4.3 実管路を想定した限界せん断応力
4.3.1 設定条件(融着継手、給水分岐の密度)
次に実際の管路により近い配管形態を想定した土槽実験を行う.実管路を想定した場合,
一般的に図-4.37に示すように5m毎に融着継手を用いて接合され、各家庭の間口を10mと 想定し,10m 間隔で給水分岐がなされるものとした.よって,青ポリ管の限界せん断応力 は,これら突起部の抵抗を加味した単位表面積あたりのせん断応力線図より決定する.
図-4.37 一般的な青ポリ管の配管モデル 4.3.2 単位表面積当たりの限界せん断応力
青ポリ管の限界せん断応力は,給水分岐や融着継手の突起部が抵抗となることを加味し た値が実管路に相応しいと考える.これらの抵抗は,配管形態ごとに実験値から計算する ことが可能であるが,都度計算するにはやや煩雑となるため,標準的な継手間隔,分岐間 隔および変位の大きさを考慮して得られた抵抗力の大きさを管表面の単位面積あたりの値 に換算し,見かけ上の管表面に作用する限界せん断応力として提案する(図-4.38).
直管部 EF継手
5m 10m
サドル付分水栓 サドル付分水栓
単位表面積当たりのせん断応力に換算
突起部の抵抗を加味し、
単位表面積あたり平均的なせん断応力に換算
図-4.38 管軸方向地盤ばねのイメージ図
58
次に図-4.39~図-4.41 に,標準的な継手間隔,給水分岐間隔ごとに換算した合成グラフ のせん断応力線図を示す.換算方法は,式(4.6)で示すように直線部(裸管)の実験で得 た限界せん断応力を基準とし,融着継手に作用する荷重ΔP1とサドル付分水栓に作用する 荷重ΔP2 をそれぞれの標準設置間隔あたりに換算したせん断応力として加え,合成グラフ とする.
先に述べた通り,青ポリ管の限界せん断応力は 20mm 変位を境に周辺土の破壊が進行し,
滑り状態に移行すると考えられるため,20mm変位を滑り開始変位と定め,この合成グラフ における20mm変位の地点でのせん断応力を青ポリ管の限界せん断応力τcrとして提案する こととする.ここで,τcrを与える滑り開始変位δcrは,管軸方向の青ポリ管の伸縮量と周辺 土の変形量を合算した値である.
また,突起部を有する管の τcrに関しては,中低圧ガス導管耐震設計指針にも突起部の変 位量を20mm見込んだせん断応力をτcrとして提案されている6).
本研究で得た青ポリ管の限界せん断応力,滑り開始変位,地盤ばね係数を表-4.8に示す.
τcrの結果は,土被り60cmにおいて10.8kN/m2~19.5kN/m2となる結果となり,呼び径が小さ い管の方が管外径に比べて相対的に張出部の面積が大きくなるため,τcrは大きくなり,地 震時に滑りにくくなる結果を得た. また,地盤ばねについては,滑り開始を20mmとした ことにより,かなり軟らかいばねを設定することになる.これは,地震時に生じる相対変 位を大きく見積もることになり,分岐部や異形管部にとってはより厳しい評価になると考 える.一方で,直管部ではひずみ伝達係数を若干小さく見積もることになるが,埋設管に 大きな変形を与える軟弱地盤においては,大きな差は無いことを確認している.
3 3 2
2
1
Dl
P Dl
P Dl
P
crsum
(4.6)ここで,Pcr:直管部の滑り開始荷重 (kN) ΔP2:融着継手の荷重増分 (kN)
ΔP3:サドル付分水栓の荷重増 (kN) l1:実験土槽寸法(=1.6m)
l2:融着継手間隔(=5m)
l3:給水分岐間隔(=10m)
D:管外径(m)
59
図-4.39 単位表面積あたりのτ-δ曲線(呼び径50)
図-4.40 単位表面積あたりのτ-δ曲線(呼び径100)
0 5 10 15 20 25
0 20 40 60 80 100
せん断応力τ(kN/m2 )
変位量δ(mm)
直管部(裸管)
サドル付分水栓 融着継手 合成グラフ
裸管のτcr
Δτ1 Δτ2
Δτsum
0 5 10 15 20 25
0 20 40 60 80 100
せん断応力τ(kN/m2)
変位量δ(mm)
直管部(裸管)
サドル付分水栓 融着継手付 合成グラフ
裸管のτcr
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図-4.41 単位表面積あたりのτ-δ曲線(呼び径200)
表-4.8 呼び径ごとの限界せん断応力
限界せん断応力 滑り開始変位 地盤ばね係数 (kN/m2) (m) (kN/m3)
呼び径50 19.5 0.02 975
呼び径100 14.9 0.02 745
呼び径200 10.8 0.02 540
0 5 10 15 20 25
0 20 40 60 80 100
せん断応力τ(kN/m2)
変位量δ(mm)
直管部(裸管)
サドル付分水栓 融着継手 合成グラフ
(破線:推定値)
裸管のτcr
61 4章参考文献
1) 島村一訓,竹之内博之,三木千壽,福澤小太郎:実大実験による埋設パイプラインの 軸方向動的地盤ばね特性の研究,土木学会論文集 No.612,I-46,pp.55- pp.66,1999.
2) 日本ガス協会:高圧ガス導管耐震設計指針,pp.26-49,2013.
3) 日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説,I総論,pp.257 pp.-272,2009.
4) 福岡正巳,宇都一馬:ボーリング孔を利用した基礎地盤の横方向 k 値測定について,
土と基礎,特集号- I, pp.3-8,1977.
5) 金子正吾,宮島昌克:逆断層を横断する耐震継手ダクタイル鉄管の挙動に関する研究,
構造工学論文集,Vol. 60 A, pp .945-952, 2014.
6) 日本ガス協会:中低圧ガス導管耐震設計指針,pp.19-25, pp.56-63, 2004.
7) 小林実央,安藤広和,小口憲武:埋設管に作用する軸方向地震時地盤拘束力に及ぼす 地盤の速度と繰り返し変位の影響,土木学会論文集 No.591,I-43,pp.299-312,1998.
8) 西川源太郎,塩浜裕一,鈴木剛史,大沼博幹,清野純史:水道配水用ポリエチレン管 の地震動に対する耐震性評価に関する研究,土木学会論文集 A1,Vol.72,No.4,pp.
I_424-I_433,2016.
9) 西川源太郎,塩浜裕一,鈴木剛史,大沼博幹,清野純史:地震時における水道配水用 ポリエチレン管の異形管・給水分岐の耐震性評価,土木学会論文集A1,Vol.73,No.4,
pp. I-412-I_421,2017.
10) 平山智章,鍬田泰子,澤田純男:小型模型実験による管路・地盤間に働く摩擦力の速 度依存性,土木学会論文集A1, Vol. 72, No. 4, pp. I_290-I_296, 2016.