第 6 章 二軸応力制御による管材の塑性不安定解析 96
6.4 解析例
{ }
fI ,{ }
fII はそれぞれ軸力,圧力の荷重モードベクトルであり,以下で与えられる.{ } { }
fI = lax onSax (6.50){ }
fII =−{ }
n onSpr (6.51){ }
lax ,{ }
n はそれぞれ管の長手方向に平行なベクトル,管の内表面の法線ベクトルを 節点に離散化したものであり,Sax,Sprは管の端部辺および内表面である.未知係数 が二つ存在するため,ここでも新たな拘束条件の導入が必要となる.ここでは軸力と 内圧が外力として作用し,両者の大きさT,Pが未知数となる.肉厚が十分に薄い円管が軸力Tと内圧Pを受けて一様変形している場合,板厚方向 の応力が十分に小さく,かつ中立面半径と内径がほぼ等しいとみなせる.この時 T,
Pはそれぞれ軸方向,周方向応力σφ,σθ を用いて RH
T =2πσφ (6.52)
R H
P=σθ (6.53)
によって与えられる.ここでR,Hは現時刻における管の中立面半径(もしくは内径), 板厚を表す.軸方向,周方向の応力比をα =σθ σφ として定義すると,軸力,内圧間 に
α π 2 2 R P
T = (6.54)
の関係が成立する.すなわち,応力比α を既知とすれば T,P の間に新たな拘束条件 を課すことになり,これが式(5.37)に代わる拘束条件となる.これと式(5.27)を連立す ることで式(6.49)を解くことが可能となる.
このため初期長さL0は任意の値で構わない.用いた要素は4節点三次元膜要素であり,
対称性を考慮した 1/4モデルを 42節点,20 要素に分割した(軸方向,周方向の要素 分割数はそれぞれ 1,20).以上の条件下において,応力比をα =0
(
σφ:σθ =1:0)
から(
: 0:1)
0
1α = σφ σθ = まで変化させ,塑性不安定解析を実施した.
図6.2に解析により得られた各応力比での最大荷重点における相当塑性ひずみを示 す.横軸は応力比としている.図中には式(6.25),(6.26)で得られる理論解もあわせて 示しており,軸力,内圧ともに最大荷重発生点が正しく評価されていることが確認で き る . 軸 力 と 内 圧 が 同 時 に 最 大 荷 重 と な る の は ,6.2 節 で 示 し た よ う に
(
: 2:1)
2
1 =
= σφ σθ
α の時であるが,この点も再現されている.
得られた最大荷重点を塑性ひずみ空間にプロットしたものを図6.3に示す.式(6.25),
(6.26)および式(6.30) ,(6.31)を用いて得られる理論解もあわせて示しており,提案手 法によって得られた解が理論解と一致していることが確認できる.また軸力と内圧が 同時に最大値となる応力比α =12
(
σφ :σθ =2:1)
での塑性ひずみ経路は,J2 流れ則を 用いる場合εφp:εθp =1:0,すなわち図中の横軸にそった経路となり,この時周方向に は塑性ひずみは発生しない.図6.2,6.3より,塑性不安定発生点の傾向は,軸力と内圧で大きく異なっているこ と が わ か る . 前 述 の よ う に , 軸 力 と 内 圧 が 同 時 に 最 大 荷 重 と な る の は
(
: 2:1)
2
1 =
= σφ σθ
α の時であり,それより小さいα に対しては軸力,大きなα に対し
0
0 R
L 1.0
0
0 R
H 0.1
σ0
E 500
ν 0.3
ε0 0.002
n 0.1
m 0.002 Table 6.1 Dimensions of specimen and material properties.
P
L0
2R0
σ
φσ
φσ
θσ
θT T
Fig. 6.1 Analysis model.
ては内圧によって塑性不安定が誘発される.すなわち,内圧に起因して塑性不安定が 発現する応力経路の方が多く,発現した時点の相当塑性ひずみの値も小さい.このた め,図6.2はα =1α =1
(
σφ :σθ =1:1)
に対して明らかに非対称な傾向を示している.ま た軸力の最大荷重点は,周方向塑性ひずみの影響はほとんど受けず,ほぼ一定の軸方 向塑性ひずみで発生するが,内圧の場合には軸方向,周方向の塑性ひずみ比によって 最大荷重点が塑性ひずみ空間内で直線的に変化している.Mikkelsen and Tvergaardに よ る 塑 性 不 安 定 解 析 に お い て は 管 長 を 一 定 に 拘 束 し て い る が[6-4], こ れ は(
: 1:2)
2 =
= σφ σθ
α に対応する.このとき内圧の最大化重点における周方向塑性ひず みは対数ひずみで 4.82%となり,半径は初期形状と比較して4.94%増加した状態とな るが,これはMikkelsen and Tvergaardによる解析で得られた最大荷重条件と一致して いる.
次に,いくつかの線形応力経路での軸力および内圧の荷重履歴を図6.4に示す.実 線と破線はそれぞれ軸力と内圧の履歴を表し,両荷重は次式により正規化されている.
0 0
2π R0H σ
T = T (6.55)
0 0
σ0
H R
P = P (6.56)
横軸は相当塑性ひずみとし,各荷重の最大点は×で表している.α =1 2
(
σφ :σθ =2:1)
で は , 軸 力 と 内 圧 が 同 時 に 最 大 荷 重 と な り , そ の 後 共 に 減 少 に 転 じ て い る .
(
: 3:1)
3
1 =
= σφ σθ
α では軸力が先に最大荷重となりその後内圧が最大荷重となるが,
(
: 6:5)
6
5 =
= σφ σθ
α では逆に内圧が先に最大荷重となりその後軸力が最大荷重を示 す.いずれの場合にも,最大荷重点通過後は軸力,内圧共に単調減少を示す.提案手 法を用いることで,最大荷重の発生およびその後の荷重履歴を困難なく追跡可能であ ることが確認できる.
最後に各応力比における軸力,内圧の最大値を図6.5に示す.前出の解析結果より,
塑性不安定発生点は軸力と内圧では異なる傾向を示し,そのときの相当塑性ひずみも
(
: 1:1)
1
1 = =
= α σφ σθ
α に対して非対称である.正規化された最大荷重値で比較する と , 内 圧 の 最 大 荷 重 値 の 方 が や や 低 い 傾 向 を 示 す . 両 者 の 交 点 も
(
: 1:1)
1
1 = =
= α σφ σθ
α よりややα が大きい側にシフトしており,図6.2の相当塑性ひ ずみと同様に,α =1α =1
(
σφ:σθ =1:1)
に対して非対称な傾向を示している.本解析では,軸力,内圧のいずれか一方が先に最大荷重となる点を塑性不安定点と みなし,その発生条件について図6.3において塑性ひずみ空間に図示した.しかしな がら桑原らの線形応力経路による薄肉管材の破断実験によれば,破断時の塑性ひずみ 分布はこれとは明らかに異なる傾向を示し,破断限界点を塑性ひずみ空間にプロット すると,特に等二軸応力経路α =1α =1
(
σφ :σθ =1:1)
付近では限界点が大きく張り出 す,すなわち他の応力経路と比較して,より大きな塑性ひずみまで破断は生じないこ とが報告されている[6-3].一方,図6.3においては等二軸応力経路においても,この傾向は見られない.これは塑性不安定発現後,変形の一様性が崩れ部材の一部分に塑性 変形が集中する,いわゆる局所化が発生し,応力場の一様性が失われているためだと 考えられる.このことは,塑性不安定の発現と破断を同じ基準では評価できないこと を示すものであり,塑性不安定に引き続く変形の局所化による影響等,THFにおける 複合荷重下での破断予測基準については,今後さらなる検討が必要である.
Fig. 6.2 Equivalent plastic strain at maximum loading points.
0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
Maximum Axial Loading Point Maximum Pressure Point Maximum Axial Loading (Theory) Maximum Pressure (Theory)
0.5 0.0
α 1 / α
Stress Ratio
Equivalent Plastic Strain
Fig. 6.3 Maximum loading points in plastic strain space.
-0.05 0.00 0.05
-0.05 0.00 0.05 0.10 0.15
Maximum Axial Loading Point Maximum Pressure Point Maximum Axial Loading (Theory) Maximum Pressure (Theory)
Longitudinal Plastic Strain
Circumferential Plastic Strain
Fig. 6.4 Loading histories with respect to equivalent plastic strain.
(a) α =Equivalent Plastic Strain 1 2
(
σφ :σθ =2:1)
Normalized Loading
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Axial loading Pressure Axial Loading T
Pressure P
(c) α =Equivalent Plastic Strain 5 6
(
σφ:σθ =6:5)
Normalized Loading
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Axial loading Pressure Axial Loading T
Pressure P Equivalent Plastic Strain
Normalized Loading
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Axial loading Pressure Axial Loading T
Pressure P
(b) α =13