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被災動物移動診療車「わんにゃんレスキュー号」の活動

ドキュメント内 CONTENTS (ページ 45-48)

や新聞などを見ることができない)、知らない人が多かったが、ホルスタ イン柄の白黒に塗られた大型検診車は人々の注意を引き、次第に知られる ようになった。

◆被災地での救護活動

 わんにゃんレスキュー号は4月1日から5月 18 日まで5回派遣し、延べ 131 頭(犬 100 頭、

猫 30 頭、その他1頭)の診療(写真2、3)と、

支援物資の輸送・支給を行った。

 まだ雪の舞う野外での診療にもかかわらず、多 くの被災者が動物を連れて移動診療の会場で診療 車が到着するのを待っていてくれた。

 多かったのは、慢性的な病気で内服薬が必要な 伴侶動物を抱えている人々で、内服薬や処方食の 需要が高かった。また、皮膚疾患、爪切りや外耳 炎、肛門嚢の処理などの日常的な獣医療の要望が

多かった。津波と避難生活の長期化により、動物が神経質になり、

下痢も目立った。加えて、高度な診断や外科的処置の必要な症例 もあり、後日大学での CT 検査と外科手術を行った例もあった。

その中で、津波で大腿骨の開放骨折を起こした猫を動物病院に搬 送して外科手術を実施し、継続入院とリハビリテーションを継続 した。大学の附属病院では日常的に紹介症例に対する二次診療を 実施しているが、被災地の現場ではこのような一次診療の実施が 緊急の課題となっていたのである。

 被災した方々は誰かに自分の動物の健康状態を話すことができ て、一時的ではあるが安心した表情をされる方が多かった。その 伴侶動物が「津波で流されたお父さんの形見だから病気にさせる わけにはいかない、長生きして欲しい」という強い願いや、「津 波が来たとき、銀行の通帳もハンコも取らないで、この子だけを 抱えて走ったんだ」という方もおられ、その表情はとても満足そ うであった。過去に大きな津波に繰り返し襲われてきた三陸には

「てんでんこ」という思想がある。津波から逃げるときには振り返らずそ れぞれが自分で逃げ切って命を守っていかなければならないということな のだが、多くの飼い主が自分の動物たちを助けに自宅に戻ったと考えられ る。取るものも取らずに、とにかく動物たちを助けて一緒に走ったのであ る。そのようにしてともに逃げ切ってきた動物たちは、被災後の苦しい生 活の中で、被災した方々の心のよりどころとなっていると強く感じた。

◆一時預かり・里親ボランティアの募集

 私たちは移動診療とともに、被災動物の一時預かり・里親ボランティア の募集も行ってきた。約2カ月で県内外から 358 名の応募があり、遠く は九州や沖縄からの問い合わせも届いた。しかし、これらのボランティア

写真2 移動診療会場

写真3 診療の様子

リストは、岩手県ではあまり利用されなかった。主な原因が、被害が大き 過ぎて救助された動物の数が想像していたよりも少なかったこと。また、

前述のように動物と一緒に逃げ延びてきた人々は、どんな環境になっても 家族である動物を手元に置いておきたいと強く願っていたこともあった。

従って、どうしても離れなければならなくなると、地元の方に「一時預か り」をお願いする場合が多かったのである。

 このボランティアリストはボランティアの皆さまにご理解をいただいた 上で、宮城県や福島県の避難動物の一時預かりや里親の縁組みに提供させ ていただいている。この中から、何組かの里親が決まって、被災動物たち は新しい家庭に引き取られていった。

 また、岩手大学農学部附属病院では7月から9月までの間に、被災した ご家庭から被災アヒルの一時預かりも実施した。アヒルは動物病院の中庭 で学生さんたちによって飼育され、職員の方からビニールプールをプレゼ ントされて満足そうであった。今回の救護活動では犬、猫以外の動物は数 少なかったが、その1例である。

◆今後の支援活動

 6月から大学の実習が始まり、移動診療車は本来の集団検診車として牛 群検診に使用されている。しかし、被災地からは、その後も時々、移動診 療の依頼が届いている。今後、継続して実施するためには、専用の移動診 療車が必要となるが、私たちの活動に賛同してくれた飼料・食品総合メー カーから小動物専用の移動診療車が寄付されることになっている。

 被災地の復興は何年かかるか分からないが、今後も獣医療を通じた被災 地支援を継続してゆこうと考えている。そして被災して打撃を受けている 沿岸の獣医療の底上げのためにも、今後は沿岸の拠点病院への学術的支援 が大学の大きな責務になってくるものと思われる。移動診療や被災地での 症例検討会・学術セミナー開催など、これからも拠点病院と連携しながら 支援事業を継続していきたい。これらの支援事業は1つの大学だけでなく、

全国的な取り組みとして獣医学関係者全体で行われる必要がある。それと 同時に、国民の一人一人が今回の震災のことを忘れずに、息の長い支援を することが重要であると思う。

 今回の地震で被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げたい。

 平成 23 年3月 11 日に発生した東日本大震災では、八戸港に停泊して いた大きな漁船が、津波により陸地内部に流れ込んでいく様がいち早く世 界各地でテレビ放映されたが、これは未曽有の災害を知る前兆であった。

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