6 現場適用性の検討および利用の提案
6.3 現場適用性の検討
6.3.2 試験結果
102 ある.
図-6.24に試験練りの際の養生方法の概略(圧縮強度試験用)を示す.すべての供試体の 型枠は,材齢1日で脱型した.供試体の養生期間は1,3,7,28に設定し,養生終了時およ
表-6.10 コンクリートの配合
セメント の種類
W/C
(%)
s/a
(%)
単位量(kg/m3) スランプ
(cm)
空気量
W C S G (%)
OPC 54 45 172 317 812 989 13.5 5.5
:封かん養生(20℃) :屋内暴露(20℃,RH60%)
:脱型 圧:圧縮強度試験 図-6.24 養生方法の概略(圧縮強度試験用)
び材齢28日に圧縮強度を測定した.促進中性化試験で使用した供試体の封かん養生期間も 圧縮強度試験と同様とした.また,実際の現場では実構造物の圧縮強度を確認するため,現 場封かん養生を実構造物と同じ期間で行い,その後,材齢28日まで現場環境に暴露した供 試体も作製した.実構造物の型枠脱型は,材齢6日で行った.
試験練りで作製した電気抵抗計測用供試体は,5章と同様とした.
103
28日まで封かん養生を行ったものである.3 および 5 章の結果と同様に養生終了時の圧縮 強度と電気抵抗に直線関係が認められた.
図-6.25 電気抵抗計の測定結果(試験練り)
材齢28日の圧縮強度と養生終了時の電気抵抗の関係を図-6.27に示す.図中の材齢28 日の圧縮強度試験結果は,圧縮強度の小さいものから順に材齢1日,3日,7日,28日ま で封かん養生を行った供試体のものである.この結果も3および5章と同様の傾向を示し ている.
中性化速度係数と養生終了時の電気抵抗の関係を図-6.28に示す.中性化速度係数の大 きいものから順に材齢1日,3日,7日,28日まで封かん養生を行った供試体から算出し た結果である.この結果も3および5章と同様の傾向を示した.
図-6.26~28は5章等で行った試験結果と同様の傾向を示しており,電極の間隔,通電 深さ,電極の金属を変えても同様の傾向を得ることができた.この図-6.26~28を用いて
図-6.26 養生終了時の圧縮強度と電気抵抗の関係 0
3 6 9 12 15
0 7 14 21 28
電気抵抗(kΩ)
材齢(日)
試験練り
y = 4.4066x - 10.869 R² = 0.9995
0 10 20 30 40
0 5 10 15
養生終了時の圧縮強度 (N/mm2)
養生終了時の電気抵抗(kΩ)
22.5N/mm2
7.53kΩ
104
図-6.27 材齢28日の圧縮強度と養生終了時の電気抵抗の関係
図-6.28 中性化速度係数と養生終了時の電気抵抗の関係
実際の現場の逆 T 型擁壁のコンクリートの電気抵抗から圧縮強度や中性化速度係数を推定 する.
(2)現場計測
試験練りで作製した供試体を恒温恒湿室内(温度:20±1℃,相対湿度:60±5%)で計測 した電気抵抗と,実際に現場の逆 T 型擁壁で計測した電気抵抗の計測結果を図-6.29 に示 す.試験練りの電気抵抗と現場計測の電気抵抗は,練混ぜ直後に差は認められなかった.し かし,電気抵抗は,材齢の進行に伴って試験練りで計測された値より現場計測の値が小さい 値を示した.
現場計測での電気抵抗と外気温を図-6.30 に示す.現場計測時の外気温は,平均気温が
16.0℃となっており,試験練りの気温20℃より低い.したがって,試験練りと現場計測での
y = 13.396x0.4124 R² = 0.9435
0 10 20 30 40 50
0 5 10 15
材齢28日の圧縮強度(N/mm2)
養生終了時の電気抵抗(kΩ)
30.9N/mm2
7.53kΩ
y = 16.87x-0.867 R² = 0.9436
0 2 4 6 8 10
0 2 4 6 8 10 12
中性化速度係数(mm/√週)
養生終了時の電気抵抗(kΩ)
2.93mm/√週
7.53kΩ
105
図-6.29 電気抵抗の計測結果(試験練りおよび現場)
図-6.30 電気抵抗と外気温の関係
電気抵抗の差異の原因として,計測される電気抵抗が温度環境による水和反応の進行度の 違いに影響を受けたことが考えられる.これは,温度等の現場状況によって左右されるコン クリートの水和反応の進行度を反映した結果と考えられ,本手法の有用性を示すものと考 えられる.
現場の逆 T型擁壁は,材齢 6日に脱型されたことにより養生が終了した.養生終了時の 電気抵抗値は7.53kΩとなり,圧縮強度や中性化速度計数は,図-6.26~6.28内の矢印のよ うに算出される.これらの結果から,実際の現場でコンクリート構造物を対象に電気抵抗が 計測可能なことを確認した4,5).また,この現場の逆T型擁壁は,十分な強度度と中性化抵 抗性があると推定される.
現場でコンクリートを打設する際に供試体を採取し,現場封かん養生を実構造物と同様 の材齢6日まで行い,その後,現場環境で暴露した供試体の材齢28日圧縮強度は,31.8N/mm2 であった.また,本手法で推定された材齢28日の圧縮強度の30.9N/mm2であった.これら
0 3 6 9 12 15
0 1 2 3 4 5 6 7
電気抵抗(kΩ)
材齢(日)
試験練り 現場計測
脱型 材齢:6日 電気抵抗:7.53kΩ
0 5 10 15 20 25
0 2 4 6 8 10
0 1 2 3 4 5
外気温(℃)
電気抵抗(kΩ)
材齢
抵抗(kΩ)
温度(℃)
106
の結果から現場封かん養生の供試体と推定強度は,同程度の圧縮強度が得られており,本手 法を用いて実構造物の強度を推定することで,外気温などの施工環境を反映した強度の推 定ができると考えられる.
本手法を用いれば,試験練りの際に電気抵抗と各物性値の関係を得ることで,養生を終了 するタイミングを決定できると考えられる.以下でその方法について説明する.
図-6.31に養生終了時の圧縮強度と養生終了時の電気抵抗の関係を示す.仮に実際の現 場で型枠脱型時の圧縮強度が,コンクリート標準示方書[施工編]の型枠および支保工を 取り外してよい時期のコンクリートの圧縮強度であたえられている14 N/mm2より大きい
15N/mm2と設定すれば,養生終了時の電気抵抗は5.9kΩとなる.したがって,現場で電気
抵抗の計測を行い,電気抵抗の値が5.9kΩを超えれば養生を終了して良いことになる.図
-6.29の現場での電気抵抗で確認すると実構造物では,4日程度の養生で養生終了時の圧
縮強度を満足したと推定される.
図-6.31 養生終了時の圧縮強度と電気抵抗の関係
図-6.32に材齢28日の圧縮強度と養生終了時の電気抵抗の関係を示す.この現場逆T型 擁壁の設計基準強度は24N/mm2であり,コンクリートの呼び強度は27N/mm2であった.仮 に現場での管理強度を27N/mm2とした場合,養生終了時の電気抵抗の値は5.5kΩ以上とな り,図-6.29の現場での電気抵抗で確認すると3日程度の養生で満足することになる.コン クリート標準示方書[施工編]に準拠した湿潤養生期間は5日である.直流四電極法による 養生終了時期判定手法を用いれば,この材齢28日の管理圧縮強度27N/mm2を満足するため に 3 日程度の養生で良いと判断される.仮にこのコンクリート構造物の養生終了時期の設 定を材齢28日の圧縮強度のみとした場合,結果として養生期間を短縮でき,施工期間の短 縮や型枠転用性の向上などの生産性向上に結びつくと考えられる.
図-6.33に中性化速度係数と養生終了時の電気抵抗の関係を示す.同様に,コンクリート 構造物に要求される劣化に対する抵抗性である中性化速度係数を3.5mm√週以下としたい
y = 4.4066x - 10.869 R² = 0.9995
0 10 20 30 40
0 5 10 15
養生終了時の圧縮強(N/mm2)
養生終了時の電気抵抗(kΩ)
15N/mm2
5.9kΩ
107
図-6.32 材齢28日の圧縮強度と養生終了時の電気抵抗の関係
図-6.33 中性化速度係数と養生終了時の電気抵抗の関係
場合,養生終了時の電気抵抗は6.1kΩ以上とすれば良く,コンクリート構造物に要求され る耐久性から養生終了時期を設定することも可能となる.これは,耐久性照査設計の設定に 対して適切な養生終了時期を判断する手法として利用できると考えられる.
前述のように材齢28日の圧縮強度を27N/mm2を養生終了のタイミングに設定すると必 要な養生終了時の電気抵抗は5.5kΩとなる.この電気抵抗の値を中性化速度係数に当ては めると推定される中性化速度係数は4mm/√週程度と比較的に大きな値となる.養生の終 了時期は,強度だけでは無く,中性化等の耐久性から定めることが必要と考えられる.
電気抵抗は3章や5.2で記載したように水和反応の進行度を評価していると考えられ,
養生の終了時期をセメントの水和反応の進行度から判断できると考えられる.また,本手 法は実際の現場で計測でき,本手法を用いることによりコンクリート構造物に要求される 強度や耐久性から養生終了を判断することが可能と考えられる.さらに,コンクリート構 造物の耐久性から養生終了時期を判断できる可能性がある.
現場でコンクリート構造物のかぶりコンクリートを直接的に計測し,コンクリート構造 y = 13.396x0.4124
R² = 0.9435
0 10 20 30 40 50
0 5 10 15
材齢28日の圧縮強(N/mm2)
養生終了時の電気抵抗(kΩ)
27N/mm2
5.5kΩ
y = 16.87x-0.867 R² = 0.9436
0 2 4 6 8 10
0 2 4 6 8 10 12
中性化速度係数(mm/√週)
養生終了時の電気抵抗(kΩ)
3.5mm/√週
6.1kΩ
108
物の強度や耐久性を推定することができた.これにより任意の位置で計測を行うことによ り,計測場所ごとの施工環境や構造物の形状等を反映した強度や劣化に対する抵抗性の推 定をすることができる.また,電気抵抗を計測することで,適切な養生を行った記録を残す ことも可能と考えられる.