2 1歳以後(歩行開始後)
先天股脱は独歩の開始が遅れるが脱臼していても歩行は可能となる。しかし片側脱臼では跛行を呈する。
両側脱臼では骨盤が前傾し、腰椎の前彎が強くなり、いわゆるアヒル様歩行となる。
X 線にて確定診断が行われる。
Ⅲ治療
1 乳児期(3〜6か月)
リーメンビューゲル装具での整復が一般的である
(図 3)。外来で治療が行われる。
2 歩行開始後(1歳以後)
牽引による整復あるいは手術による整復が行われる。
入院で治療がおこなわれることが多い 3 整復後
先天股脱の治療は整復のみで終了するものではない。
整復はあくまで第一関門であり、いかに成人の股関節 になった時に、一生痛みのない正常形態にするかが目 標となる。整復後にも臼蓋形成不全が遺残すれば、
5 歳ごろに臼蓋の被覆を促進する骨盤骨切り術などの 補正手術を行なう。
健診時期別保護者への指導のポイント
早期診断以上の名医はないことを認識する。独歩開始後まで診断が遅延すると、整復にも難渋し、また整 復後にも臼蓋形成不全が残存し、補正手術が追加されることも多くなる。
1) 3〜4か月頃
この時期に診断されれば外来でのリーメンビューゲル装具治療が可能であり、この時期までに診断することは 重要である。危険因子として、女児、骨盤位出生、秋冬生まれ、家族歴がある。これらの危険因子を複数 持つ児は特に注意する。出生後の育児法が改善された現在、家族歴の持つ意味は大きくなっており、2等親 以内に股関節異常があれば、異常所見がなくてもそれだけで専門医を紹介する(所見に乏しい亜脱臼・臼 蓋形成不全を伴なっていることも多い)。
2) 1 歳以後
歩行開始後跛行が続いている場合の鑑別診断の第1選択肢は先天股脱である。すぐに専門医を紹介する。
図2
図3
13. 弱視
診断や治療の基本と最新の考え方
弱視の診断
医学的弱視は、原則として眼球に異常が無く、訓練・治療で視力が獲得できるものに診断名として用いられ る。正常な新生児の眼は構造上ほぼ完成しているが、出生直後の視力は光が判別できる程度である。出生か ら8歳までの感受性期間に「ピントがあった物を鮮明にみる」という視覚刺激をうけることで、生後3か月で0.1、
3歳で0.6〜1.0を目安に視力が発達するといわれている。
弱視の診断は視力・屈折・眼底など諸検査に基づいて行なう。原因の多くは、屈折異常(遠視・近視・乱視)
の程度が強い、屈折の左右差が大きい、斜視があるなどである。先天白内障や先天性眼瞼下垂のように、異 常に対する手術(白内障手術・眼瞼下垂手術)に加えて術後の弱視訓練を行うことで視力の向上を図るものも ある。
弱視≠ロービジョン
弱視という言葉は、弱視教育の対象となる視覚障害(ロービジョン)をさして使用されることもあるが、これは 種々の疾患により回復困難な視力障害を社会的・教育的に表現したものである。上記の医学的弱視とは異な る。
弱視が治る≠裸眼視力が良くなる
弱視眼では、「一番合うメガネ」をかけても、相応の視力が得られない。つまり矯正視力が不良である。弱視 の治療は、「メガネが要らない眼にすること」ではなく、「合うメガネをかければ、見える」ようにすることがゴールで ある。したがって、「弱視治療を受ければ裸眼視力が向上する」わけではない。弱視が治癒しても、屈折異常
(遠視・近視・乱視)が残っていれば、多くの場合、眼鏡は必要である。
治療用眼鏡の使い方・保険適応
弱視ではない人が日常生活をより快適に過ごすための眼鏡は、生活用眼鏡といい、かけ外しは本人の自由 である。弱視治療用眼鏡は、眼鏡そのものは生活用眼鏡と同様のフレーム・レンズで医師の処方箋に基づいて 眼鏡店で購入するが、常用することが必要である。入浴・プールなどの特殊な状況を除き、常に装用する。先天 白内障術後など屈折異常が高度の場合は、眼鏡ではなくコンタクトレンズが処方されることがあるが、やはり常 用する。
2006年から弱視治療用の眼鏡・コンタクトレンズは保険給付の対象となった。一定の条件下で療養費が支 給されている。
健眼遮蔽による弱視訓練
片眼弱視の場合、弱視眼の視力の発達を促す目的で、健眼を遮蔽する訓練を行うことがある。通常2〜6時 間/日の部分時間遮蔽が多いが、効果が薄い場合は終日遮蔽を行うこともある。遮蔽訓練期間中は、健眼の 弱視化や両眼視機能(両目を同時に使う機能、立体視など)の低下がみられないか、医師の診察・指導を受け る。アイパッチ・布パッチなどの遮蔽用品は市販されているが、医師の指示なしに遮蔽訓練を行うことは危険で ある。アイパッチ・布パッチは健眼を覆い隠すのに対し、点眼液(アトロピン)を使用して健眼をぼやけて見づらい 状態にする遮蔽方法もある。
健診時期の年齢の子どもの姿と保護者への指導
1) 3〜4か月頃
先天内斜視(または乳児内斜視)は乳児期から内斜視を認める。固視眼が左右どちらかのみの場合、非固 視眼が斜視弱視となる。
外見上、目が寄っているようにみえるが実際の斜視は無いものは、偽内斜視という。この時期の親からの訴え
では多くみられる。病気ではない。ただし、中には間欠性内斜視(時々内斜視になる)や、最初は偽内斜視で あったがのちに実際に斜視を発症した、などの事例も存在するので、訴えがあれば眼科受診を勧める。
頻度の少ないものとして、先天白内障・眼瞼下垂など0歳代から手術と弱視治療が必要になるものがある。
特に、片眼の先天白内障は早期発見が重要であるが、早期治療にもかかわらず健眼との視力差は大きく、入 院・手術・健眼遮蔽訓練・コンタクトレンズ装用、と保護者の負担は多大である。
2) 1歳6か月頃
調節性内斜視は1歳6か月頃、手元の物を見ようとしたときに目が寄ることで気づかれることが多い。遠視が あり、眼鏡を装用すると装用中は斜視が軽快する。「眼鏡を外すとやっぱり目が寄るから治らない」「眼鏡はか わいそうだから手術を受けさせたい」ではなく、眼鏡装用して良好な視覚刺激・眼位で過ごすことで視機能の 発達を促すことが大切である。低年齢にて眼鏡をかけることへの理解が、家族にも周囲にも求められる。
3) 3歳頃
集団生活において外見・眼鏡の問題が出てくることがある。斜視について友達に外見的に「おかしい」と言 われる、保護者が斜視・眼鏡を装用していることでいじめられたり集団に溶け込めない原因にならないか不安 に感じるなどである。医学的弱視は「ロービジョン」ではないので、通常は、集団生活において視力の面で特別 な配慮は必要としない。
予後良好な片眼弱視の場合、3歳児健診での発見から眼鏡・健眼遮蔽訓練などの治療を開始して就学前 までに治療を終了できる。必要な遮蔽時間・患児が降園後に家庭で過ごす時間は個人差があるため、園の理
解のもとに保育時間中もアイパッチなど使用して健眼遮蔽することがある。
自覚的検査が困難な乳児でも、検査が不完全な幼児でも、年齢に応じた検査・診察は可能である。弱視の 早期発見のためには、異常を感じたら積極的に眼科・小児眼科の受診を勧めたい。
診断や治療の基本と最新の考え方
弱視の診断
医学的弱視は、原則として眼球に異常が無く、訓練・治療で視力が獲得できるものに診断名として用いられ る。正常な新生児の眼は構造上ほぼ完成しているが、出生直後の視力は光が判別できる程度である。出生か ら8歳までの感受性期間に「ピントがあった物を鮮明にみる」という視覚刺激をうけることで、生後3か月で0.1、
3歳で0.6〜1.0を目安に視力が発達するといわれている。
弱視の診断は視力・屈折・眼底など諸検査に基づいて行なう。原因の多くは、屈折異常(遠視・近視・乱視)
の程度が強い、屈折の左右差が大きい、斜視があるなどである。先天白内障や先天性眼瞼下垂のように、異 常に対する手術(白内障手術・眼瞼下垂手術)に加えて術後の弱視訓練を行うことで視力の向上を図るものも ある。
弱視≠ロービジョン
弱視という言葉は、弱視教育の対象となる視覚障害(ロービジョン)をさして使用されることもあるが、これは 種々の疾患により回復困難な視力障害を社会的・教育的に表現したものである。上記の医学的弱視とは異な る。
弱視が治る≠裸眼視力が良くなる
弱視眼では、「一番合うメガネ」をかけても、相応の視力が得られない。つまり矯正視力が不良である。弱視 の治療は、「メガネが要らない眼にすること」ではなく、「合うメガネをかければ、見える」ようにすることがゴールで ある。したがって、「弱視治療を受ければ裸眼視力が向上する」わけではない。弱視が治癒しても、屈折異常
(遠視・近視・乱視)が残っていれば、多くの場合、眼鏡は必要である。
治療用眼鏡の使い方・保険適応
弱視ではない人が日常生活をより快適に過ごすための眼鏡は、生活用眼鏡といい、かけ外しは本人の自由 である。弱視治療用眼鏡は、眼鏡そのものは生活用眼鏡と同様のフレーム・レンズで医師の処方箋に基づいて 眼鏡店で購入するが、常用することが必要である。入浴・プールなどの特殊な状況を除き、常に装用する。先天 白内障術後など屈折異常が高度の場合は、眼鏡ではなくコンタクトレンズが処方されることがあるが、やはり常 用する。
2006年から弱視治療用の眼鏡・コンタクトレンズは保険給付の対象となった。一定の条件下で療養費が支 給されている。
健眼遮蔽による弱視訓練
片眼弱視の場合、弱視眼の視力の発達を促す目的で、健眼を遮蔽する訓練を行うことがある。通常2〜6時 間/日の部分時間遮蔽が多いが、効果が薄い場合は終日遮蔽を行うこともある。遮蔽訓練期間中は、健眼の 弱視化や両眼視機能(両目を同時に使う機能、立体視など)の低下がみられないか、医師の診察・指導を受け る。アイパッチ・布パッチなどの遮蔽用品は市販されているが、医師の指示なしに遮蔽訓練を行うことは危険で ある。アイパッチ・布パッチは健眼を覆い隠すのに対し、点眼液(アトロピン)を使用して健眼をぼやけて見づらい 状態にする遮蔽方法もある。
健診時期の年齢の子どもの姿と保護者への指導
1) 3〜4か月頃
先天内斜視(または乳児内斜視)は乳児期から内斜視を認める。固視眼が左右どちらかのみの場合、非固 視眼が斜視弱視となる。
外見上、目が寄っているようにみえるが実際の斜視は無いものは、偽内斜視という。この時期の親からの訴え
では多くみられる。病気ではない。ただし、中には間欠性内斜視(時々内斜視になる)や、最初は偽内斜視で あったがのちに実際に斜視を発症した、などの事例も存在するので、訴えがあれば眼科受診を勧める。
頻度の少ないものとして、先天白内障・眼瞼下垂など0歳代から手術と弱視治療が必要になるものがある。
特に、片眼の先天白内障は早期発見が重要であるが、早期治療にもかかわらず健眼との視力差は大きく、入 院・手術・健眼遮蔽訓練・コンタクトレンズ装用、と保護者の負担は多大である。
2) 1歳6か月頃
調節性内斜視は1歳6か月頃、手元の物を見ようとしたときに目が寄ることで気づかれることが多い。遠視が あり、眼鏡を装用すると装用中は斜視が軽快する。「眼鏡を外すとやっぱり目が寄るから治らない」「眼鏡はか わいそうだから手術を受けさせたい」ではなく、眼鏡装用して良好な視覚刺激・眼位で過ごすことで視機能の 発達を促すことが大切である。低年齢にて眼鏡をかけることへの理解が、家族にも周囲にも求められる。
3) 3歳頃
集団生活において外見・眼鏡の問題が出てくることがある。斜視について友達に外見的に「おかしい」と言 われる、保護者が斜視・眼鏡を装用していることでいじめられたり集団に溶け込めない原因にならないか不安 に感じるなどである。医学的弱視は「ロービジョン」ではないので、通常は、集団生活において視力の面で特別 な配慮は必要としない。
予後良好な片眼弱視の場合、3歳児健診での発見から眼鏡・健眼遮蔽訓練などの治療を開始して就学前 までに治療を終了できる。必要な遮蔽時間・患児が降園後に家庭で過ごす時間は個人差があるため、園の理
解のもとに保育時間中もアイパッチなど使用して健眼遮蔽することがある。
自覚的検査が困難な乳児でも、検査が不完全な幼児でも、年齢に応じた検査・診察は可能である。弱視の 早期発見のためには、異常を感じたら積極的に眼科・小児眼科の受診を勧めたい。