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尿路奇形と尿路感染

ドキュメント内 saisyuu2-1 (ページ 82-85)

2 脳性まひ

11.  尿路奇形と尿路感染

 診断や治療の基本と最新の考え方

はじめに

尿路感染症を扱うにあたり、重要なポイントを述べておきたい。

1  小児科医が尿路感染を特に意識しておかなくてはいけない時期は、新生児期、乳児期と幼児期早期で ある。その理由は以下のとおりである。

①この時期は上部尿路感染(腎盂腎炎)で腎を巻き込むことが多いこと、腎の瘢痕を残しやすいこと。

②症状が非特異的であり、医師が意識しなければ診断できないこと。

③敗血症を合併することが多い。

④しばしば尿路奇形を合併する。

2  尿路感染症の治療のゴールは、いかに腎のダメージを防ぐかである。

 上部尿路感染による腎瘢痕は、腎機能障害や高血圧を引き起こす。低年齢期に繰り返し上部尿路感 染を起こすことのないように管理しなくてはならない。もしも上部尿路感染を起こしてしまったら早期に感受性 のある抗生剤で十分な期間の治療を必要とする。

尿路感染症の症状 1)  発熱 2)  不機嫌

3)  哺乳不良、食思不振 4)  嘔吐、下痢

5)  排尿障害、頻尿、残尿感、失禁 6)  恥骨上部痛

7)  尿のにおいの変化

  2歳以下の場合は、5)6)の症状の訴えはないので、それ以外の非特異的な症状で疑って検査する  必要がある。

尿検査 1 採尿法

尿バッグ採尿は非常に汚染の頻度が高く、それは膿尿についても細菌尿についても言える。中間尿採取 法も特に女児の場合は信頼性に乏しい。膿尿はあるが尿路感染症と考えにくく、導尿してみたら全く白血 球は見られなかったということも少なからずある。しっかりと尿路感染症を診断しようと思ったらカテーテル導 尿法は必須である。

2 膿尿

尿沈渣により5〜10 個/ HPF 以上の白血球の存在は尿路感染症を疑わせる。導尿による検体であれば 強く疑って良いが、膿尿のない尿路感染症も10%程度にあることを知っておかなくてはならない。

3 細菌尿

歴史的に 105cfu/ml 以上の細菌尿をもって尿路感染症とされる。しかしもし無菌的に採取された尿(膀 胱穿刺法やカテーテル採尿法)で単一菌であれば 103cfu/ml で有意であろう。逆に排尿でとられたり複 数菌の場合は 105cfu/ml 以上であっても有意とすることはできない。

起因菌は、大腸菌、腸球菌、緑膿菌、クレブシエラ、表皮ブドウ球菌、プロテウス(尿路結石を疑わせる)

が代表格である。

4 尿中酵素など

尿中の NAG、β2-MG、LDH アイソザイムなどが利用される。抗生剤がすでに使用されていて、膿尿も細 菌尿もはっきりしないような場合に、有用であることがある。LDH アイソザイムは低年齢では比較的 LDH5 が高く参考にならないことが多い。最も利用価値があるのはβ2-MG だが、異形成腎、他の尿細管障害で も上昇するため、他の情報とあわせて総合的に判断しなくてはならない。

尿路感染症の診断とその重要性

1  生後2か月以下の熱発は sepsis work-up と称して、血液培養、髄液検査、尿検査が行われる。

2  繰り返すが、2歳以下の場合は非特異的な症状で疑って検査をしなければ診断することはできない。

繰り返す発熱に対して focus をしっかり考えずむやみに抗生剤で治療することで、基礎にある尿路奇形を 見落として上部尿路感染を結果的に繰り返すことになり、腎機能障害を伴った腎瘢痕を来たすような場合も ある。このような不注意で将来慢性腎不全から透析導入になってしまうような不幸は避けなければならない。

3  ひとたび尿路感染が疑われれば、尿検査により診断される。新生児、乳児、幼児期早期の尿路感染  症診断のための採尿の黄金律はカテーテル採尿であることを忘れてはならない。年長児で中間尿を採る 場合も、男児であれば亀頭を出して清潔にして、女児であれば外尿道口周囲を清潔にして採取すべきで ある。膿尿がないことで尿路感染を否定してはならない。

尿路感染の治療

 基本的に上部尿路感染は静注抗生剤の使用が良い。

 特に新生児、乳児は入院して静注抗生剤治療が必要である。十分な hydration を行なって洗い流し、

ドレナージの目的で持続導尿を行なうこともある。

 抗生剤の選択は、初発の場合起因菌のほとんどが大腸菌であるので第一あるいは第二世代のセフェム を使用することが多い。複雑性尿路感染で、しかも再燃の場合は予防内服に使用している抗生剤を考慮 して起因菌を推察し決定する。尿培養の結果薬剤感受性がはっきりすれば、その時点で変更する。その ためにも発症時の培養が重要で、必ず抗生剤投与前に尿を採取する必要がある。投与期間は最低 1 週 間である。尿路の異常がないことを確認するまでは予防内服を継続する。

重大な尿路異常を思わせる所見あるいは症状 1)  排尿の異常

  尿勢が悪い、尿線を作らない、失禁、排尿時のいきみ 2)  頻回の発熱の既往

3)  腰仙部の dimpling 尿路感染後の対応と画像診断

 上部尿路感染を起こしたら、少なくとも尿路系のエコーは必須である。そこで異常がなくとも、2 回以上 起こすようなら尿路精査と称して排尿時膀胱尿道造影やシンチグラムを行うべきである。

1. エコー

救急で可能な唯一の画像診断である。基礎疾患を診断できる可能性がある。

①  膀胱壁の状態、膀胱頚部の状態

 強い膀胱壁の肥厚や、膀胱頚部の過形成は、尿道の狭窄や神経因性膀胱を疑わせる。

 → 膀胱内圧軽減とドレナージのために持続導尿を

②  膀胱内の異常構造物  嚢状に拡張した尿管瘤

 → 内尿道口を閉塞させているようなら持続導尿を

③  膀胱部尿管の拡張

  UVjunction の逆流や狭窄。拡張が排尿や腹圧で大きく変動するなら逆流が疑わしい。

④  腎盂、腎杯の拡張 

 水腎症の診断。所見がこれだけであれば尿路感染の原因には成り得るが緊急性はない。

⑤  腎の形態・大きさ、皮髄境界

 瘢痕の有無、皮髄境界が不鮮明ならば形成異常を含めた腎機能障害を考える。

2. 排尿時膀胱尿道造影(VCUG)

最も重要な検査である。

①  注入時

 膀胱内占拠性病変(尿管瘤など)

②  充満時

 膀胱容量、膀胱の形態、膀胱壁の状態(不整、肉柱形成、憩室など)、VURの有無と程度、腎内逆  流の有無。

③  排尿時

 斜位 45゜で行なう。尿道の情報を主に。狭窄の有無、後部尿道の拡張や延長、膀胱頚部の過形成。V  URの有無と程度、腎内逆流の有無。

④  排尿後

 残尿の有無と程度。ただしカテーテル挿入のための痛みにより残尿があることが多いので注意。

3.DTPA利尿シンチ

①  片腎機能を知る。

 糸球体相から片腎のGFRを測定できる。

② UPjunction やUVjunction の狭窄の程度を知る。

 ラシックスに対する反応が重要で、手術適応を決めることになる。

4.DMSAシンチ

1) 片腎機能を知る。 2) 瘢痕の有無を知る。

なお、最近は静脈性腎盂造影(IVP、DIP)を行うことはほとんどなく、ヨード剤によるアレルギーを考えると 症例を限定して行うべきである。

 健診時期の年齢の子どもの姿と保護者への指導

1) 3〜4か月頃

 この時期の尿路感染症の症状は非特異的であり、発熱時に医師が常に意識しなければ診断できな いことに注意が必要である。また、この時期の上部尿路感染では腎の瘢痕を残しやすいことも知ってお くべき要点である。

2) 1 歳 6 か月頃

 1 歳未満ほどではないが、乳児期と同様の注意が必要である。

3) 3 歳頃

 排尿機能は、3 〜 4 歳の時期に赤ちゃん膀胱(脊髄反射型)から大人の膀胱(大脳関与型)に 移行する。つまりこの頃はまだ脊髄の反射によるものが残っており、しかも個人差がある。それ故トイレッ トトレーニングを急ぐことや厳しく行うことに弊害が伴うこともある。本人の成熟に合わせてゆっくり行うのが

良い。

 包茎については、この時期まだ多くの児が生理的包茎(包皮と亀頭の生理的癒着)の状態である。

これを用手的に剥離すると、包皮に傷が付き瘢痕となって将来的に真性包茎となる可能性がある。生 理的包茎は思春期に自然に解除されるので、放置するのが良い。

尿路感染症の診断とその重要性

1  生後2か月以下の熱発は sepsis work-up と称して、血液培養、髄液検査、尿検査が行われる。

2  繰り返すが、2歳以下の場合は非特異的な症状で疑って検査をしなければ診断することはできない。

繰り返す発熱に対して focus をしっかり考えずむやみに抗生剤で治療することで、基礎にある尿路奇形を 見落として上部尿路感染を結果的に繰り返すことになり、腎機能障害を伴った腎瘢痕を来たすような場合も ある。このような不注意で将来慢性腎不全から透析導入になってしまうような不幸は避けなければならない。

3  ひとたび尿路感染が疑われれば、尿検査により診断される。新生児、乳児、幼児期早期の尿路感染  症診断のための採尿の黄金律はカテーテル採尿であることを忘れてはならない。年長児で中間尿を採る 場合も、男児であれば亀頭を出して清潔にして、女児であれば外尿道口周囲を清潔にして採取すべきで ある。膿尿がないことで尿路感染を否定してはならない。

尿路感染の治療

 基本的に上部尿路感染は静注抗生剤の使用が良い。

 特に新生児、乳児は入院して静注抗生剤治療が必要である。十分な hydration を行なって洗い流し、

ドレナージの目的で持続導尿を行なうこともある。

 抗生剤の選択は、初発の場合起因菌のほとんどが大腸菌であるので第一あるいは第二世代のセフェム を使用することが多い。複雑性尿路感染で、しかも再燃の場合は予防内服に使用している抗生剤を考慮 して起因菌を推察し決定する。尿培養の結果薬剤感受性がはっきりすれば、その時点で変更する。その ためにも発症時の培養が重要で、必ず抗生剤投与前に尿を採取する必要がある。投与期間は最低 1 週 間である。尿路の異常がないことを確認するまでは予防内服を継続する。

重大な尿路異常を思わせる所見あるいは症状 1)  排尿の異常

  尿勢が悪い、尿線を作らない、失禁、排尿時のいきみ 2)  頻回の発熱の既往

3)  腰仙部の dimpling 尿路感染後の対応と画像診断

 上部尿路感染を起こしたら、少なくとも尿路系のエコーは必須である。そこで異常がなくとも、2 回以上 起こすようなら尿路精査と称して排尿時膀胱尿道造影やシンチグラムを行うべきである。

1. エコー

救急で可能な唯一の画像診断である。基礎疾患を診断できる可能性がある。

①  膀胱壁の状態、膀胱頚部の状態

 強い膀胱壁の肥厚や、膀胱頚部の過形成は、尿道の狭窄や神経因性膀胱を疑わせる。

 → 膀胱内圧軽減とドレナージのために持続導尿を

②  膀胱内の異常構造物  嚢状に拡張した尿管瘤

 → 内尿道口を閉塞させているようなら持続導尿を

③  膀胱部尿管の拡張

  UVjunction の逆流や狭窄。拡張が排尿や腹圧で大きく変動するなら逆流が疑わしい。

④  腎盂、腎杯の拡張 

 水腎症の診断。所見がこれだけであれば尿路感染の原因には成り得るが緊急性はない。

⑤  腎の形態・大きさ、皮髄境界

 瘢痕の有無、皮髄境界が不鮮明ならば形成異常を含めた腎機能障害を考える。

2. 排尿時膀胱尿道造影(VCUG)

最も重要な検査である。

①  注入時

 膀胱内占拠性病変(尿管瘤など)

②  充満時

 膀胱容量、膀胱の形態、膀胱壁の状態(不整、肉柱形成、憩室など)、VURの有無と程度、腎内逆  流の有無。

③  排尿時

 斜位 45゜で行なう。尿道の情報を主に。狭窄の有無、後部尿道の拡張や延長、膀胱頚部の過形成。V  URの有無と程度、腎内逆流の有無。

④  排尿後

 残尿の有無と程度。ただしカテーテル挿入のための痛みにより残尿があることが多いので注意。

3.DTPA利尿シンチ

①  片腎機能を知る。

 糸球体相から片腎のGFRを測定できる。

② UPjunction やUVjunction の狭窄の程度を知る。

 ラシックスに対する反応が重要で、手術適応を決めることになる。

4.DMSAシンチ

1) 片腎機能を知る。

2) 瘢痕の有無を知る。

なお、最近は静脈性腎盂造影(IVP、DIP)を行うことはほとんどなく、ヨード剤によるアレルギーを考えると 症例を限定して行うべきである。

 健診時期の年齢の子どもの姿と保護者への指導

1) 3〜4か月頃

 この時期の尿路感染症の症状は非特異的であり、発熱時に医師が常に意識しなければ診断できな いことに注意が必要である。また、この時期の上部尿路感染では腎の瘢痕を残しやすいことも知ってお くべき要点である。

2) 1 歳 6 か月頃

 1 歳未満ほどではないが、乳児期と同様の注意が必要である。

3) 3 歳頃

 排尿機能は、3 〜 4 歳の時期に赤ちゃん膀胱(脊髄反射型)から大人の膀胱(大脳関与型)に 移行する。つまりこの頃はまだ脊髄の反射によるものが残っており、しかも個人差がある。それ故トイレッ トトレーニングを急ぐことや厳しく行うことに弊害が伴うこともある。本人の成熟に合わせてゆっくり行うのが

良い。

 包茎については、この時期まだ多くの児が生理的包茎(包皮と亀頭の生理的癒着)の状態である。

これを用手的に剥離すると、包皮に傷が付き瘢痕となって将来的に真性包茎となる可能性がある。生 理的包茎は思春期に自然に解除されるので、放置するのが良い。

ドキュメント内 saisyuu2-1 (ページ 82-85)

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