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評価実験

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第 3 章 円滑な会話を実現する遠隔会議システム

3.5 評価実験

図 3.3 に示すようなアナログ音声・映像加工処理装置を用いた DV 遠隔会議システム構 成(以後、構成 A と記述)、我々の提案する図 3.5 に示すような DV リアルタイム処理機 構を用いた DV 遠隔会議システム構成(以後、構成 B と記述)、図 3.5 の構成で中間ノー ド PC を用いず DVTS 送信 PC から DVTS 受信 PC への直通伝送を行う 2 地点間 DV 遠隔会議 システム構成(以後、構成 C と記述)の 3 つのシステム構成を対象にして、比較性能評 価を行う。評価項目は、伝送する音声・映像情報の品質劣化度の評価、伝送遅延時間の 測定評価、妨害品質尺度による主観的評価である。今回の比較性能評価に用いた主な機 器の諸元を表 3.1 に示す。

表 3.1 主な機器の諸元 機器名称

DVTS送信PC

DVTS受信PC

アナログAV 編集装置 A/D、D/A変換 中間ノードPC

DVTS受信PC (中間ノード内)

DVTS送信PC (中間ノード内)

諸元

DVTS version 1.0b OS : FreeBSD 4.4 CPU : Pentium-3 1GHz Memory : 256MB

DVTS for WinXP OS : Windows XP

CPU : Pentium-M 1.6GHz Memory : 512MB

FUTEC MXProDV

(アナログAVポート使用) Canopus ADVC-100

OS : FreeBSD 4.4 CPU : Pentium-3 1GHz Memory : 256MB

DVTS version 1.0b OS : FreeBSD 4.4 CPU : Pentium-3 1GHz Memory : 256MB

DVTS for WinXP OS : Windows XP

CPU : Pentium-M 1.6GHz Memory : 512MB

3.5.1 品質劣化度の評価

品質劣化度の評価では、まず構成 A、B、C それぞれの音声・映像信号測定ポイント X1 に特定のテストパターン信号を入力し、音声・映像信号測定ポイント Y3 から出力信号を 取り出す。そして、入力されたテストパターン信号と出力信号をオシロスコープ表示画 面で比較し、出力表示波形の差異から評価を行った。なお、本評価でのインターネット 環境は、スイッチングハブ1台のみの構成で実施している。図 3.9 は、テストパターン 信号として NTSC ジェネレータで生成された 100 RE マルチバースト信号のポイント X1 で の入力波形と、構成 A、B、C それぞれのポイント Y3 での出力波形を示している。この図 から、入力波形に対する構成 B での出力波形の歪の度合いは、構成 A での出力波形の歪 の度合いと比較して小さくなっており、構成 C の出力波形とほぼ一致していることが分 かる。このため、本研究で提案する DV リアルタイム処理機構を用いた DV 遠隔会議シス テム構成は、アナログ音声・映像加工処理装置を用いた場合と比較して品質劣化を低く 抑えることができ、かつ DV リアルタイム処理機構での品質劣化はないといえる。

構成A(アナログ音声・

映像編集加工処理装置を使用)

構成B(DVリアルタイム処理機構を使用) 構成C(2地点DV直通伝送)

入力波形:100 RE マルチバースト信号

図 3.9 入力波形とポイント Y3 での出力波形の比較

3.5.2 伝送遅延時間の測定評価

伝送遅延時間の測定評価では、まず NTSC ジェネレータにおいて、ある特定のテストパ ターン画像から別のテストパターン画像に切り替える一連の動作を行い、この NTSC ジェ ネレータからの出力信号を、構成 A、B、C それぞれの音声・映像信号測定ポイント X1 に 入力する。そして、音声・映像信号測定ポイント Y3 からの出力信号と、ポイント X1 の 入力信号(NTSC ジェネレータからの出力信号)をオシロスコープ表示画面にて比較し、

両者の信号波形の時間軸方向のずれの大きさから、2 地点間の伝送遅延時間の測定を行っ た。図 3.10 に、ポイント X1 からポイント Y3 までの被測定系区間での片方向伝送遅延時 間の測定方法を示す。本測定評価では、オシロスコープ上に表示される信号波形が明ら かに異なる 2 種類のテストパターン信号が効果的であるため、今回は画面すべてが赤色 のテストパターン信号と画面すべてが青色のテストパターン信号を用いた。なお、この 測定方法では映像信号の伝送遅延時間を測定することになっているが、DV での音声情報 と映像情報は同期しているため、音声信号と映像信号の伝送遅延時間は等しく、今回の 測定結果は DV ストリーミング情報の伝送遅延時間といえる。また、本測定評価でのイン ターネット環境は、スイッチングハブ1台のみの構成で実施しているため、今回の測定 結果にはネットワーク伝送遅延時間は含まれない。

青画面 赤画面 手動で切替え NTSCジェネレータ

オシロスコープ

伝送遅延時間 被測定系

青画面 赤画面 遅延時間経過後変化

モニタ装置

青画面の波形 赤画面の波形 X1

Y3

図 3.10 片方向伝送遅延時間の測定方法

表 3.2 片方向伝送遅延時間の測定結果 遅 延 時 間

(平均値) (標準偏差) 447.8 ms 4.5 ms 191.0 ms 2.5 ms 156.8 ms 1.9 ms システム構成

アナログ音声・映像編集加工 処理装置を使用(構成A)

DVリアルタイム処理機構 を使用(構成B)

2地点DV直通伝送(構成C)

表 3.2 に、各システム構成での音声・映像信号測定ポイント X1 から Y3 までの片方向 の伝送遅延時間を、10 回ずつ測定した平均値と標準偏差を示す。この測定結果から、DV リアルタイム処理機構を導入した構成 B の伝送遅延時間は、構成 A の場合と比較して大 幅に短縮されていることが分かる。また、構成 B と構成 C の違いは基本的に中間ノード PC の有無のみであることから、DV リアルタイム処理機構での加工処理時間は約 34ms と 推定できる。同機構のプログラムでは、DV の音声情報が 1 フレーム単位で処理を行う必 要から 1 フレーム分のバッファを利用しているので、加工処理時間のうち 33ms はバッフ ァリング時間と考えられ、プログラムの改良による短縮可能時間は最大で 1ms 程度と推 定できる。

次に、この測定結果から推定される、DV ストリーミング情報の往復伝送遅延時間の考 察を行う。ネットワーク伝送遅延時間を考慮しない場合の往復伝送遅延時間は、従来の アナログ音声・映像加工処理装置を使用した構成Aでは 895.6ms になるのに対し、本研 究で提案する DV リアルタイム処理機構を使用した構成Bは 382.0ms となっている。これ は、DV リアルタイム処理機構の導入だけで、往復伝送遅延時間が約 57%短縮できている ことを示している。

ここで、DV リアルタイム処理機構を利用した多地点遠隔会議での、片方向伝送遅延時 間の理論限界値について考察する。インターネット上の伝送を考慮しない場合、基本的 にはカメラ等からのアナログ音声・映像信号から 1 フレーム分の DV 情報に変換を行う A/D 変換装置内、DV リアルタイム処理機構における DV 音声情報ミキシング用、そして D/A 変 換装置で 1 フレーム分の DV 情報を受信してアナログ音声・映像に変換する D/A 変換装置 内で、それぞれ 1 フレーム分バッファリングが必要であり、理論最小値は計 90ms となる。

しかし、インターネット上の伝送を含めて考えた場合、ネットワーク伝送遅延時間のほ かに、DVTS 送信 PC での IP パケットの送信バッファと、DVTS 受信 PC での受信バッファ が現在必要であり、そのバッファ容量は PC の処理能力とインターネット回線の伝送能力 に大きく依存する。インターネットの特性を考えると、これらのバッファ容量を0にす るのは困難であるが、それでもこれらのバッファリング時間の理論最小値はほぼ0にな

る可能性はある。よって、DV リアルタイム処理機構を利用した多地点遠隔会議での片方 向伝送遅延時間の理論最小値は、90ms と物理的に離れている地点間の信号伝送に要する 時間の合計値となり、これは片方向のネットワーク伝送遅延時間が 110ms 以内であれば 多地点遠隔会議において円滑な会話が実現できる可能性があることを示している。

更に、現在の符号化技術や情報伝送方式の制約を考えない場合の理論限界値について も考察する。本質的な映像情報の流れは、カメラの CCD で受光する光信号をデジタル電 気信号に変換し、その電気信号をネットワーク上に伝送し、適切な情報加工処理を行っ た後、モニタ画面に再度光信号として表示する、というステップになる。たとえば、カ メラの CCD で変換したデジタル電気信号を変換・圧縮することなく直接ネットワーク上 に伝送するシステムが開発できれば、大幅な処理遅延時間短縮につながる。また、ネッ トワーク部分も、インターネットのようなパケット転送方式ではなく、高速な同期通信 ネットワークシステムが開発できれば、情報の送受信機能部分において 1 フレーム分等 の巨大なバッファを用意する必要がなくなる。途中の情報加工処理についてはその加工 処理内容によって大きさは変動するものの、ある程度のバッファが必要になると考える。

このため、本質的にかかってしまう処理時間は、カメラの CCD で受光する光信号からデ ジタル電気信号に変換処理時間、同信号の送受信処理時間、ネットワーク上を流れる信 号の伝搬遅延時間、モニタ画面への再表示処理時間、そして途中の情報加工処理時間の 5 項目になる。このうち、前者 4 項目は 5 番目の情報加工処理時間と比較すると極端に小 さくほぼ0と考えてよい。以上から、本質的にかかってしまう処理時間は、途中の情報 加工処理時間に等しいと言え、たとえば 1 フレーム分の複数の映像情報を一括で加工処 理するような場合はこの 1 フレーム分の時間が理論限界値となる。

3.5.3 妨害品質尺度による主観的評価

文献[4]の評価手法を参考に、構成 A(アナログ音声・映像加工処理装置を用いた DV 遠 隔会議システム構成)、構成 B(DV リアルタイム処理機構を用いた DV 遠隔会議システム 構成)、構成 C(2 地点間 DV 遠隔会議システム構成)という 3 種類の遠隔会議模擬環境そ れぞれに対し、2 つの会場(会場1と会場3)に被験者 1 名ずつ配置し、自由会話を行っ てもらう形態での主観的評価を実施した。

被験者は、NICT の事務系職員 20 名で、男性 12 名女性 8 名、遠隔会議の経験者 10 名未 経験者 10 名という内訳である。

評価手法は、会場1および3にいる被験者 1 名ずつによる 1 分間の自由会話後に、表 3.3 に示す 5 段階妨害尺度によるオピニオン評点評価を行ってもらう実験を、評価基準と なる往復伝送遅延時間がゼロの場合と、評価対象の遠隔会議システム構成の場合を交互 に行った。

表 3.4 は、評価した 5 種類の遠隔会議システム構成の内訳と評価結果を示している。

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