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か,PCPS では充分な補助ができず肺うっ血や多臓器障 害が進行する場合などには補助人工心臓装着の適応とな る.また,PCPS の適応が困難な場合は,PCPS を経由
せず LVAS の装着を検討する.心筋炎に対する LVAS
は心機能回復の場合に取り外しの比較的容易な体外設置 型を使用することが多い.
(3)慢性心不全の急性増悪
特発性心筋症(DCM,拡張相肥大型心筋症)や虚血 性心筋症による慢性心不全では,可能な限り急性増悪を 来たす前に,また臓器障害が進行する前に補助人工心臓 装着の適応を決定する必要がある.さらに,β遮断薬治 療を含む適切な内科的治療にても,BNP 値の上昇傾向 を認める場合,強心剤依存状態で徐々に増量を要する,
または頻回の不整脈発作を起こす場合には適応について 考慮する.加えて,慢性心不全の急性増悪で致死性不整 脈を発症したり,ショック状態となった場合,PCPS で の蘇生処置後,中枢神経系の不可逆的障害がなければ,
速やかに補助人工心臓装着を検討する.乏尿,CVP>16 mmHg,人工呼吸,プロトロンビン時間(prothrombin time, PT)>16秒,総ビリルビン値4mg/dL 以上の肝障 害などは補助人工心臓装着術の予後不良因子として知ら れており75,76),時期を逸せずに補助人工心臓植え込みに 踏み切ることを検討する.
しかし,わが国ではまだLVAS の使用が限られてい る.現時点では心臓移植の明らかな禁忌がある場合には
LVAS の適応は慎重になされるべきである.従って,
LVAS 装着前に,心臓移植の適応となりうるか否かの判
断のため心臓移植施設への早期のコンサルトが必要であ る.
後に述べる埋め込み型 LVAS や小型の定常流LVAS などによる永久使用目的での循環補助も現実のものとな ってきていることから,将来的には心臓移植適応の可否 に関わらず,こういった症例に対する LVAS の適応も なされるようになると考えられる.
(4)弁膜症
急性僧帽弁逆流は腱索断裂,感染性心内膜炎,外傷,
AMI に伴う乳頭筋断裂などが原因で生じる.急激なうっ 血性心不全を来たす場合には,IABP により状態安定を 図り,速やかに手術に踏み切る必要がある.感染性心内 膜炎,外傷,急性大動脈解離などによる急性大動脈弁逆 流でも急速なうっ血性心不全や,ショックを来たす場合 がある.この際はIABP が使用できないため,必要且つ 図 8 補助循環を用いた急性心不全の治療体系
恒久的使用 主な適応
AMI,急性心筋炎,慢性心不全の急性増悪,弁膜症などで,適切な薬物治療にも関わらず 以下の基準を満たす心原性ショックや難治性心不全
(NYHA IV,収縮期血圧<90 mmHg,心係数<2.0 L/min/m2,肺動脈楔入圧>20 mmHg)
離脱
PCI/手術
(AMI,弁膜症の場合)
ブリッジ療法
IABP/PCPS
心筋症の場合は
心臓移植の禁忌がないことを予め確認
補助人工心臓
心臓移植
表 23 急性重症心不全に対する補助循環 クラスⅠ
・薬物治療の限界を超えた重症心不全症例,診断治療に 至るまでの急性僧帽弁閉鎖不全,心室中隔穿孔,重症 心筋虚血症例に対するIABP による治療:レベルB
・急性心筋炎による重症心不全,致死性不整脈に対する IABP,PCPS による治療:レベルC
クラスⅡa
・薬物治療の限界を超えた重症心不全で回復の可能性あ るいは心臓移植適応のある症例に対する補助人工心臓 による治療:レベルB
可能であればPCPS により循環を維持し,速やかに手術 を行う.
2
)機械的補助循環の種類と各々の適応補助循環を用いた急性心不全の治療体系を図 8 に,
機械的補助循環の種類とその特徴を表24に示す.
(1)大動脈内バルーンパンピング(IABP)
(A)IABP とは
IABP は,大動脈内にバルーンを挿入・留置し,これ を拡張期に膨張させ,収縮期に収縮させる.これによっ て,心収縮期にはバルーンの収縮による吸引効果を介し た駆出量増加,及び後負荷の減少による心筋酸素消費量 減少(systolic unloading)を,心拡張期には拡張期圧の 上 昇 に よ っ て 冠 動 脈 血 流 を 増 加 さ せ る (d i a s t o l i c augmentation).
(B)適 応
IABP は簡便な循環補助装置であるので,内科的治療 に抵抗する急性心不全,心原性ショックでまず試みられ るべきものである.心原性ショックに至らなくても,多 量の薬剤投与にても心不全所見や虚血心では心電図上虚 血性変化,狭心痛などを有するものにはその適応を考え る.また急性冠症候群における PCI において,血行動 態が不安定またはそれが危惧される場合の,IABP によ る循環の安定化の有用性は広く知られている.
(C)禁 忌
中程度以上の大動脈弁閉鎖不全を合併する症例,胸部
あるいは腹部に大動脈解離,大動脈瘤を有する症例では 禁忌である.大動脈に高度の粥状動脈硬化病変を有する 症例,下肢の閉塞性動脈硬化症を合併した症例に対する 使用は慎重におこなわれなければならない.
(D)方 法
挿入するバルーンは原則的に患者の体格により選択す る.身長140cm 以下:30cc,身長141-160cm:35cc,
身長161cm 以上:40cc.大腿動脈からのバルーンの挿
入法は刺入部からsternal notch までの距離をバルーンカ テーテルで計測し,この長さだけ挿入するのが簡便な目 安である.バルーン固定後,胸部 X 線写真を撮影し,
バルーン先端が胸部下行大動脈起始部付近にあることを 確認する.バルーンの拡張および収縮のタイミングは 2:1モードで心電図波形と動脈圧波形を観察しながら,
心電図の R 波のピークでバルーンを収縮させ,重拍切
痕(dicrotic notch)でバルーンを拡張させ,その後,
1:1モードに変更するのがよい.
IABP からの離脱を図るときには,バルーンの補助回
数を2:1で6-12時間,そして4:1を2-6時間おこな って血行動態を監視する.血行動態に特に変化がなけれ ば抜去する.抜去は挿入1週間以内であれば用手圧迫止 血で十分である.
(E)合併症77)
a.下肢の虚血
IABP の挿入による刺入部より末梢側の下肢の血流不
全は,特に動脈硬化により末梢動脈の閉塞性変化が強い 患者にしばしばみられる.下肢の虚血は発見,対処が遅
表 24 機械的補助循環の種類とその特徴
IABP 両心 急性冠症候群 中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症 下肢虚血 内科的治療に抵抗する急性心不全 大動脈解離・大動脈瘤 出血
不安定狭心症 高度の大動脈粥状硬化症 動脈損傷(動脈解離を含む)
下肢閉塞性動脈硬化症 神経障害 バルーンの損傷 PCPS 心肺 ショック,重症不整脈時の蘇生 下肢閉塞性動脈硬化症 下肢虚血
短期間回復可能例での循環補助 左心系うっ血
呼吸不全合併循環不全 出血
塞栓症 体外設置型補助人工心臓 両心 小体格成人,小児も可 主要臓器の不可逆的障害 塞栓症
両心不全 重症感染症 感染
自己心機能回復及び心移植 入院継続必要
へのブリッジ
体内埋め込み型補助人工心臓 左心 長期左心補助 主要臓器の不可逆的障害 塞栓症 自己心機能回復及び心移植 重症感染症 感染
へのブリッジ 外来通院時
BSA >1.5 m2以上 自己管理
補助 適応 禁忌 注意点
れると重篤な合併症に移行するので,最も注意を要する.
下肢温,足背動脈の拍動のチェックを怠ってはならない.
万が一,下肢の虚血症状が出現した場合は,早期抜去を 目指すか,シースの抜去,対側または腋窩動脈からの IABP の再挿入が必要となる.
b.動脈損傷(動脈解離を含む)
カテーテル挿入時にシースやガイドワイヤーなどで動 脈を損傷する可能性がある.このような合併症が発生し た場合,程度にもよるが多くはIABP による補助は困難 となる.
c.神経障害
一過性の異常感覚や知覚鈍麻などの軽症のものから尖 足,対麻痺などの重症なものまで報告されている77).原 因は不明なことが多いが,大動脈の解離と前脊髄動脈の 塞栓が原因とも言われている.
d.バルーンの損傷
バルーンが破裂し一度にヘリウムガスが漏れると重症
なgas embolism を起こすことがある.また,バルーン
の中に流入した血液が凝固することにより大動脈内より 抜去不能となることもある(balloon entrapment).バル ーンの損傷はunwrapping が不十分でシースの中を無理 矢理挿入したり,乱暴なバルーン挿入によって起こるこ とが多い.破裂は駆動中の頻回のガスリーク警報で推測 することができ,バルーン内への血液の逆流で確認する ことができる.バルーンの損傷が確認された場合は,即 座にバルーンを交換することが必要である.
(2)経皮的心肺補助法[PCPS(V-A バイパス)]
(A)PCPS とは
IABP は流量による補助ではなく圧による補助のみで あるので,その補助効果には限界があり,実際に心臓の 働きを肩代わりするポンプが必要となる際の簡便な方法 として,PCPS が開発された78).PCPS は大腿静脈より脱 血,酸素化血液を大腿動脈に返血することにより右室左 室両心の補助を行うものである.その簡便さから循環補 助あるいは呼吸補助装置として応用されている.また,
ヘパリンコ―ティング回路の普及により,施行時のトラ ブルも減少してきており,今後ますます応用範囲が広が ることが予想される79).
(B)適 応
PCPS は,IABP を用いても循環補助が不十分な症例
や,心停止あるいは心原性ショック症例に対する緊急心 肺 蘇 生 や 重 症 冠 動 脈 疾 患 症 例 の PCI 時 の 循 環 補 助
(supported PCI)に適用される.この他,急性呼吸不全 に対する呼吸補助,肺や気管支及び大血管手術の補助手 段としても用いられている.
(C)禁 忌
動脈硬化性病変が強い症例,小体格で大腿動脈が細く カニュレーションができない症例,また両側の大腿静脈 が閉塞している症例には適応が困難である.このような 症例では開胸手術により,直接右心房と上行大動脈にカ ニュレーションするか,LVAS の装着を行う.中等度以 上の大動脈弁閉鎖不全症を有する症例は,PCPS による 流量補助により左室負荷が増大する可能性があり,同様 に,左室収縮機能が極度に悪化した症例においても,
PCPS 補助により上昇した後負荷のために左室の負荷が
増大する可能性がある.このような症例では,後述する 経皮的左心バイパスまたは LVAS によって左室を直接 減圧する手段を要する.
(D)方法及び管理
a.送脱血カニューレの留置
一般的にはブラッド・アクセスとしては大腿動静脈が 用いられるが,呼吸不全を合併した場合,自己心の拍出 が多いと大腿動脈から酸素化血液を送血しても,頸動脈 や冠動脈に十分に酸素化血がいかないことがある.この ようなことが予想されれば腋窩動脈や鎖骨下動脈が送血 部位として選ばれる場合もある.
b.運転の開始
運転の開始時には遠心ポンプを1000回転以上で回転 させてから,ゆっくりとクランプをはずす.遠心ポンプ の回転数は流量をみながら,所定の流量に達するまでゆ っくりと上昇させる.15Fr.の送血管,21Fr.の脱血管 を使用した平均的流量は2-3L/min である.流量は循環 血液量,送血管・脱血管のサイズ,位置に規定されるが,
最大の流量を得たい場合は,遠心ポンプの回転数を上昇 させても流量が上昇しなくなる回転数より少し低い回転 数に設定するのがよい.
c.抗凝固薬療法
ヘ パ リ ン を 用 い て 活 性 凝 固 時 間 (a c c e l e r a t e d coagulation time; ACT)を 200-250秒に維持する.回路 及 び 人 工 肺 表 面 を ヘ パ リ ン に て コ ー テ ィ ン グ し た system を用いる場合には,ACT を150-200秒に減量維