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22 神経サルコイドーシスによる中枢神

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*23 遠位型筋ジストロフィーとの鑑 別を要し、筋病理で慢性ミオパチ ー型サルコイド筋炎と診断した 一例

京都府立医科大学大学院医学研究科 神経内科学

○上田哲大、辻有希子、安池博美、滋賀健介、水野敏樹

【症例】52歳男性 家族歴なし

【現病歴】35歳で肺サルコイドーシスと診断され、無治 療で経過観察していた。30歳代後半より右上肢の挙上し にくさを自覚した。48歳から歩きづらくなり、49歳か らつま先立ちが困難となった。徐々に症状は進行し階段 昇降が困難となった。52歳で精査目的に入院。神経学的 には右優位の両側翼状肩甲を認め、両側大胸筋、両側下 腿三頭筋の顕著な筋力低下がみられた。血液検査では CK 566 U/L と上昇し、ACEとsIl2Rは正常範囲内で抗 ARS抗体や抗核抗体は陰性であった。心サルコイドーシ スの所見は見られなかったが、眼科診察ではサルコイド ぶどう膜炎が疑われた。筋超音波検査では両側下腿三頭 筋、大腿二頭筋、外側広筋に筋萎縮と脂肪変性があり、

右外側広筋より筋生検を施行した。

【筋病理所見】HE 染色で筋線維の大小不同(直径 10-180 μm)を認め、ほとんどは丸みを帯びていた。肥大 した線維では中心核が増加していた。少数の壊死再生線 維あり。筋周膜と筋内膜周囲の間質成分の増大あり。炎 症性単核球は筋周膜、および筋内膜への浸潤を認めた。

非乾酪性肉芽腫(中心部はCD4、CD68陽性、周囲はCD8 陽性)をごく少数認めた。ゴモリ変法染色では、縁取り 空胞や赤色ぼろ線維と断定できる所見はなし。ATPase 染色ではtypeⅡb線維の萎縮が目立った。ジスフェルリ ン染色では欠損なし。

【考察】本例では慢性進行性の筋疾患の臨床経過であ り、障害筋の選択性(特に下腿三頭筋)がみられること から、遠位型筋ジストロフィーが疑われた。しかし、筋 病理では非乾酪性肉芽腫を認め、肺サルコイドーシスの 既往とサルコイドぶどう膜炎の所見を伴うことから、慢 性ミオパチー型サルコイド筋炎と考えた。臨床診断のみ では鑑別が困難であり、筋生検が診断に大きく寄与し、

治療方針の決定に影響した。比較的稀な疾患であり、文 献的考察を加えて報告する。

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*24 自己免疫性溶血性貧血の治療中 に進行性多巣性白質脳症(PML)を 発症した 1 剖検例

1) 京都第二赤十字病院 病理診断科 2) 東京医科大学 人体病理学分野

3) 京都府立医科大学大学院医学研究科 分子病態病 理学

○渡邉侑奈1、桂 奏1、宍戸-原 由紀子、伊東恭子

【症例】65歳、女性

【現病歴】死亡約6年前に自己免疫性溶血性貧血と診断 され、同年よりステロイド治療を開始され、その後も長 期に渡りステロイド治療が継続されていた。死亡約8か 月 前 に 意 識 障 害 を 発 症 し 、 そ の 後 、 髄 液 検 査 で JC virus(JCV) DNAが検出され、MRI画像でも右小脳半球か ら中小脳脚、橋にかけて異常信号が見られたことと併せ て病変の主座が典型的ではないがPMLを否定できない と考えられ、免疫グロブリン補充療法を行い反応性改善 が見られた。その後原疾患悪化に対してRituximabの投 与がなされ、溶血は改善したものの神経活動性の改善は 見られず、その後除皮質硬直肢位が固定化、発語困難と なり、呼吸状態が悪化し死亡した。

【神経病理所見】

脳重量は1288g。固定後割面では、小脳において歯状核

が不明瞭となっており、組織の脆弱性が見られたが、中 脳、橋、延髄、大脳皮質・白質には肉眼的に著変がなか った。病理組織学的には、小脳白質、一部小脳皮質、中 脳、橋、延髄に多発性の脱随巣が見られ、リンパ球浸潤 を伴う部位もあった。脱随巣および近傍には封入体(full inclusion、dot-shaped inclusion)を有するoligodendrocyteや astrocyte、bizarre astrocyteが見られ、これらは免疫組織化 学、in situ hybridization (ISH)でJCV陽性を示した。大脳 ではこれらの病変を指摘できなかった。

【考察】近年、自己免疫性疾患や分子標的薬治療を背景 に発症したPML例が報告されており、本症例もこれに 当てはまると考えられる。本症例は生前より JCV DNA が検出され、さらに剖検脳において免疫組織化学、ISH でJCVが証明された貴重な症例であり、病変の主座が典 型的な大脳になかったことも非常に興味深い。これらの 点について詳細な病理学的所見に若干の文献的考察を 含めて報告する。

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25 画像・病理・遺伝子解析で悪性リ ンパ腫が疑われた、高度炎症細胞 浸潤を伴う予後良好な進行性多 巣性白質脳症(PML)

1) 東京医科大学人体病理学 2) 同 脳神経内科

3) 同 脳神経外科

4) 国立感染症研究所ウイルス 第一部第三室 5) 東海大学医学部基盤診療学系 病理診断学

○宍戸-原由紀子1、大原万里恵1、松林 純1、中道一生

4、中村直哉5、相澤仁志2、秋元治朗3、長尾俊孝1

【背景】進行性多巣性白質脳症(PML)は、JC ウイルス

(JCV)感染による脱髄脳症で、宿主の免疫能低下に伴い

JCVが再活性化して発症する。1980年代、AIDS合併症 として症例数が増加し、HAART 療法が施行されると、

免疫再構築症候群(IRIS)が新たな問題となった。近年で は、多発性硬化症の治療に伴う PML発症が深刻な問題 であるが、早期診断と炎症のコントロールができれば、

良好な予後も期待できると言われている。今回、皮膚筋 炎合併のPML で、悪性リンパ腫類似の高度炎症反応を 伴った症例を経験したので報告する。

【症例】72歳女性。皮膚筋炎でステロイド治療中、パソ コン操作ができなくなった。頭部MRIで、左前頭葉の腫 瘍様病変と、造影効果を伴うT2/FLAIR高信号の斑状病 変が認められ、悪性リンパ腫または膠原病関連血管炎の 疑いで、脳生検が施行された。病理組織ではT細胞、B 細 胞 、 形 質 細 胞 の 高 度 浸 潤 が あ り 、 遺 伝 子 解 析 で CD4>CD8、PCRでTCRβ、IgHにclonalityが示唆され たことから、「悪性リンパ腫の疑い」と暫定報告された。

MTX大量療法を2コース施行し、画像と臨床症状は軽 快した。しかしその後、脳生検検体から JC ウイルス 10,000 copy/cellが検出。病理所見が見直され、免疫組織 化学とin situ hybridizationでJCウイルス感染細胞が多数 検出されたことより、PMLの確定診断となった。予後良 好で、外来follow中。

【考察】予後良好なPMLでは、宿主炎症反応を伴うこ とが知られているが、T細胞系、B細胞系のclonalityが 示唆された報告はない。本例では、ウイルス抗原特異的 なリンパ球細胞が出現し、免疫応答を担っていたと考え られる。一方、過剰な免疫応答(fatal PML-IRIS)は致死的 であることから、今後、脳生検では炎症の質と量を評価 することが重要と思われた。

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26 脳腫瘍が疑われ摘出されたが、病理

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