• 検索結果がありません。

話題の食中毒細菌、カンピロバクターの 簡便・迅速検査法の開発

ドキュメント内 CONTENTS (ページ 53-56)

食中毒の原因となる人獣共通感染症菌のカンピロバクター属菌は、その重要性が認識さ れるようになってまだ三十数年だ。家畜の腸管内に生息している。食中毒菌が付着して いない食肉を提供するために、感度の高い迅速な検査法が求められていた。

山崎 伸二

(やまさき・しんじ)

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 教授

話題の食中毒細菌、カンピロバクターの

*1:詳細は、タカラバイオ社の ホームページ(http://catalog.

takara-bio.co.jp/)を参照

行った。さらに3菌種の

cdt

遺伝子の分布を調べ、

cdt

遺伝子がこれら3 菌種に菌種特異的かつ普遍的に存在していることを偶然見いだした。カン ピロバクター属菌は培養に微好気条件を必要とし、培養時間も2‑3日と 長く、また菌種間での生化学的性状が酷似しており、菌種同定が困難であ る。それ故、さまざまな遺伝子検査法が開発されていたが、十分満足が得 られるものは無かった。われわれは、

cdt

遺伝子を標的とする遺伝子検査 法が、カンピロバクターの迅速診断に役立つのではと考えた。

◆扶桑薬品工業との連携

 当時、この研究テーマに直接携わったのが扶桑薬品工業株式会社の朝倉 昌博研究員であった。彼は社会人大学院生として当研究室に入室し、カン ピロバクターの研究を開始した。扶桑薬品工業は、輸液や透析液を主力製 品とする製薬会社である。透析患者は敗血症をはじめ感染症リスクが健常 人と比べ約千倍高くなることが知られている。そのため、感染症診断薬の 開発にも力を入れていた扶桑薬品工業と食中毒のみならず敗血症にも関与 するカンピロバクター属細菌の迅速診断法開発の共同研究を行うことと なった。共同研究の成果として、

cdt

遺伝子を標的

とすることで3菌種のカンピロバクター属菌を検 出・同定できることが分かり、共同で特許を出願した。

◆3菌種同時検出できる検査キット開発

 食中毒細菌を検査している現場からカンピロバク ターを菌種特異的に簡便・迅速に検出・同定できる キットがあればという意見が寄せられた。多くの研 究機関では PCR(DNA 増幅)法が普及していたの で、PCR 法でカンピロバクタージェジュニ、コリ、

フィータスの3菌種を同時に検出できるマルチプ レ ッ ク ス PCR キ ッ ト を 開 発 し た。 こ の 方 法 で は PCR チューブ当たり 10 個の菌を検出することがで き、今まで約1週間を要していた臨床検査や食品検 査が、検体を直接調べた場合約4時間で、菌の単離 を含めれば約3日まで短縮できた。さらに、電気泳 動を行わず PCR チューブ当たり1個の菌とより迅 速で検出下限の低いリアルタイム PCR 法を開発し た。

◆販売はタカラバイオに委託

 さまざまな食中毒細菌を検査する PCR キットを販 売していたタカラバイオ社にキット化と販売を委託 した。現在タカラバイオ社から3菌種のカンピロバ クターを検出できる

Campylobacter

cdt

 gene)PCR 

Detection and Typing Kit(写真1)とリアルタイム PCR 用の CycleavePCR 

Campylobacter

( 

jejuni

/

coli

) Typing Kit(写真2)が販売されている*1

写真2  CycleavePCR Campylobacter (jejuni/coli)  Typing Kit

写真1  Campylobacter (cdt gene) PCR Detection  and Typing Kit

問合せ先:

JST産学連携担当  菊地、登坂

〒102-0076

東京都千代田区五番町7 Kʼs五番町 TEL :(03)5214 7993 FAX :(03)5214 8399 独立行政法人 科学技術振興機構(JST)

イノベーション推進本部 産学連携展開部 産学連携担当

高橋 富男  東北大学 高度イノベーション博士 人財育成センター

シニアエキスパート Copyright 

PRINT   ISSN  2186−2621   ONLINE  ISSN  1880−4128  

©2005 JST. All Rights Reserved.

2012年1月号 2012年1月15日発行

産学官連携ジャーナル(月刊)

編集責任者:

編集・発行:

★景気はどうなるかは、新年の大きな関心事である。昨年は、地震と津波、タイ

の洪水といった天災が、少し上向きかけていたわが国の景気に容赦なく冷水を浴 びせた形となった。われわれ産学連携を志す者は、イノベーションによる不況脱 出、アントレプレナーによる景気けん引を提唱したシュンペーターの経済学に多 少なりとも影響されているわけだが、次に来るのは、そこに地球環境をシミュレー ションで取り入れたものかもしれない。近年のシミュレーション技術の躍進には 目を見張るものがある。経済分析等にも広く応用されているので、今年は自然科 学と人文科学を組み合わせたシミュレーション技術の一般社会への普及に着目し

たい。  (編集委員・雨森 千恵子)

★3.11 と 10.5、昨年のこの日を世界はいつまでも記憶しているだろう。10 月

5日、Apple 社の創設者であり前 CEO のスティーブ・ジョブズが若くして突然 この世を去った。言わずと知れた Macintosh や ipod、iphone など世の中を変え る革新的な製品を多く世に送り出した真のイノベータであった。ただし成功ばか りではなかった。一度は Apple 社から追い出されているし、Newton という携帯 端末を発売したが大失敗に終わっている。それでもおのれを信じ CEO に返り咲 き偉業を遂げた。

 ジョブズのようにはなれないかもしれないけれど、一人一人が自分を信じてみ んなが行動を起こすことで世の中が変わることを信じよう。そのための一歩を踏 み出すことで日本に元気を取り戻そう。  (編集委員・遠藤 達弥)

★東日本大震災のあった年として歴史に刻される 2011 年は、産学官連携を取り

巻く環境も激変した。8月に閣議決定された第4期科学技術基本計画では、科学 技術政策とイノベーション政策の一体的展開が掲げられた。わが国が取り組むべ き課題をあらかじめ設定し、その達成に向けて産業化施策も幅広く対象に含めよ うというもの。従来の分野別重点化から課題達成型への大転換だ。2012 年は現 場でも、ニーズ=出口起点へのシフトに加え、大企業のオープンイノベーション への取り組みは加速し、地域振興に関わる諸機関や中小企業などの産学官民連携 ネットワークづくりは引き続き拡大していくだろう。産学連携はますます盛り上 がっていく。本年もよろしくお願い致します。

  (編集長・登坂 和洋)

シミュレーション シミュレーション 技術に期待 技術に期待

自分を信じて 自分を信じて

盛り上がる 盛り上がる 産学連携 産学連携

ドキュメント内 CONTENTS (ページ 53-56)