいた各ポイントで時間を見計らって
待ち、若者の安否確認をする役目を担っていた。また、オリエンテーリン
グ開始前には、若者を対象に地図の読み方をはじめ、野外活動のスキルの
研修を実施している。したがって、知識や技術の事前研修を提供できる大
人側の人材が必要となる。
教養(スキル) ・運動(フィジカル・レクリエ―ション) ・自然体験(アド ベンチャラス・ジャーニー)は、活動するために経費がかかる。それゆえ、
貧困家庭の若者への支援対策として、奨励金の補助制度や、そういった若 者を対象とした英国エディンバラ公国際アワードに代わる他の体験活動 奨励制度などが存在していた。
(2) 韓国について[調査期間:2014 年 3 月 3 日〜6 日]
【韓国の社会奉仕事情】
[奉仕活動の設定]1996 年に、小学生から大学生まで、「社会奉仕活動」
をナショナル・カリキュラムで必修化した。キーになる考え方は「自願奉 仕」で、「一定の計画のもと、強制されない状況下、自分の意思を則り、
無報酬で他人や地域社会に寄与する持続的な福祉活動」である。教科中心 主義の教育への反省からといわれている。
[奉仕活動の基準]活動には、学年による、時間数の規定がみられる。小 学 1〜3 年=年間 5 時間、4〜6 年=10 時間、中学生=15 時間、高校生=
20 時間、大学=1 単位という基準が設定されている(以上は最低基準。規 定以上の行動が望まれている)。
[奉仕の内容]具体例としては、「福祉施設などでの手伝い」、「施設など での慰問活動」、 「交通安全などへのキャンペーン参加」、 「献血運動など」、
「自然保護活動」、 「下級生の世話」、 「地域のイベントへの参加など」、 「登 山」、 「キャンプなど」が挙げられる。活動ごとにポイントが決まっている。
[奉仕活動の仕組み]各主催者団体は認証協会に計画を提出し、認可を得 る。生徒や学生は、 「学校が推奨するプログラムへの参加」と、 「自分で参 加するプログラムを探しそこで認証を得て、学校に報告する形」との 2 類 型がある。 「1365
*」は文部省関係のプログラムを収録している WEB サイト で、多くの生徒はこのサイトを利用している。そして、このサイトには、
公共団体だけでなく、各企業も積極的にボランティア活動を受け入れる体 制を整え条件を提示し、「1365」サイト
*に掲載している。
[奉仕活動の時間・形態]奉仕活動には、 「(学校内の)定期型」 「宿泊型」
「移動型」があるが、「無学期制」(Free Semester Program)を採用する ので、認可されたプログラムへの参加なら学校を休んでよい。なお、定期 型の場合、 「7 時間授業なら 1 時間」、 「6 時間授業は 2 時間」、 「4 時間授業 は 4 時間」、「休日は 8 時間」という基準設定がある。
[奉仕活動のポイント・アップ]トップランクの高校や大学への進学する 際には、奉仕活動の質の充実と同時に、ポイント・アップが望ましいとさ
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