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協調設計支援への応用に関する考察

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Alternative 2 Alternative m

5.8 協調設計支援への応用に関する考察

提案した合意形成支援方法は,前述の例題に基づく実験からも示されたように異なる立 場の2者間の代替案選択問題に適用可能であるが,さらにユーザと設計者あるいはユーザ と開発者の間の協調設計支援にも応用が可能と考えられる.

製品設計においては品質の設定が重要な検討事項であり,この品質は,ユーザのニーズ をどの程度総合的に製品に反映させてユーザが満足しているかを表す指標とされている

[情報処理89].また品質管理方法論では,開発の企画設計段階から「品質を作り込む」考 え方が重要視されている[赤尾90a][Gause93].したがって品質を重視した製品開発を行う ためにはユーザと設計者による協調作業に基づく設計が必須となり,両者間の合意形成プ ロセスを避けて通ることはできない.

しかしながら,ユーザと設計者というまったく立場の異なる者同士の協調設計を考えた 場合,知識や専門用語に対する理解の相違などによるコミニュケーション・ギャップが生

じやすく,生産性の効率がよいとはいえない.

本章の提案方法で用いたQDAの思想は,ユーザの要求を設計へ反映させることを本来 の目的とすることから,上述の問題点の改善とともにユーザと設計者が対等あるいはユー ザのニーズを積極的に設計に反映させた協調設計が可能になるものと期待できる.

具体的には,次のような場面へ適用が考えられる.

ユーザのニーズと開発者のシーズの意見調整.

ユーザの「魅力的」要求項目と開発者の「技術的/必然的」要求項目の重要度に関す るバランス調整.

協調設計支援において重要度に基づく仕様決定の方法を取り入れた研究としては,設計 問題をあらかじめ与えられた複数の部品の代替案選択の組合せ問題としてとらえる方法

[斉藤97]や,逆に代替案を設定せずにIF-THEN形式のプロダクション・ルールを用いて 設計パラメータを定めていく方法[伊藤97]などが報告されている.しかし,これらのシス テムは,基本的に設計者がシステムを利用してすべての決定を行うことを前提に考えられ ており,ユーザ参画型のシステムではない.

したがって,本章で開発したシステムを応用して,ユーザ参画型の協調設計支援システ ムとして個々の設計問題への適用可能性を検証していく研究の意義は大きい.

なお,あらかじめ代替案を設定せず,得られた重要度に基づいて設計パラメータを設計条 件ルール等に照合しながら決めていくような問題に本システムを適用する場合は,3.2節で 提案したグループ意思決定手順において代替案の抽出および代替案の重要度算出のステッ プを省略して対応する.

5.9

おわりに

本章では,立場あるいは知識の違いにより異なる評価構造を持つ参加者間の合意形成支 援方法を提案した.まず,それぞれの参加者の要求を重要度ベクトルとして定量化し,そ れらをお互いが解釈可能な価値判断基準にそれぞれ変換して提示し合うために関連度行列 を利用した重要度ベクトルの双方向変換法について検討した.つぎにこの双方向変換を利 用した合意形成支援方法を考案し,その有用性を確かめるためにシステムへの実装を行い,

‐ を開発した.さらに例題に基づく評価実験および考察を行った.

実験結果からは,参加者は本システム上で互いの視点情報を共有し合うことができ,し かも意見の相違点を各自の価値基準のうえで把握することができた.実験例からは,定性 的な価値判断基準における評価と定量的な価値判断基準における評価という異なる次元で の評価を比較することができた.

またこの比較をもとに合意形成を支援するため,参加者それぞれの価値判断基準におけ る重要度ベクトルの相違を距離空間上で最小にする方針をとった.実現したシステムの機 能は,合意への収束を図るうえで重要となる参加者間の交渉プロセスを支援する協調イン タフェースとしての役割を果たせることがわかった.

さらにグループ協調作業における問題点を改善する観点からみれば,立場あるいは知識 が異なるために言葉によるコミュニケーションでは誤解が生じやすい,あるいは協調作業 における生産性などの効率が良くないといった問題点を改善できる可能性があると考えら れる.また本システムを利用して視覚的な評価シミュレーションを繰り返し行うことによっ て,お互いの意見に触発されて参加者自身が持つ潜在的要求を新たに発見したり,全体と しての要求内容の本質を見極めることも支援できるものと考える.この効果は,とくに協 調設計問題への適用を考えた場合に期待できるものであり,しかも従来とは違ったユーザ 参画型の協調設計支援が可能になるものと思われる.

今後の課題として,上述の予想効果を確認するためにシステムの改良と評価を実施する 必要がある.今回の実験ではカラーレーザープリンタの導入を例題として実用最小限と考 えられる関連度表を用いたが,さらに大規模な関連度表を必要とする例題に基づく評価や,

関連度作成方法の改良および逆変換行列の使い分けなどに関する検討を加えて行かなけれ ばならない.この意味においては,異なる評価構造を持つ参加者間の合意形成支援に対す るANPの適用についても,関連度の設定方法の改良および算出重要度の妥当性の分析など について今後さらに検討を加え,合意形成支援への適用可能性を検証していく必要がある.

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