第 3 章 シギ・チドリ類の生息地に影響を与える要因の抽出と構造化
3.2 要因の構造化と既存の研究レビュー
鳥類学・河川工学・干潟の研究者を対象として行ったアンケート調査(図 3‐1f)で は、20 名全員から回答が得られた。これらの回答結果から、1 群‐2群、2 群‐3 群間 の関連性についての得点を求め、要因の構造化を行った(図3‐1g、図3‐2)。
シギ・チドリ類の生息地の状態(図3‐2:1群=State)のうち、「生息地面積の減少
/生息地の物理環境・水質の変化」に関わる要因(2 群=Pressure)としては、A(237 点)・B(329点)が最も高く評価されており、C(55点)・D(26点)がこれに次い だ。「構造物による飛翔阻害」に関わる要因としては、A(58点)との関連性が高く評 価されていた。「人為的攪乱」に関わる要因としては、A(100 点)との関連性が最も 高く評価されており、D(38点)がこれに次いだ。「生物資源の過剰利用」に関わる要 因としてはD(13点)、「捕食・他種との競合」に関わる要因としては、E(24点)と の関連性が評価されていた。
圧力(2群=Pressure)と駆動因(3群=Driver)の関連性については、「都市開発・
農地開発」とA(254点)・B(159点)との関連性が最も高く評価されており、C(50 点)・D(54点)がこれに次いだ。Bは様々な要因との関連性が評価されており、「都 市開発・農地開発」による直接的な影響(159 点)の他、A・D を通した「他の種の繁 栄」(26点)やAを通した「富栄養化・汚染物質やゴミの流入」(81点)、ダムの建 設やA(66点)などの「流域環境の改変」(102点)、「気候変動・地質学イベント」
(153点)との関連性も高く評価されていた。「気候変動・地質学的イベント」はA(23 点)との関係性、「他の種の繁栄」はE(21点)との関連性についても評価されていた。
本研究で抽出した各圧力(2 群=Pressure)がシギ・チドリ類の生息地の状態(1 群
=State)や個体数・分布域に及ぼしている影響(1 群=Impact)について、国内外の研
究レビューを行ったところ(表3‐9)、海外においては、数多くの研究が行われている ことが明らかとなった。生息地面積の減少については A・C、生息地の物理環境・水質 の変化についてはB・C、人為的攪乱についてはA・D、構造物による飛翔阻害について はA、生物資源の過剰利用についてはD、捕食者との競合についてはEと関連した研究 が行われていた。ただし、Bの「ゴミの漂着」と関連した研究はなかった。またEにつ いては、「他種との競合」と関連した研究はなかった。国内では研究事例が非常に少な かった。
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図3-2.生息地に影響を与えると考えられる要因の構造化。数字(かっこなし)は構造化のためのアンケートによる得点、数字(かっ こあり)は、モニタリング調査員を対象としたアンケート調査の回答地点数および文献調査の該当地点数の合計値を表す。構造 化のためのアンケートにおいて得点が50点以上であった関係性を太い矢印で示した。
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表3-9.シギ・チドリ類の生息に影響を与える要因についての研究レビュー。
大分類 図3-2の記号 具体的内容 海外の研究 国内の研究
生息地面積の減少(habitat loss)
A・C 生息地面積の減少 Goss-Custard and Yates 1992;
Yates and Goss-Custard 1996;
Goss-Custard et al. 2006;
Burton et al. 2006; West 2006;
Chan et al. 2007; Moores et al.
2008; Nebel et al. 2008
天野2006; Amano et al. 2010
生息地の物理環境・水質の変化 (habitat degradation)
B 水質 Morris and Keough 2003
-B 底質 Yates et al. 1993, Granadeiro et
al. 2004; Zharikov 2009
川路ほか1977; 森田ほか1997
B 海岸侵食 Dugan et al. 2008
-B 植生拡大 Ge 2009
-B 海藻類の繁茂 Cabral et al. 1999, Lopes et al.
2000, 2006; Múrias et al. 1996;
García et al. 2010
-B ゴミの漂着 -
-C 水田の乾燥地化 Elphick and Oring 1998, 2003;
Taft and Haig 2006
渡辺2001, 2006; Fujioka et al.
2001; 前田・吉田 2009 人為的攪乱(human disturbance)
A 工事による阻害 Burton et al. 1996, 2002a, b
-D レクリエーション等 Smit and Visser 1993; Lafferty 2001; Burger et al. 2004; Paters and Otis 2007; Yasue 2005, 2006; Thomas et al. 2003;
Rogers et al. 2006; Stillman et al. 2007
-建築物による飛翔阻害(flight disturbance)
A 建築物による飛翔阻害 Jhonson et al. 2002
-生物資源の過剰利用(over-exploitation)
D 狩猟 Bamford 1992; Barter et al.
1997; Warnock et al. 2001 -D 底生生物の捕獲 Shepherd and Boates 1999; Niles
et al. 2009; Stillman et al. 2001;
Sweka et al. 2007; Kraan et al.
2009
-捕食・他種との競合(predation and conpetition)
E 捕食 Lind and Cresswell 2006;
Pieasma et al. 2006; Cresswell and Whitfild 2008; van den Hout et al. 2008; Zharikov 2009
-E 他種との競合 -
-※Bについては10地点以上の回答数があった項目のみレビューを行った。
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