第 4 章 実空間共有を実現する遠隔会議システム
4.4 操作性に関する評価
4.4.5 デバイス操作時間の評価
ここでは入力デバイスの操作時間に関する評価を行う。評価解析用記録テープから、
試験官が目標地点となる英数字を読上げてから、被験者の遠隔操作により中央エリア内 に該当する英数字が収まるまでの所要時間を、記録されているフレームカウンターから 算出した。今回、DVCAM による記録を行ったため、1 フレームは 1/30 秒に相当すること になる。
図 4.11 は、全被験者のデバイス操作時間に関する測定結果のうち、「3→6」および
「5→2」という代理人ロボット頭部の上下方向旋回の場合を、マウス/ジョイスティ ックによる遠隔操作システム(図中では「マウス」と「ジョイスティック」と表記)、遠 隔カメラ映像の遅延なし/あり(図中では「遅延なし」と「遅延あり」と表記)の 4 通 りの組合せパターンに分類して、プロットしたグラフである。このグラフのみでは、デ バイス操作時間に関して2種類の遠隔操作システムで差があるかどうかおよび遠隔カメ ラ映像の遅延の有無で差があるかを判定することはできない。よって、この測定結果に 対して、分散分析を実施し差があるかどうかの判定を行う。本評価実験では、同じ被験 者が、2つの要因の組合せ環境下それぞれにおいて実験を行った観測値を対象とする、
「2つとも対応のあるニ要因配置」形態の実験観測値に相当するため、2 つとも対応のあ る二要因分散分析[34][35]を実施して、分散分析表を作成する。そして、この分散分析 表から、2 つの要因間の相関の有無と、一要因内にあるいくつかの水準のうちどれかに差 があるかどうかを判定することができる。なお、本評価実験では、遠隔操作システムと いう要因内にはマウスとジョイスティックという 2 つの水準、遠隔カメラ映像の遅延と いう要因内には遅延なしと遅延ありという 2 つの水準、で構成されているため、分散分 析表から直接、2種類の遠隔操作システムで差があるかどうかおよび遠隔カメラ映像の 遅延の有無で差があるかを判定することが可能である。
表 4.3 に、棄却率 5%(判定結果の信頼度 95%に相当)とした場合の、図 4.11 にプロ ットされているデバイス操作時間の測定結果に関する分散分析表を示す。表中の「F境 界値」はF分布の 5%棄却域境界点の値であり、各変動要因の「分散比」の値がこの「F 境界値」より大きい場合は同要因内の水準間には差があると判定できる。以上より、デ バイス操作時間の測定結果に関しては、遠隔カメラ映像の遅延の有無では差がなく、2 種 類の遠隔操作システムには棄却域 5%で有意差があり、遠隔カメラ映像の遅延の有無と 2 種類の遠隔操作システムの間には交互作用はないと判定できる。この判定結果と図 4.11 のグラフから、ジョイスティックによる遠隔操作システムの方がデバイス操作に費やし ている時間が短いと判定できる。
次に、本評価実験中の 2 種類の遠隔操作システムの操作に関する熟練度の効果につい て評価を行う。図 4.12 は、実験前半である 1 回目の操作時と実験後半である 13 回目の
デバイス操作時間の変化を被験者毎にプロットしたグラフを、2 種類の遠隔操作システム に分類して示したものである。操作内容は共に「5→3」への代理人ロボット頭部の斜 め上方向旋回である。このグラフのみでは、本評価実験中の 2 種類の遠隔操作システム の操作に関する熟練度による差があるかどうかは判定できないため、やはり分散分析を 実施し差があるかどうかの判定を行う。
表 4.4 に、棄却率 5%(判定結果の信頼度 95%に相当)とした場合の、図 4.12 にプロ ットされているデバイス操作時間の測定結果に関する分散分析表を示す。この結果より、
操作経験数の違いつまり本評価実験中の遠隔操作システムの操作熟練度による差はなく、
2 種類の遠隔操作システムには棄却域 5%で有意差があり、操作経験数の違いと 2 種類の 遠隔操作システムの間には交互作用はないと判定できる。
0 2 4 6 8 10 12 14 16
目標地点への移動所要時間 [sec]
マウス ジョイスティック マウス ジョイスティック 遅延なし 遅延なし 遅延あり 遅延あり
被験者10名・2回の測定値の平均と標準偏差
<上下方向(3→6、5→2)の移動の場合>
図 4.11 デバイス操作時間に関する測定結果
表 4.3 デバイス操作時間の測定結果に関する分散分析表
変動要因 変動 自由度 分散 分散比 P-値 F 境界値 (棄却域5%) 遠隔操作システム 2.93E+01 1 2.93E+01 5.51E+00 2.16E-02 3.97 映像の遅延 3.80E+00 1 3.80E+00 7.14E-01 4.01E-01 3.97 交互作用 4.46E-01 1 4.46E-01 8.38E-02 7.73E-01 3.97 繰り返し誤差 4.04E+02 76 5.32E+00 - -
-合計 4.38E+02 79 - - -
-0 5 10 15 20 25
1回目 13回目
操作経験数
目標地点への移動所要時間 [sec]
0 5 10 15 20 25
1回目 13回目
操作経験数
目標地点への移動所要時間 [sec]
マウス 遠隔操作システム
ジョイスティック 遠隔操作システム
<斜上方向(5→3)の移動の場合>
図 4.12 操作経験数によるデバイス操作時間の変化
表 4.4 操作経験数とデバイス操作時間に関する分散分析表
変動要因 変動 自由度 分散 分散比 P-値 F 境界値 (棄却域5%) 遠隔操作システム 6.32E+01 1 6.32E+01 8.25E+00 6.78E-03 4.11 操作経験数 3.75E+00 1 3.75E+00 4.89E-01 4.89E-01 4.11 交互作用 6.08E+00 1 6.08E+00 7.95E-01 3.79E-01 4.11 繰り返し誤差 2.76E+02 36 7.66E+00 - -
-合計 3.49E+02 39 - - -