4. 拡張現実感技術による現場検証用映像生成
4.5. 評価実験
4.5.3. 複数視点による演技者支援の評価実験
本実験では,HMD のカメラから取得した一人称視点の映像のみで演技する場合と Web カメラから取得した三人称視点の映像を追加した映像を提示して演技する場合と で演技者が仮想物体との位置関係の把握のしやすさの検証を行う.
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
補完無
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
補完有 補完無
[object]
on off
[frame]
[object]
on off
[frame]
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30歳代の男女3人に本システムを使用し,三人称視点映像追加提示の有無による位 置関係の把握しやすさの検証を行った.三人称視点映像の有無の HMD の画面を図
4.5.10 に示す.2 台のWeb カメラからの映像を図4.5.10(b)に示すように右上に提示し
た.三人称視点映像を演技者視点の映像に提示することで仮想オブジェクトの奥行き や位置関係が把握しやすくなり,操作しやすいことが確認できた.
また,三人称視点映像の提示の有無による仮想物体との位置関係の把握の定量評価 として,仮想オブジェクトを表示させるマーカを2 つ準備する.これまでの評価実験 と同様に1つめのマーカは凶器用マーカで仮想凶器を表示させる.もう1つのマーカ は被害者オブジェクトを想定し,1辺が250mmサイズの立方体オブジェクトを表示さ せる.形状を立方体にすることで仮想凶器との位置関係の推移を容易にする.そして,
仮想凶器と立方体オブジェクトの位置関係の把握について被験者実験を行う.被験者 には HMD を装着してもらい,手には凶器用マーカを持ってもらう.初期位置として
図4.5.11(a)に示すように仮想凶器の先端と立方体オブジェクトの間を約300mm離す.
図 4.5.11(b)に示すタスク 1 では仮想凶器を立方体オブジェクトに徐々に近づけても
らい立方体オブジェクトと接触する寸前と思った瞬間に仮想凶器の移動を止めてもら う.そのときの仮想凶器と立方体オブジェクト間の距離の誤差と仮想凶器の移動にか かった時間を計測する.このタスク 1を三人称視点映像の提示の有無について行い比 較する.次に図4.5.11(c)に示すタスク2 ではタスク1 と同様の操作を行うが,仮想凶 器を止める位置を立方体オブジェクトの手前50mmに設定する.そして,タスク1と 同様に仮想凶器と立方体オブジェクト間の距離の誤差と仮想凶器の移動にかかった時 間を計測し,三人称視点の提示の有無による比較を行う.実験風景を図4.5.12に示す.
タスク1の実験結果を図4.5.13にタスク2の実験結果を図4.5.14に示す.タスク1,
タスク2 の両結果より三人称視点映像を追加して提示することで仮想凶器を移動させ た後の立方体オブジェクトの指定位置までの距離の誤差が小さくなり,移動時間も短 縮されたことが確認された.三人称視点の映像を追加し提示することで仮想オブジェ クト同士の奥行きや位置関係の情報を視覚的に取得できるようになり,正確に早く操 作できるようになったことが確認できた.
(a) 三人称視点無し (b) 三人称視点有り
図4.5.10 三人称視点有無による評価実験
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(a) 初期位置
(b) タスク1
(c) タスク2
図4.5.11 三人称視点の有効性の評価実験タスク
(a) 一人称視点画面 (b) 三人称視点画面 (c) 三人称画面追加 図4.5.12 実験風景
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(a) 距離の誤差 (b) 移動距離
図4.5.13 タスク1の三人称視点追加有無による比較
(a) 距離の誤差 (b) 移動距離
図4.5.14 タスク2の三人称視点追加有無による比較
また,対象物の大きさに対しての操作性を確認するため,立方体オブジェクトのサ イズによる操作の評価を行った.立方体オブジェクトのサイズが一辺250mmと100mm の場合で被験者にタスク1 を行ってもらい比較を行った.これを三人称視点映像の提 示の有無で評価する.その結果を表 4.5.15に示す.三人称視点の追加により操作性の 向上は確認できた.立方体オブジェクトが小さくなると三人称視点映像では見づらい ことがわかった.今後は三人称視点映像の提示サイズに関して検討する必要がある.
0 20 40 60 80
無 有
距離の誤差(mm)
0 10 20 30 40
無 有
移動時間(s)
0 20 40 60 80
無 有
距離の誤差(mm)
0 10 20 30 40
無 有
移動時間(s)
三人称視点提示 三人称視点提示
三人称視点提示 三人称視点提示
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仮想凶器用マーカと被害者用マーカの2 つのマーカ間の角度を計測することで立方 体オブジェクトに対する仮想凶器の角度がわかる.そこで,仮想凶器と立方体オブジ ェクトが指定角度で正確に真っ直ぐ移動しているかの評価実験を行った.実験タスク は被験者に仮想凶器を仮想オブジェクトに対して右側から 30°と 45°の角度と下側
から30°と45°の角度で基準面から300mm離れた位置から基準面に近づけてもらう.
仮想凶器が立方体オブジェクトに接触すると被験者が思ったときに操作を止めてもら い,そのときの仮想凶器の角度と移動時間を計測する.これを三人称視点映像の提示 の有無で評価する.その結果を表4.5.16 に示す.角度に対しても三人称視点映像を追 加することで正確に速く操作できることが確認できた.
表4.5.15 三人称視点追加有無による仮想オブジェクトサイズの比較
距離の誤差(mm) 移動時間(s)
三人称視点提示 無 有 無 有
サイズ100mm 31.80 9.67 33.91 24.90
サイズ250mm 33.96 12.37 19.94 14.87
表4.5.16 三人称視点追加有無による仮想凶器の操作方向の比較
角度の誤差(°) 移動時間(s)
3人称視点提示 無 有 無 有
右側30° 4.82 2.79 16.24 15.27
右側45° 6.48 1.97 18.04 15.40
下側30° 4.78 2.23 16.82 15.38
下側45° 6.14 2.08 17.90 16.12
検証実験においていくつか予期していなかった問題や課題も明らかになり,解決方 法を実装した.三人称視点映像のサムネイル画像の提示位置について,改善前は図 4.5.17(a)のようにサムネイル表示する位置を画面右下へ表示していた.しかし,被験者 より右手に凶器用マーカを持つと画面のサムネイル表示部分と仮想凶器が重なってし まい,仮想凶器が見えづらいとの指摘があった.改善後は図 4.5.17(b)のようにサムネ イル画像を右上に表示するようにすることで仮想凶器の操作と三人称視点のサムネイ ル画像が重ならないようにした.
次に凶器用マーカについて図4.5.18(a)のように平面的に配置したマーカを作成し た.しかし,仮想凶器を回転させると凶器用マーカがカメラの視野から完全に検出で きなくなり,仮想凶器を表示できない場合があった.そのため,マーカを意識的にカ メラに認識できるように動かさなければならない場合があった.演技者が自由に仮想
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凶器を動かせなければ,演技が制限され提案手法の本来の目的が達成できなくなる.
そこで,どの方向からでもカメラから凶器用マーカを認識できるように凶器用マーカ の配置を図4.5.18(b)のように立体的に配置した.立体的にマーカを配置することで 仮想凶器を回転させてもカメラからマーカを撮影できるため,演技者は意識せず自由 な演技が可能となった.
また,図 4.5.19 に示すように仮想凶器と被害者モデルの相対的な距離と角度をディ
スプレイ上に表示させるようにした.この機能は利用者が解剖報告書との整合性をシ ュミレーションするために使用できると考える.距離と角度は,対応する 2 つのマー カの位置から計算される.ユーザはこの情報の表示の有無を選択することができる.
(a) 右下表示 (b) 右上表示
図4.5.17 サムネイルの画面表示位置
(a) 平面配置 (b) 立体配置
図4.5.18 凶器用マーカ
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図4.5.19 距離と角度情報の表示