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4 電気抵抗の影響因子

4.2 挙動メカニズムの解明

4.2.2 実験結果

(1)電気抵抗の測定結果

電気抵抗の測定結果を図-4.4 に示す.各セメントペーストの電気抵抗は,接水から減少 し,接水から約2時間程度で最小値を示した.その後,電気抵抗は材齢の進行に伴って増加 した.この傾向は,既往の研究1.2の電気伝導率と同様の傾向である.

図-4.4 電気抵抗の測定結果

(2)水和発熱と電気抵抗の関係

図-4.5 に各セメントペーストの水和発熱をコンダクションカロリーメーターで測定した 結果を示す.BFS 置換率の変化により発熱速度に差異が認められた.発熱速度の結果は一 般的に最初の反応である第1段階(図中①),誘導期の第2段階(図中②),加速期の第3段 階(図中③),減速期の第4段階(図中④)に分けることができる.

図-4.6~8に電気抵抗と発熱速度の関係を示す.図中の矢印が電気抵抗と発熱速度の最小 値を示している.発熱速度曲線の形状と電気抵抗の形状に相関が認められ,電気抵抗および 発熱速度の最小値となる接水からの時間は,若干の時間的なずれがあるが,概ね一致してい る.したがって,電気抵抗は水和反応と関係があると考えられる.

発熱速度の最初の反応である第1段階は,C3SやSO42-の溶解反応5)である.接水直後の 電気抵抗は,発熱速度と同様に減少する傾向を示した.したがって,電気抵抗の減少はC3S 等からイオンが水に溶解することによって電気が流れやすい状況となることに起因してい ると考えられる.

発熱速度の誘導期である第 2段階は,反応速度が極めて小さくなり,液相中のCa(OH)2

濃度がゆっくりと上昇する.誘導期の終わりには水和物と液相の平衡が成立しなくなり,急 速な反応が再開させる5).電気抵抗が最小値を示す材齢と,発熱速度が最小値を示す時間は,

0 2 4 6 8 10

0 2 4 6

電気抵抗値(kΩ)

材齢(時間) N

B45 B70

35

図-4.5 発熱速度の測定結果

図-4.6 電気抵抗と発熱速度の経時変化(N)

図-4.7 電気抵抗と発熱速度の経時変化(B45)

0 5 10 15 20 25

0 1 2 3 4 5

0 1 2 3 4 5 6

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間) N抵抗 N発熱速度

発熱速度(J/g・時)

0 5 10 15 20 25

0 1 2 3 4 5

0 1 2 3 4 5 6

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間)

B45抵抗 B45発熱速度

発熱速度(J/g・時)

0 5 10 15 20 25 30

0 10 20 30

発熱速度(J/g・時)

材齢(時間)

N B45 B70

① ②

36

図-4.8 電気抵抗と発熱速度の経時変化(B70)

ほぼ同じである.したがって,電気抵抗の最小値を示す時間は,発熱速度の誘導期を捉えて いると考えられる.

加速期の第 3段階は,第2段階の終わりに再開された水和反応が急速に進行する時期で あり,生成する水和物は安定なC-S-Hである 5).加速期の電気抵抗は,発熱速度の増加と 共に大きくなっており,再開されて急速に進行する水和反応に影響を受けていると考えら れる.電気抵抗が増加する原因としては,水和反応によりセメントペースト内の水が消費さ れ,電気が流れにくい状況になったことが挙げられる.

(3)Ca2+イオン濃度が電気抵抗に及ぼす影響

コンダクションカロリーメーターの試験結果より,接水から1~2時間程度の若材齢で電 気抵抗が減少する傾向の原因は,C3S 等からCa2+等の水への溶解反応を捉えていると考え られた.したがって,セメントペースト中の液相を遠心分離後にろ過したものに対し,イオ ンクロマトグラフィーを実施しCa2+濃度とK+濃度について検討した.

図-4.9にCa2+濃度の接水からの経時変化を示す.BFSの添加によらず Ca2+濃度は接水 後に増加し,減少する傾向を示した.また,Ca2+濃度が最大となる時間は,BFS の置換率 が大きくなるほど早くなった.BFSは接水後に液相中のCa2+,SO42-を固定し,石灰および 石こう飽水比を低下し,間隙質の水和を促進する.そのため,BFSの添加はC3SからのCa2+

の溶解を活発にし,置換率の大きいセメントペーストほど Ca2+濃度のピーク時間が早くな ったと考えられる.Nは,C3Sが接水後すぐにCa2+を溶解し,C-S-H と平衡となる.C-S-HはC3S表面に析出して層をつくるため,C3Sの溶解を妨げ,反応速度を小さくする.そ のためNは,B45やB70と比較してCa2+のピークが遅れたものと考えられる.

図-4.10~12 にセメントペーストの電気抵抗と Ca2+濃度の関係を示す.使用したセメン トの種類によらず電気抵抗が最小値を示す時間と Ca2+濃度が最大となる時間はほぼ一致し ている.一方,電気抵抗とK+濃度との相関についても確認をしたが,良い相関は得られな かった.

0 5 10 15 20 25

0 2 4 6 8 10

0 1 2 3 4 5 6

電気抵抗値(kΩ)

材齢(時間)

B70抵抗 B70発熱速度

発熱速度(J/g・時)

37

図-4.9 Ca2+濃度の経時変化

図-4.10 電気抵抗とCa2+濃度の経時変化(N)

図-4.11 電気抵抗とCa2+濃度の経時変化(B45)

0 200 400 600 800 1000

0 1 2 3 4

Ca2+ 濃度(ppm)

材齢(時間)

N B45 B70

0 200 400 600 800 1000

0 2 4 6 8 10

0 1 2 3 4

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間)

N電気抵抗 N Ca濃度

Ca2+濃度(ppm)

0 200 400 600 800 1000

0 2 4 6 8 10

0 1 2 3 4

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間)

B45電気抵抗 B45 Ca濃度

Ca2+濃度(ppm)

38

図-4.12 電気抵抗とCa2+濃度の経時変化(B70)

接水から2~3時間程度の若材齢で電気抵抗が最小値を示す原因として,セメントや混和 材の液相へのイオンの溶出と固定が影響していると考えられ,特に電気抵抗の低下は Ca2+

のイオンの溶出による影響が大きいと考えられる.以上から,接水から約 2 時間程度で確 認される電気抵抗の低下は,C3S等からのイオンの溶解反応により液相中のCa2+等のイオ ン濃度が高くなることで電気が流れやすくなることに起因すると考えられる6

(4)水酸化カルシウム量が電気抵抗に及ぼす影響

コンダクションカロリーメーターおよび強熱減量試験の試験結果より,接水から約 2 時 間以降の電気抵抗の増加は,水和反応による水の消費により電気が流れにくくなることに 起因していると考えられた.そこでセメントの主な水和生成物である水酸化カルシウム

[CH]と電気抵抗にも相関があると考え,セメントペーストの示差熱重量試験を行い,水 酸化カルシウム[CH]の生成量と電気抵抗の比較をした.

図-4.13に各種セメントの示差熱重量試験から算出したCH量を示す.試験は接水から1 時間毎に水和反応を停止した試料を用いて行った.しかし,0~2時間の若材齢の示差熱重 量試験結果においてDTAより明確な脱水反応を確認することができなかった.原因として 若材齢の試料では CH の生成量が少ないことが原因と考えられる.本実験の範囲内で接水 から6時間までのCH生成量においてNとB45に明確な差異は確認できなかった.B70に 関しては,OPCの量が少ないことによりCa2+等のイオン量が少ないのでCHの生成量が少 ないことが考えられる.

図-4.14~16に電気抵抗と CH生成量の関係を示す.接水から約2 時間以降の電気抵抗 は,CHの生成量が増加するに伴って大きくなる.また,図-4.17にCH生成量と電気抵抗 の関係を示す.電気抵抗とCH量の間に線形関係が見て取れ,相関も良い結果が得られた.

結合水率と電気抵抗の関係も考慮すると電気抵抗の接水から約2時間以降の増加は,CHに 代表される水和生成物の生成に影響を受ける.したがって,接水から約 2 時間以降の電気 抵抗の増加は,水和反応による水の消費によってコンクリートに電気が流れにくくなるこ

0 200 400 600 800 1000

0 2 4 6 8 10

0 1 2 3 4

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間) B70電気抵抗 B70 Ca濃度

Ca2+濃度(ppm)

39

図-4.13 CH量の測定結果

図-4.14 電気抵抗とCH量の経時変化(N)

図-4.15 電気抵抗とCH量の経時変化(B45)

0.00 0.06 0.12 0.18 0.24

0 2 4 6 8

0 2 4 6

電気抵抗(kΩ)

材齢(時) N 電気抵抗

N CH量

CH量(%)

0.00 0.06 0.12 0.18 0.24

0 2 4 6 8

0 2 4 6

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間) B45 電気抵抗 B45 CH量

CH量(%)

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

0 2 4 6

CH量(%)

材齢(時間)

N B45 B70

40

図-4.16 電気抵抗とCH量の経時変化(B70)

図-4.17 電気抵抗とCH量の関係

とに起因していると考えられる.

(5)結合水率が電気抵抗に及ぼす影響

コンダクションカロリーメーターの試験結果より接水から約 2 時間以降の電気抵抗の増 加傾向は,水和反応による水の消費により電気が流れにくくなることに起因していると考 えられた.したがって,セメントペーストの強熱減量試験を行い,結合水率と電気抵抗の関 係を確認した.図-4.18に強熱減量試験により算出した結合水率を示す.各材齢の結合水率

は,N,B45,B70の順に小さくなっている.これは,BFSの置換率が影響していると考え

られ,BFS の置換率が大きくなるほど結合水率が小さくなっている.この傾向は既往の研 究6と同様である.また,各セメントの接水から2時間以降の結合水率は,時間の経過と

共に大きくなった.強熱減量試験結果から得られる電気抵抗と結合水率の経時変化を図-4.19~21に示す.図より接水から約2時間以降の電気抵抗と結合水率は,増加する傾向を

0.00 0.06 0.12 0.18 0.24

0 2 4 6 8

0 2 4 6

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間)

B70 電気抵抗 B70 CH量

CH量(%)

R² = 0.9857 R² = 0.9072

R² = 0.9307

0 1 2 3 4 5 6 7

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25

電気抵抗(kΩ)

CH量(%)

N B45 B70

41

図-4.18 結合水率の測定結果

図-4.19 電気抵抗と結合水率の経時変化(N)

図-4.20 電気抵抗と結合水率の経時変化(B45)

0 1 2 3 4

1 2 3 4 5 6

結合水率(%)

材齢(時間) N

B45 B70

0 1 2 3 4 5

0 2 4 6 8 10

1 2 3 4 5 6

結合水率(%)

電気抵抗(kΩ)

材齢(時間) N電気抵抗

N結合水率

0 1 2 3 4 5

0 2 4 6 8 10

1 2 3 4 5 6

結合水率(%)

電気抵抗値(kΩ)

材齢(時間) B45電気抵抗

B45結合水率

42

図-4.21 電気抵抗と結合水率の測定結果(B70)

示した.

図-4.22に接水後2時間以降の電気抵抗と結合水率の関係を示す.電気抵抗と結合水率は BFS 置換率ごとに異なる関係を示したものの直線関係を示し,高い相関がある.したがっ て,接水から約2時間以降の電気抵抗の増加は,水和反応に影響を受けると考えられ,水和 反応による水の消費により電気抵抗が大きくなると考えられる7,8,9)

BFS置換率が異なるセメントペーストの電気抵抗とCHおよび結合水率の関係は,共に 相関があるものの置換率で異なる傾向を示した.この原因については,5章で検討する.

図-4.22 電気抵抗と結合水率の関係

図-3.10では材齢28日までの長期間において計測される電気抵抗と結合水率の間で対数 近似曲線での相関が認められた.図-4.17および図-4.22ではCH量および結合水率と電気 抵抗の間に直線関係が確認された理由として,接水から2~6時間の短時間だったことが挙 げられる.この結果から電気抵抗は水和の進行を評価しており,電気抵抗の測定結果から結

R² = 0.9769 R² = 0.9349

R² = 0.9621

0 1 2 3 4 5 6 7

0 1 2 3 4

電気抵抗(kΩ)

結合水率(%)

N B45 B70 0 1 2 3 4 5

0 2 4 6 8 10

1 2 3 4 5 6

結合水率(%)

電気抵抗(kΩ)

材齢(時) B70電気抵抗

B70結合水率