(4) 評価区分とその典型例
ここに示す典型例と似た事例であってもその地域で利用できる社会情勢やマンパワーによって評価区分が 異なる場合がある
母親は産後のため、父親と2人で健診を受診した。発育・身体所見は特に問題ない。
本児は食べ物にこだわりがあり、内容は定期的に変わる。口元がゆるくよだれが多い。
父は本児の自己主張が強く、関わりにくさを訴えていたが、父親より母の方が本児に上 手に対応していると言う。絵カードでのやり取りはできなかったが、始語は7か月と早 く、現在は2語文が話せる。また、積み木は5個積め、「どうぞ」「ちょうだい」のやり 取りは可能であった。
児のこだわりや関わりにくさの訴えはあったが、絵カード以外の1歳6か月健康診査 のやり取りはできたこと、両親が本児の発達をきちんと見られている環境であることか ら、遊び方や関わり方などを助言することで改善が見られると考えた。心配があればい つでも保健師に連絡してもよいことを付け加えた。
○子の要因(発達)に対する支援の必要性
助言・情報提供で自ら行動できる (1歳6か月児健診)
絵カードの指さしができず、指すということを理解していないように感じられた。積 み木もつめず、言葉による指示にも反応しない。遊びには乗ってくるが、ひとりでしゃ べり、言葉によるやり取りができなかった。人見知りもあまりない。母親は初めての子 どもなので、児の行動に振り回されている印象であった。
児の発達及び母親の関わり方に支援が必要であると考え、まず、問題を明確にするた め、保健センターで開催している「事後教室」に6か月くらい通ってもらうという方針 をたてた。
保健機関の継続支援が必要 (1歳6か月児健診)
母は本児をスリングで抱いて来所。予診時、児のことばは単語のみで、二語文はでて いない。落ち着きがなく、どの場面でも保健師と関わりが難しい子であった。家庭で聴 力検査、視力検査もできず、健診場面で再度実施したが、やはりできなかった。身長・
体重の伸びは良好。
1歳6か月児健診時も全体的に発達が遅く、事後教室を紹介したが、2回参加しただけ であった。
3歳児健診時に心理士の面接を実施したが、1年くらいの遅れが見られること、母親も 問題意識が薄く、本児を赤ちゃん扱いしており、積極的に相談機関に相談をしてこな かった方であることから、精神・発達面で診療可能な医療機関の紹介か児童相談セン ターの発達相談につなげ、フォローすることとした。
機関連携による支援が必要 (3歳児健診)
14.5㎏、身長82.0㎝、カウプ指数が21.96の肥満傾向であった。母親は、寝る前に 必ず、50〜100ccのフォローアップミルクを与えている。これを機に減らすか、お茶 を与えるよう指導した。また、食事についても大皿盛りではなく、本児用に盛り付けを して、量の確認ができるように助言した。
運動発達には問題ない。母親自身、本児が太ってきていることに気がついていたた め、具体的な保健指導で改善されると考え、計測ができる育児相談の場を紹介した。
○子の要因(その他)に対する支援の必要性
助言・情報提供で自ら行動できる (1歳6か月児健診)
体重19.5㎏、身長90㎝、カウプ指数が24.07と肥満。朝食は菓子パン、1.5〜2リッ トルの炭酸飲料を兄弟4人で1日で空ける。ジャンクフード(ハンバーガーとポテト、
ジュースのセット1人前)をぺろりと食べる。野菜は嫌い、肉は好き、わかめ、きの こ、枝豆は食べる。食べ方ではだらだら食べることが多く、飲み物にも砂糖加えるなど している。おやつの時間は決まっていない。母親も肥満について心配しているが、なか なか規則正しい生活習慣に戻せない。
肥満の問題であるが、食生活・う蝕等母親への育児全体の支援が必要と考え、家庭訪 問と育児相談による継続支援とした。
保健機関の継続支援が必要 (3歳児健診)
大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症で治療が続き、3〜4か月児健診及び1歳6か月児健診は未 受診であった。現在、在宅酸素療法中で酸素は1㍑/分使用。恥ずかしがり屋のところは あるが、ことばなどの精神発達面は問題ない。友達への関心もある。母親は正職員で働 いているため、看護師のいる保育園に4月から入園した。本人は保育園で遊びたいの で、HOTを外したがるが、園としては病状がわからないので、行動を制限してしまっ ている。母親によれば1日に2〜3時間は酸素を中断してもよいと医療機関から言われて いる。
本児のできることを増やし、地域で楽しく生活できるよう、病院・保育所と連携し支 援する必要があると判断した。
機関連携による支援が必要 (3歳児健診)
子どもの発達、発育には今のところ問題ない。母親は「他県から転入し、地域に馴染 めず、引きこもりの状態である」と話される。週末は夫がいるためよいが週の終りころ には怒りっぽくなる。子どもにペースを乱されることで疲れるが、子どもはかわいく、
手を出すことはない。時々実家に電話で話を聞いてもらい、気分転換をしている。
母に病的な感じはなく、相談や仲間づくりの場として、地域の子育てサロンを紹介 し、イライラしてしまった時のために保健センターの電話相談を紹介した。
○親、家庭の要因に対する支援の必要性
助言・情報提供で自ら行動できる (1歳6か月児健診)
不妊治療を5年実施し、双胎誕生。遠方にある母方実家の支援があり、本児たちは順 調に発達・発育している。産後に一度自宅に戻ったが、母一人ではできないと思い即日 実家に戻った。父親は育児に不慣れでできないという。
母は器用なタイプではなさそうだが、実家にいる今の時点では問診上も問題ない。
しかし、遠方であることから、予防接種や育児相談などを活用するのに不便を感じて いるのでそろそろ自宅に戻りたい気持ちがある。
保健センターが実施している、双子の会への参加を促すとともに、両親が揃っている ところで家庭訪問し、それぞれの役割を明確にして父親も育児参加できるよう支援する こととした。
保健機関の継続支援が必要 (3〜4か月児健診)
母親がうつ病の治療中で、産後ほとんど育児ができず、昼間、授乳(ミルク)とおむ つを替えるのがやっとの状況である。家事やその他の夜の育児は実家の親が中心で行っ ている。児は現在のところ発達・発育も良く、本日の健診では特に問題なかった。
しかし、実家も遠く長期に支援を求めることは困難であることから、今後、父親も交 え、主治医とも連絡をとり、ヘルパーや保育園等の活用も含めて、母親の育児を支援す る体制を検討する必要があると判断した。
機関連携による支援が必要 (3〜4か月児健診)
問診票に「子どもがかわいいと思えない」との記入があった。児は発達、発育、清潔 等特に問題がみられなかった。「かわいいと思うより、こんなに育児が大変だとは思わ なかった」との発言がある。育児が大変な時は近くに住む母方実家の祖母が助けてくれ ている。
今が一番大変な時であること、あなただけでなくみんなそう思っていること伝える と、「少し安心した」との返答あり。
育児相談や育児教室を紹介し、心配なときはいつでも連絡してよいことを伝え、1か 月後に確認の電話をすることとした。
○親子の関係性に対する支援の必要性
助言・情報提供で自ら行動できる (3〜4か月児健診)
児は簡単な指示が入りにくく、多動傾向があり、言葉もほとんど出ていない。母親か らは、上の子と比較して、非常に育てにくい子という訴えがあった。母親は本児に対し て叱ることが多く、手が出てしまうこともあるという。
家庭訪問や育児相談で状況を確認するとともに、保健センターが実施している親支援 教室(MCGなど)の参加を勧めていくこととした。
保健機関の継続支援が必要 (1歳6か月児健診)
母親は17歳で第1子を出産したが、育てることができず、施設に預けた。今回の妊娠 中に5歳になった第1子を引き取った。第2子となる本児を出産後、本児との関係は良好 だが、第1子との親子関係は未形成である。
本児は、発育・発達の問題はない。第1子のことでは月1回家庭相談員が訪問予定。
本児と家族への支援は保健センターの保健師が中心に行うこととし、児童課や児童相 談センターとも連携し、具体的な支援を検討することとした。
機関連携による支援が必要 (3〜4か月児健診)
2. 授乳の支援
(1) 評価の考え方
授乳の支援は、子どもを健やかに育てることを目的とした子育て支援である。
授乳に関する支援の必要性について、次の区分で判定する。
・支援の必要性なし
・助言・情報提供で自ら行動できる ・保健機関の継続支援が必要 ・機関連携による支援が必要
(2) 評価区分とその典型例
母乳のみで育てており、体重の増えも問題ない。しかし、両方の乳房の外側に3㎝く らいのしこりがあり、腫脹・痛みの訴えがあった。
しこりを取るための授乳方法を教え、軽減しない場合は、受診するよう乳房マッサー ジをしてくれる産科・助産院を紹介した。
助言・情報提供で自ら行動できる (3〜4か月児健診)
母乳のみで育てているが、体重の増えが悪い。出生3200g、1か月児健診時4300 g、本日4か月10日で5600g。母親は、ミルクを足した方がよいと思い、与えてみた が、全くミルクを受け付けなかったので、母乳のみで育ててきた。授乳間隔も2時間く らいであり、母乳育児に関して疲れを訴えた。
助産師による家庭訪問を実施し、必要があれば乳房マッサージをしてくれる産科・助 産院を紹介することとした。
保健機関の継続支援が必要 (3〜4か月児健診)
母親は妊娠中から抑うつ状態があり、産婦人科から紹介された精神科病院に通っている。
母親は、母乳で育てたいという思いが強く、精神科から処方された薬を出産後中断してい る。母親は、夜も眠れておらず、表情は暗く、乏しい。
本児は体重増加もよく、発達も今のところ問題ない。実家の母親の協力はある。
母親は「精神科に受診すると薬を飲まされるので、行きたくない」という。
精神科に保健師から連絡取ることは了解を得られ、主治医と相談しながらサポートするこ ととした。
この事例は、「親、家庭の要因」においても「機関連携による支援が必要」と判定した。