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*20 長期の経過で著明な大脳萎縮を 伴った FTLD-TDP の一剖検例

1) 京都府立医科大学大学院医学研究科 分子病態病 理学

2) NHO舞鶴医療センター 神経内科 3) NHO舞鶴医療センター 臨床研究部

◯丹藤 創1、高橋 央1、水原 亮2、木村正志2、結城 奈津子2、吉岡 亮2, 3、伊東恭子1

【症例】死亡時80歳女性

【現病歴並びに経過】60歳時に進行性の言語障害で発症 し、2年後に他医でALSと診断された。69歳で当科を 初診。気管切開、胃瘻造設状態で、簡単な指示には眼球 運動で応じた。四肢麻痺状態で、両側の錐体路徴候、両 側 の 背 側 骨 間 筋 に 軽 度 の 筋 萎 縮 を 認 め た 。 そ の 後

locked-in状態となった。MRIでは前頭側頭葉優位の著

明な大脳萎縮と脳室拡張を認めた。肺炎により死亡。全 経過を通じて人工呼吸器装着はなかった。

【神経病理所見】脳重は870g。肉眼的に著明な脳室拡張、

大脳皮質・白質の菲薄化を認めた。組織学的には、大脳 皮質全層にわたり高度の神経細胞脱落、グリオ-シス、

白質に髄鞘の淡明化及びCD68陽性マクロファージの浸 潤がみられた。比較的少数ではあるが、リン酸化 TDP-43 陽性の神経細胞質および突起内封入体が海馬歯状回 顆粒細胞層、海馬支脚、前頭葉、側頭葉、後頭葉、運動 野など広汎な領域で観察された(type 2)。リン酸化αシヌ クレイン、リン酸化タウ(AT8)免疫染色では、凝集封入体 は陰性。錐体路は高度に変性し、大脳脚、延髄錐体及び 脊髄側索・前索の軸索脱落を認めた。脊髄前角、舌下神 経核の神経細胞脱落、グリオ-シスを認めたが、顔面神 経核、動眼神経核、滑車神経核は比較的良く保たれてい た。脳幹・脊髄ではブニナ小体やTDP-43陽性封入体陰 性。黒質や青斑核、小脳歯状核の神経細胞は保たれてい たが、小脳プルキンエ細胞、顆粒細胞の局所的な脱落が あり、また、右基底核に小梗塞巣を認めた。

【考察】約20年の経過のALSとしては、脳幹・脊髄病 変は軽度であり、少数であるが海馬顆粒細胞層や大脳皮

質に TDP-43 陽性細胞の広範な出現を認めた。

FTLD-TDPを疑うが、前頭側頭優位の高度の大脳萎縮と脳室拡 張は、この診断で説明可能か御意見を伺いたい。

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*21 上位運動ニューロン症状で発症した 神経細胞性中間径フィラメント封入

体病( NIFID )の一剖検例

関西医科大学附属病院 脳神経内科

○村上 綾、中村正孝、隠岐光彬、中村芳美、金子 鋭、

日下博文

【症例】死亡時63歳男性。家族歴なし。

【現病歴】57 歳頃から構音障害を認め、次第に嚥下障害 が出現した。58 歳時には右上下肢の痙性麻痺が出現する も、頭部 MRI は正常で、針筋電図でも異常はなかった。

その後、右上肢の線維束攣縮、左上下肢の痙性麻痺と共 に垂直眼球運動制限、仮面様顔貌といった錐体外路症状 も出現し、発語不能となった。しかし言語理解は良好で、

情緒面も安定しており仕事もできていた。その後仮性球 麻痺が進行し、強制泣きや強制笑いも出現するようにな り、頭部 MRI では進行性に大脳萎縮を認めた。59 歳時に は自発性の低下、感情表現の平板化が進みほぼ寝たきり の状態となり 60 歳時には経管栄養となった。63 歳時に 左尿管癌からの大量出血で死亡した。

【神経病理所見】脳重量は1120g。固定後割面では、前 頭葉の著明な萎縮、橋・延髄の萎縮を認め、尾状核・被 殻・淡蒼球の萎縮・変色が著明で、前頭葉白質も変色し ていた。組織学的に、Betz 巨細胞の高度脱落と錐体路変 性を認めたが、下位運動神経細胞の脱落は軽度であった。

前頭葉、尾状核・被殻・黒質の高度の神経細胞脱落、淡 蒼球の中等度の神経細胞脱落も認めた。淡蒼球と黒質に 多数の FUS 陽性の神経細胞内封入体(NCI)及びα-インタ ーネキシン陽性の NCI を認め、神経細胞性中間径フィラ メント封入体病(NIFID)と診断した。

【考察】本例は、臨床的には上位運動ニューロン障害が 先行し、その後前頭側頭型認知症を呈した。病理学的に は、前頭葉及び基底核、錐体路に高度の変性をきたし、

既報告の NIFID の病理学的特徴と合致していた。NCI は 広範囲に認めたが、萎縮の高度であった淡蒼球と黒質に 多数認め、既報告で NCI が多いとされる前頭葉や海馬に はほとんど認めなかった。文献的考察を加えて報告する。

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22 神経サルコイドーシスによる中枢神

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