D‑ABDUCTORログデータ蓄積
Alternative 2 Alternative m
4.10 評価実験 2 合意形成支援への適用
表4.12: 評価アンケートの集計結果(表中の数字は人数)
レベル 評価項目 不満 やや不満 普通 やや満足 満足 機能レベル (1)重要度修正時の感度分析機能 0 0 5 4 0
(2)合意形成プロセスでの 0 1 5 2 1 トレードオフ分析機能
思考レベル (3)自分に対する他者の具体的な 0 4 2 1 2 要求内容の把握
(4)自分の要求の他者への反映度 0 4 2 3 0
(5)重要度の修正判断の容易さ 0 1 2 3 3
(6)グループにおける自分の 0 1 1 4 2 ポジションの把握
(7)多数決/平均値法に 0 5 0 3 4 比べての満足度
(8)総合評価 0 2 5 4 1
2. 合意形成支援機能の反復使用により,当初のばらついた参加者同士の視点が収束に向 かい,デルファイ法の効果的な支援が行なえる.
4.10.3
考察
まず,合意形成支援機能の使用の有無による違いであるが,3章の実験結果と比べた結果 からは,表4.11に示したように合意形成支援機能を使用した場合のほうが,合意に達する までの合意判断回数および所要時間ともに縮まる傾向が見られた.そこで,合意プロセス における収束度cを以下のように定義して,5つのグループにおける収束度を比較した.こ こで評価構造は5つのグループで同一としたため,グループ全体における比較が可能であ るが,代替案はそれぞれのグループで異なるので,グループ単位での収束度として求めた.
まず,あるグループの参加者xとyの非類似度dxy(x6=y;1xp;1yp;pはグル ープの構成人数)は,式(4.12)で得られる.
d
xy
= u
u
t n
X
k=1 (w
xk 0w
y k )
2
(4.12)
ここで,wxkは参加者xの評価構造の最下位の評価項目k(1k n)の重要度である.
つぎに合意形成プロセスに入る直前のグループにおける非類似度の平均ds (式(4.13)),合 意最終段階のグループにおける非類似度の平均de
(式(4.14)) および表4.11における合意判 断回数nを用いて合意プロセスにおける収束度cを式(4.15)により定義する.
d
s
= p
X
x=1 p
X
y =1 d
s
xy
=p(p01) (4.13)
d
e
= p
X
x=1 p
X
y =1 d
e
xy
=p(p01) (4.14)
c = (
d
s 0
d
e
)=n (4.15)
ここで,dsxy,dexyは,それぞれ合意形成プロセスに入る直前のグループの非類似度,合 意最終段階におけるグループの非類似度である.したがって,式(4.15)は,合意判断一回 当りの非類似度の変化の平均勾配を表しており,合意形成プロセスにおける各参加者の視 点情報の収束度を示す一つの指標としてとらえることができる.
表4.13: 各グループの収束度の比較
グループA グループB グループC グループD グループE
d
s
0.332 0.289 0.258 0.409 0.433
d
e
0.197 0.142 0.160 0.118 0.316
n 7 9 3 6 4
c 0.019 0.016 0.033 0.048 0.029
A,B平均c 0.018 C〜E平均c 0.037
表4.13に各グループの収束度cの算出結果を示す.表4.13からは,合意形成支援機能を
また各参加者の評価項目間の重要度の変遷を調べたところ,妥協したくない評価項目の ウエイトは,あまり変化がないことがわかった.したがって,上記の収束度の違いを考慮 すると,トレ−ドオフ分析支援機能を用いることで,各参加者は妥協できる箇所の重要度 を他者からの要求に沿う方向へ効率良く変更できたものと推察される.
つぎにアンケート結果からは,ほぼ平均的な評価が得られた.ただし,従来法と比べた 場合の合意結果に対する各参加者の満足度については,アンケート結果からは意見が分か れた(表4.12の評価項目(7)).すなわち,到達した合意結果が本人の意思に沿う場合は,満 足感が高められたが,反面,合意結果が本人の意思と反する場合は,やはり不満が残る傾 向が見られた.
この理由は,合意度や妥協度のほかグループにおける自分の位置が数値情報として明示 されたためと考えられる.あるいは従来の会議形式に見られるようにこれらの情報が不明 瞭なまま意思決定が行われる場合に比べ,合意形成プロセスが明確化されたためと推察さ れる.今回の実験結果の範囲では,説得した側の満足度を高める効果を期待できることが わかった.一方,説得された側については,満足度を高めることはできなかった.このひ とつの理由として,計算機システムを用いて意思決定を支援する場合に,システムからの 提示情報に依存して合意形成の判断を行なうとシステムによって合意させられてしまうと いう意識が生じることが被験者からのコメントとして得られた.したがって,システムか らの提示情報はあくまで合意形成判断の参考情報として捉え,システムの利用者が合意形 成の主体であるという姿勢を保つことが意思決定支援システムを利用する上で重要である と考えられる.
なお,お互いの要求を明らかにしたうえで,自己の要求を明示的に主張するような意思 決定法は日本的文化には馴染まないとする意見もある[石井94].しかし,情報を公平に共 有化し,議論を明示的に行う方が円滑な問題解決につながるという認識も広まりつつある.
これは,参加者それぞれの立場が明らかにされ,また自己主張の根拠を示すことができる 代わりに,必要以上に自己主張を通しづらくなって互譲の精神が高まるため,合意形成が 促進されるとしている[清水96].
4.11