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認知症の人に対する地域住民と介護職員の態度調査

本章では、前章で開発した態度尺度と知識尺度を用いて地域住民と介護職員を対象に、

認知症の人に対する態度の実態を把握し、その関連要因を明らかにする。第1節では、地域 住民における認知症の人に対する態度を把握し、その関連要因を検討するとともに、今後、

認知症に関する啓発活動のあり方を提示する。第2節は、質の高いケアを行うための条件を 検討するため、介護職員を対象に、認知症の人に対する態度および介護の仕事に対する心 境に関連する要因を分析する。第3節は、認知症の人に対する態度において、地域住民と介 護職員の両群の相違点および共通点を明らかにする。

第1節 認知症の人に対する地域住民の態度調査 1. 調査対象者および方法

調査はS市M区の地域住民を対象とした。調査地域の大阪府内のS市M区は、2010年6月現 在、人口158,275人、65歳以上の高齢者数は36,060人、高齢化率は22.8%であった。

2010年4月住民基本台帳の一部の写しの閲覧の許可を得て、乱数表を用いて階層別無作為 抽出法で住民基本台帳から1,016人を抽出した。自記式調査票を用いた郵送調査を行った。

調査は2010年5月末に始まり、6月8日の時点に督促状を発送し、6月末までに実施した。1,016 人のうち339人から回答が得られた(回収率33.4%)。

調査の目的と方法、個人情報への配慮、調査票の管理と処理などについては、大阪府立 大学人間社会学部・大学院人間社会学研究科研究倫理委員会の承諾を得た。調査の際に、

調査は無記名式で行い、個人の特定を行わないこと、研究目的以外には使用しないことを 明記し、協力が得られる場合には調査票を無記名で返送するよう依頼した。

2. 調査内容

前章で開発した認知症の人に対する態度尺度と認知症に関する知識尺度を用いた。その 際、態度尺度の因子分析およびIT相関分析の結果から、「認知症の人を支えるには、いろ いろな人の力をかりるのがよい」の1項目は不適切だと判断し、新たに1項目「認知症の人 に、どのように接したらよいか分からない」を追加した。認知症の人との関わり困難を感 じる人が尐なくないことが報告されており(小澤ら2007)、認知症の人との接し方に関する 項目を組み入れた。

そのほか、前章で用いた項目である高齢者イメージ(12項目)、性別、年齢、家族構成、

認知症の人との同居の有無、認知症の人との関わりの有無とその内容、認知症についての 関心の有無、認知症に関する主な情報源、認知症に関する情報に接する頻度をたずねた。

地域で認知症の人を支えていくことの重要性および認知症に関する講演会への参加意向 に関する項目(3項目)とともに、地域住民のさまざまな思いを把握するために、自由記述欄 を設けて回答してもらった。

3. 分析方法

分析対象は339人のうち、全項目の2割以上に記入漏れがあり、認知症の人に対する態度、

認知症に関する知識、高齢者イメージの項目についてほとんど回答していない7人を除く 332人とした。

分析対象者の基本属性、認知症に関連する項目、地域で認知症の人を支えていくことの 重要性および認知症に関する講演会への参加意向に関する項目については度数分布を調べ た。

認知症の人に対する態度は逆転項目の処理を行い、態度が肯定的であるほど点数が高く なるよう各項目に1点から4点を付与し、合計得点(15点から60点)を求めた。認知症に関す る知識は「正答」を1点、「誤答」と「分からない」を0点とし、15点満点とした。両尺度 ともIT相関分析を行うとともにCronbach α信頼性係数を求めた。高齢者イメージは最も ポジティブな選択肢が5点、最もネガティブな選択肢が1点となるようにスコア化し、各項 目は1点から5点までの回答分布とし、合計得点(12点から60点)を求めた。

分析対象者の基本属性および認知症に関連する項目別に認知症の人に対する態度、認知 症に関する知識、高齢者イメージの得点平均値に差があるかどうかを調べるため、t検定 または一元配置分散分析を用いて検定を行った。さらに、認知症の人に対する態度に関連 する要因を検討するため、認知症の人に対する態度の合計得点を従属変数として重回帰分 析を行った。その際、態度を構成する15項目を肯定的な態度(7項目)と否定的な態度(8項目) に分けて下位尺度とし、肯定的な態度と否定的な態度の合計得点を従属変数とした重回帰 分析を行った。本研究における態度の操作的定義に照らし合わせてみると「肯定的な態度」

と「否定的な項目」に2区分できる(図4-1-1)。

統計学的有意水準を5%未満とし、分析にはSPSS17.0J for windowsを用いた。

感情

肯定的な感情 否定的な感情

行動傾向

受容的な行動傾向

肯定的な態度

拒否的な行動傾向

否定的な態度

図4-1-1 分析における認知症の人に対する態度の2区分

4. 結果

1) 分析対象者の基本属性および認知症に関連する項目(表4-1-1・表4-1-2)

性別は女性が68.1%を占めた。年齢別にみると、60歳代が30.4%と最も多く、70歳代 17.5%、50歳代が17.2%と50歳代以上が全体の71.4%であった。家族構成は親と子のみ世 帯が45.8%と最も多かった。

認知症の人との同居の有無については、過去と現在を含めて同居「あり」が14.7%を占 めた。認知症の人との関わりの有無では、過去と現在を含めて「あり」が42.8%を占め、

そのうち「身内(同居家族、同居ではない家族、親族)に認知症の人がおり、介護をしてい る(いた)」が最も多く56.9%であった。認知症のついての関心の有無については「ある」

と「どちらかといえばある」を合わせると84.1%であった。認知症に関する主な情報源は テレビが最も多く85.7%であり、新聞(記事)64.1%、映画・ドラマ・小説46.2%の順で あった。認知症に関する情報に接する頻度は「年に数回」が最も多く45.8%であった 。

表4-1-1 性別、年齢、家族構成の回答分布 n=332

n %

性別 男性 102 30.7

女性 226 68.1

無回答 4 1.2

年齢 20歳代 23 6.9

30歳代 30 9.0

40歳代 40 12.0

50歳代 57 17.2

60歳代 101 30.4

70歳代 58 17.5

80歳代以上 21 6.3

無回答 2 0.6

家族構成 一人暮らし 20 6.0

夫婦のみ 112 33.7

親と子のみ世帯 152 45.8

三世代 33 9.9

四世代 2 0.6

その他 8 2.4

無回答 5 1.5

表4-1-2 認知症に関連する項目の回答分布 n=332 n %

認知症の人との同居の 現在同居中 9 2.7

有無 過去に同居あり 40 12.0

なし 275 82.8

無回答 8 2.4

認知症の人との関わりの 現在あり 64 19.3

有無 過去にあり 78 23.5

なし 183 55.1

無回答 7 2.1

認知症の人との関わり の内容

身近(近隣、知人、友人)に認知症の人がいて、関りがある

(あった)

29 20.1 身内(同居家族、同居ではない家族、親族)に認知症の人

がおり、介護をしている(いた)

82 56.9 仕事として認知症の人に関わっている(いた) 28 19.4

ボランティア活動で関わっている(いた) 4 2.8

その他 1 0.7

認知症についての ある 132 39.8

関心の有無 どちらかといえばある 147 44.3

どちらかといえばない 40 12.0

ない 8 2.4

無回答 5 1.5

認知症に関する テレビ(ニュース、情報番組等) 282 85.7

主な情報源 新聞(記事) 211 64.1

(複数回答) 映画・ドラマ・小説 152 46.2

(有効回答者数=329) ラジオ 31 9.4

講演会・勉強会・講座 36 10.9

家族・親戚 79 24.0

友人・知人 109 33.1

医療機関・福祉機関・役所関係 78 23.7

インターネット 17 5.2

その他 4 1.2

認知症に関する情報に 週に数回以上 29 8.7

接する頻度 月に数回 123 37.0

年に数回 152 45.8

ほとんど見たり、聞いたりしない 19 5.7

無回答 9 2.7

2) 地域で認知症の人を支えていくことの重要性および講演会等への参加意向 (表4-1-3)

回答者の88.0%の人が認知症の人を地域で支えていくことが大切であると回答した。認 知症についての勉強会や家族会などに参加したいと思う人は43.1%であった。また、認知症 の介護やケア、ボランティアなどの講習会への参加意向がある人は41.9%にとどまっており、

半数近くが参加する意向がないと回答した。

表4-1-3 地域で認知症の人を支えていくことの重要性および講演会等への参加意向の回答 分布 n=332

n %

認知症の人を地域で支えていくことが大切であると思い ますか

大切であると思う 292 88.0

思わない 29 8.7

無回答 11 3.3

認知症についての勉強会や家族会、意見交換会、講演 会などを開催したら、参加してみたいと思いますか

参加したいと思う 143 43.1

思わない 177 53.3

無回答 12 3.6

認知症の介護やケア、ボランティアなどの講習会を開催 したら参加されますか

参加したいと思う 139 41.9

思わない 179 53.9

無回答 14 4.2

3)認知症の人に対する態度(表4-1-4)

認知症の人に対する態度尺度を構成する15項目の合計得点の平均値(±S.D.)は39.8点(±

6.5)、Cronbach α係数は0.834であった。肯定的な態度を構成する7項目の合計得点の平均 値 (±S.D.)は、20.7点(±3.5)であり、否定的な態度を構成する8項目の合計得点の平均値 (±S.D.)は、19.0点(±4.0)であった。IT相関分析では、すべての項目において0.4以上の 数値が得られた。

項目別の平均値は「認知症の人も周りの人と仲よくする能力がある」が最も高く3.19点 であり、「認知症の人が困っていたら、迷わず手を貸せる」3.16点、「認知症の人と喜び や楽しみを分かち合える」3.04点、「認知症の人も地域活動に参加した方がよい」3.02点 で、3点を上回った項目は4項目であった。「認知症の人は周りの人を困らせることが多い」

は最も低く1.95点であった。

表4-1-4 認知症の人に対する態度の回答分布 n(%) n=317 全く

思わない

あまり 思わない

やや

そう思う そう思う 平均値1)

(1~4)

IT相関 分析

肯 定 的 な 態 度

認知症の人も周りの人と仲よく

する能力がある 5(1.5) 53(16.0) 146(44.1) 127(38.4) 3.19 0.435**

普段の生活でもっと認知症の

人と関わる機会があってもよい 18(5.5) 136(41.2) 131(39.7) 45(13.6) 2.62 0.532**

認知症の人が困っていたら、迷

わず手を貸せる 2(0.6) 48(14.5) 176(53.2) 105(31.7) 3.16 0.533**

認知症の人も地域活動に参加

した方がよい 5(1.5) 64(19.5) 179(54.6) 80(24.4) 3.02 0.516**

認知症の人と喜びや楽しみを

分かち合える 9(2.7) 68(20.7) 154(46.8) 98(29.8) 3.04 0.620**

認知症の人とちゅうちょなく話

せる 6(1.8) 93(28.2) 146(44.2) 85(25.8) 2.94 0.721**

認知症の人が自分の家の隣に

引っ越してきてもかまわない 24(7.3) 116(35.5) 103(31.5) 84(25.7) 2.76 0.462**

否 定 的 な 態 度

認知症の人は周りの人を困ら

せることが多い 4(1.2) 51(15.4) 200(60.4) 76(23.0) 1.95 0.457**

認知症の人はわれわれと違う感

情を持っている 39(11.9) 157(47.9) 98(29.9) 34(10.4) 2.61 0.438**

家族が認知症になったら、世間

体や周囲の目が気になる 38(11.5) 129(39.1) 128(38.8) 35(10.6) 2.52 0.516**

家族が認知症になったら、近所

づきあいがしにくくなる 42(12.7) 162(48.9) 103(31.1) 24(7.3) 2.67 0.466**

認知症の人にどのように接した

らよいか分からない 27(8.1) 84(25.3) 131(39.5) 90(27.1) 2.14 0.611**

認知症の人の行動は、理解で

きない 19(5.8) 114(34.7) 143(43.5) 53(16.1) 2.30 0.659**

認知症の人はいつ何をするか

わからない 9(2.7) 84(25.6) 169(51.5) 66(20.1) 2.11 0.592**

認知症の人とは、できる限り関

わりたくない 41(12.4) 182(55.2) 91(27.6) 16(4.8) 2.75 0.713**

15項目の合計得点の平均値(15点から60点) 39.8 (±6.5)

15項目のCronbach α係数 0.834

**p<0.01 1点数が高いほど肯定的な回答になる。