第 3 章 学協会における利益相反マネジメント(組織としての利益相反を含む)
と回答した学協会の理由としては 27 件の記載があったが、 「事例がない、可能性がない、
問題がない」 (
11件)、「必要性を感じない」(
5件)などといった記載が多く、また、「「一 般社団法人及び一般財団法人に関する法律」等の法令で対応」 (
3件)、 「定款で対応」 (
3件)、
「倫理規程(綱領)で対応」 (
3件)、 「投稿規程で対応」 (
1件)など、現在のところは法令・
定款等の対応で十分であると考えている学協会の回答も多くみられた(表
3-3-2)。なお、 「利 益相反指針・細則等の策定を検討したことがあるが断念した」との回答はなかった。
また、利益相反マネジメントの対象者について選択式で質問したところ、最も多かった のは、 「学協会会員以外でも学協会主催の学術講演会で発表する者又は学協会機関紙などで 発表する者」と「学協会の役員(会長、理事、監事等)」で、いずれも
96%であった(図
3-3-8)。「学協会会員」(
86%)と「学協会の各種委員会の委員長・委員、作業部会の委員」
(
82%)は
8割台となったが、多くの学協会でマネジメントの対象者を広範に定めている
ことがわかった。また、 「その他」を選択した学協会に具体的な記載を求めたところ、学協
会関連者の「配偶者」 (
13件)、 「一親等の親族」 (
12件)、 「財産・収入を共有する者、生計
を一にする者」(
10件)や、「学協会の事務職員、従業員」 (
11件)といった回答が多くみ
られた(表
3-3-3)。なお、多くの学会では、著作や講演については発表時に利益相反の状 態を公表するという対応となっている。(表
3-3-4)。
利益相反マネジメントの指針・細則等を「制定している」と回答した学協会に対しては、
個人としての利益相反マネジメントの整備状況について問を設けた。
一つ目は学協会の会員等の個人的利益の自己申告についてであり、まず、個人的利益の 内容を具体的に記載してもらった。この結果、 「講演料・日当」が
26件、 「知財関連収入(実 施料、ロイヤルティ、売却)」と「原稿料」がそれぞれ
24件と上位を占めた(表
3-3-5)。 「株 式、エクイティ」 (
20件)、 「研究助成金」 (
19件)なども続いている。大学のように兼業規 程がないためか、「役員・顧問職の有無と報酬」 (
11件)など、大学にはみられない特徴的 な回答もあった。次に、個人的利益の自己申告の基準値(金額)について記載を求めた。
この結果、全体に基準はほぼ同様であり、「
1企業・団体当たりの利益が年間
100万円以上
(または超) 」という回答が最も多く
22件、ロイヤルティは
100万円/年以上が
8件、原 稿料・講演料は
50万円/社・年以上が
15件、旅行・贈答は
5万円/社・年以上が
12件で あった(表
3-3-6)。収入の種類別に金額を異にした基準を設けている場合も、それぞれの 基準値は同じであった。さらに、保有する株式の自己申告の基準値について記入を求めた ところ、基準は多くの学協会で類似しており、全体では「
100万円以上(超)または
5%以 上」とする回答が
20件と最も多かった(表
3-3-7)。
また、直接には個人的利益とはならない産学連携活動に伴う資金に関する取扱いについ ては、全体で
89%が「自己申告させている」という回答であった(図
3-3-9)。さらに、 「自 己申告させている」との回答者に具体的な記載を求めたところ、全体では「
200万円/社・
年以上」の回答が
13件と最も多かった(表
3-3-8)。臨床研究や寄付の場合にも、「
200万 円/社・年以上」という基準が採択されているとした回答が最も多くなった。
二つ目に利益相反マネジメント体制についての問を設けた。
まず、利益相反委員会の設置については、
71%が「学協会に利益相反委員会を設置して いる」との回答であった(図
3-3-10)。また、「学協会に利益相反委員会を設置している」
との回答者に主に委員会の構成員について具体的な記載を求めたところ、外部有識者につ いての記載で、 「
1人」という回答が最も多く
11件、次いで「なし、学会員のみ」が
4件と なった(表
3-3-9)。人数については「若干名」が
6件と最も多かった。さらに、特筆事項 として、弁護士や女性の参加を記載する回答もみられた。一方、「学協会に利益相反委員会 を設置していない」と回答した
29%の学協会に対して具体的な対応をたずねたところ、 「倫 理委員会で対応、検討」が
2件、 「理事会で対応」が
2件、 「設置予定・準備中」が
2件、 「投 稿のみマネジメントし、編集委員会が対応」が
1件となった(資料編1参照)。倫理委員会 や理事会で代替するという対応が多い。
不服審査の仕組みに関する設問については、 「学協会に不服審査を担当する委員会を設置
している」と「学協会に不服審査を担当する委員会を設置していない」の回答が半々とな
った(図
3-3-11)。「学協会に不服審査を担当する委員会を設置している」と回答した学協
会に対して主に委員会の仕組みについて具体的な記載を求めたところ、設置等の状況につ いては、 「理事長が審査委員会を設置」という記載が
11件、 「理事会で最終協議」が
9件と 多かった(表
3-3-10)。また、委員会の構成については、「外部委員
1名以上」(
4件)、「利 益相反委員会委員は兼務できない」 (
3件)、 「委員長は互選」 (
3件)などの記載が多かった。
さらに、期日として、「審査請求書受理から
30日以内に開催」(
2件)、 「審査委員会開催日 から
1か月以内に答申書をまとめる」 (
2件)といった記載もみられた。一方、 「学協会に不 服審査を担当する委員会を設置していない」との回答者に対して具体的記載を求めたとこ ろ、「理事会が担う」(
5件)、「最終的に理事会で協議」(
2件)などが複数回答となったほ か、「倫理委員会が担う」 、「コンプライアンス委員会で再審理」、「調査委員会を設置」とい った回答が各
1件あり、理事会や関連委員会で代替するという対応が多くみられた(表
3-3-11)。
学協会(組織)としての利益相反マネジメントの整備状況については、まず、学協会の 役員、各種委員会の委員長・委員、作業部会の委員等の個人的利益の自己申告の制度の有 無をたずねた。この結果、 「自己申告の制度がある」との回答が
89%に上った(図
3-3-12)。
またそれらの制定年月日の記載を求めたところ、全体では
2012年の制定が最も多く
41%、
次いで
2011年が
23%、
2010年
18%となった(図
3-3-13)。ここ
1~
2年に制定に取り組 み始めた学会が多い。一方、役員等の「自己申告の制度がない」と回答した学協会に対し て、現在の状況について回答を求めた結果、「現在のところ組織としての利益相反指針・細 則等を策定する予定はない」とした回答が
2件(
67%)、 「今後組織としての利益相反指針・
細則等を策定するかどうかを検討中である」が
1件(
33%)となった(図
3-3-14)。「現在 のところ組織としての利益相反指針・細則等を策定する予定はない」と回答した学協会の 理由としては、「現行規程に基づく」としたものが
1件あった。
役員等の個人的利益の「自己申告の制度がある」と回答した学協会に対しては、学協会
(組織)としての利益相反マネジメントの整備状況について問を設けた。
一つ目は、役員等の個人的利益の自己申告についてであり、役員等の自己申告の対象と なる個人的利益の内容について記載を求めたところ、「講演料・日当」 (
22件)、「原稿料」
(
22件)、「知財関連収入(実施料、ロイヤルティ、売却) 」(
21件)が
20件を超えて上位 を占めた(表
3-3-12)。次に、役員等の個人的利益の自己申告の基準値(金額)について記 載を求めたところ、 「
1企業・団体当たりの利益が年間
100万円以上(または超)」という回 答が最も多く
22件、ロイヤルティは
100万円/年以上が
12件、原稿料・講演料は
50万 円/社・年以上が
13件、旅行・贈答は
5万円/社・年以上が
11件など、収入の種類別に 金額を異にした基準を設けている学協会も、それぞれの基準値は同じであった(表
3-3-13)。
また、役員等が保有する株式の自己申告の基準値について具体的な記載を求めたところ、
「
100万円以上(超)または
5%以上」とする回答が
21件と最も多かった(表
3-3-14)。
さらに、直接には役員等の個人的利益とはならない産学連携活動に伴う資金についての
設問には、
96%が「自己申告させている」という回答で、 「自己申告させていない」との回 答はなかった(図
3-3-15)。さらに、 「自己申告させている」との回答者に具体的な記載を 求めたところ、全体では 「
200万円/社・年以上」の回答が
13件と最も多かった(表
3-3-15)。
臨床研究や寄付の場合にも、「
200万円/社・年以上」という基準が採択されているとした 回答が多い。
二つ目に、学協会(組織)そのものの利益相反に関する禁止事項について選択式でたず ねたところ(複数回答)、 「特に禁止事項を設けていない」が
72%と最も多く、 「学協会(組 織)と受託研究、製品・サービスの納入、工事の請負等の契約関係にある企業について、
学協会(組織)が寄付金を受けることを禁止している」とした回答は
8%となった(図
3-3-16)。
「その他」については具体的な回答を求めたところ、
2件の記載があったが、「各分科会で 対応」、「社会規範に反する行為」といった抽象的な回答であった。
なお、設問以外に学協会(組織)としての利益相反マネジメントに関する特別な仕組み を設けている学協会はなかった。
さて、実際に生じた個人としての利益相反事例についての設問には、
90%が「生じたこ とがない」という回答であった(図
3-3-17)。「生じたことがある」との回答は
1%(
1件)
であった。この
1件の具体的内容とは、 「著作権:相手との和解」であり、知的財産権に関 する問題であった。
実際に生じた組織としての利益相反事例についての設問には、
88%が「生じたことがな い」という回答であった(図
3-3-18)。 「生じたことがある」との回答は
1%(
1件)であっ た。この
1件の具体的内容とは、学協会の製剤安全性検証小委員会委員が、兼業として当 該製剤と関係ある製薬企業の安全性レビュー係も務め、一定の報酬を得ていたことが判明 したため、勧告を行って企業の役職を辞任してもらったという記載であった。
最後に学協会における利益相反に関する自由意見の記載を求めたところ、
17件の回答が あった。 「規則等で対応する必要がある」、 「親学会で整備」といった回答が各
2件あり、他 は各
1件である。「利益を定性的・定量的に判断するのは困難」や「申請期間(過去
1年)
について議論がある」など、基準作りに苦慮している記載もみられた(表
3-3-16)。そのほ か、問題が生じる可能性が低いと判断して、定款等で十分であると判断したり、理事会で 対応したりするなどの回答があった。
今回の学協会に対する調査では、産学連携を実施する機会が多いと考えられる自然科学 系の団体を選別したにもかかわらず、利益相反マネジメントの指針・細則等を制定してい る割合が
26%と、約
4分の
1に過ぎなかった。しかも、制定に取り組み始めたのはここ
1~
2年であるケースが多い。一方、利益相反マネジメントの指針・細則等を制定している学
協会においては、学協会の機関誌や講演会での発表者のみならず、学協会の役員等がマネ
ドキュメント内
大学及び学協会における利益相反相反マネジメント(組織としての利益相反を含む)の現状に関する実証的研究
(ページ 92-96)