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 2001年6月の司法制度改革審議会意見書は、裁判官制度について、「判事の給源の多様化、多元化」

「裁判官の任命手続の見直し」「裁判官の人事制度の見直し」等を掲げた。

 日本の裁判官や検察官の大半は、司法修習を終了した後、直ちに判事補や検事としてそのルートに 乗った人たちである。しかし、それでは組織が制度疲労を起こしかねない。弁護士経験を積んだ人が裁 判官や検察官になれば、それらの職務によい影響を及ぼすことが期待できる。これを「弁護士任官」と 呼んでおり、以前から取組まれていたが、より強力に推進するため、日弁連と最高裁判所で協議を行い 取りまとめが成立し新しい弁護士任官制度が開始された。さらに、日弁連と最高裁判所の協議によっ て、民事・家事調停事件に弁護士が非常勤で裁判官役を担当する非常勤裁判官制度が導入されることに なった。

 また、多様で豊かな知識・経験を備えた判事を確保するため、判事補に裁判官の職務以外の多様な法 律家としての経験(弁護士、検察官等が基本)を積ませる仕組みを整備すべきであるとされた。検事に も同様の仕組みを作ることが求められ、一括して判事補・検事の弁護士職務経験に関する法律の制定に 至った。

 任命手続については、1970年代以降、思想・信条によると思われる判事への再任拒否・新任判事補任 官拒否が続いたこともあって、透明でない指名過程を見直し、その過程に国民の意思を反映するための 機関(指名諮問委員会)が設置されることになった。

 人事制度についても、人事評価について透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すべきである とし、そのための規則が制定された。

 その他、特例判事補制度の解消や裁判所運営への国民参加(地裁委員会新設、家裁委員会改組)も提 言された。

■資料2-5-5-1 裁判官制度のあゆみ■

2001年12月 弁護士任官等に関する協議の取りまとめ(日弁連・最高裁)

2002年 8月 いわゆる非常勤裁判官制度の創設について(日弁連・最高裁)

2002年11月 第19回司法シンポジウム(全ブロックに推薦委員会設置)

2003年 2月 下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則 2003年 4月 地方裁判所委員会規則

2003年 6月 第1回指名諮問委員会開催 2004年 1月 非常勤裁判官制度発足

裁判官の人事評価に関する規則

2005年 4月 判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律の施行

 裁判官給源の多様化として、判事補の弁護士職務経験 制度・弁護士任官の推進の仕組み・非常勤裁判官制度等 が作られた。任命手続の見直しでは下級裁判所裁判官指 名諮問委員会が設置され、思想・信条による差別は基本 的に排除出来るようになった。人事制度の見直しでは、

これまで評価していることすら明らかにされなかった裁 判官人事評価制度を明確な形で制度化し、開示や不服申 立手続を定めるとともに、外部情報も一定程度活用され るようになった。

 いずれも、これまで裁判所のことは外部に一切関与さ せようとせず、司法行政についてはブラックボックスの まま進めてきた最高裁判所中心の司法行政に対し、透明 化し恣意的評価を許さない制度を創設したという意味で は、大きな制度改革と言えるものである。

 しかし、その後の実際の運用では制度改革の趣旨を発 展させていく方向ではなく、裁判所が以前から行ってき た慣行に近付け、裁判所の殻の中で納めようという傾向 が強まっているのではなかろうか。弁護士職務経験者数 が増えない、弁護士任官も停滞気味、指名諮問委員会で

は外部情報収集の幅が極めて限定的で各地域委員会の 役割も限定的に運用されているなどと指摘されているこ と、人事評価については2004年に裁判所より各弁護士 会に通知されただけでその後は積極的に外部情報を得る ための広報をしていないこと、などの現象として現れて いる。

 弁護士自身も、裁判所・裁判官のあり方を点検し、よ りよい司法にしていくために各制度を活かしていこうと いう意識が弱いところがある。担当している裁判官名す ら知らない者も多く、外部情報として積極的に提供し改 革していこうとする姿勢はいまだ不十分な状態にある。

 今後どのような方向に向かうのか、制度改革の趣旨を 発展させ透明な裁判所・裁判官制度にしていくのか、そ れとも以前に回帰する方向に向かいブラックボックスの 不透明な裁判所と司法行政にしてしまうのか。運用は後 者の方向に傾きがちなので、今後の取組で大きな方向転 換をさせることが必要となる。裁判所自体が今後の司法 のあり方をどう考えるのか、弁護士が今後の司法を本当 に担っていこうとしているのか、正念場である。

裁判官・裁判所改革 -どこまで変わり、どこに向かっているか

明賀 英樹

(大阪弁護士会・元日弁連事務総長)

◆コラム◆

■資料2-5-5-2 判事補・検事の弁護士職務経験制度の実績状況■

弁護士会   2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 第1期 第2期 第3期 第4期 第5期 第6期 第7期 第8期 累 計

東京 判事補 1 3 0 3 1 0 3 3 14

検事 1 0 2 2 3 1 4 0 13

第一東京 判事補 5 2 5 4 4 5 2 2 29

検事 1 3 1 2 1 1 0 2 11

第二東京 判事補 2 2 2 0 1 1 0 2 10

検事 0 1 1 0 0 2 1 3 8

大阪 判事補 2 2 2 2 2 2 2 3 17

検事 1 1 1 1 1 1 1 2 9

福岡県 判事補 − 1 − − − − − − 1

愛知県 判事補 − − − 1 1 1 1 1 5

合 計 13 15 14 15 14 14 14 18 117

(単位:人)

特集2

■資料2-5-5-3 弁護士任官者数(常勤任官者)(弁護士会連合会別)■

■資料2-5-5-4 弁護士任官者数(非常勤任官者)(所属庁別)■

(単位:人)

任官年度 関東 近畿 中部 中国地方 九州 東北 北海道 四国 合計

1992 2 4 0 0 0 0 0 0 6

1993 3 4 0 0 0 0 0 0 7

1994 2 6 0 0 0 0 0 0 8

1995 0 2 0 0 0 0 0 0 2

1996 1 2 2 0 0 0 0 0 5

1997 3 1 0 0 1 0 0 0 5

1998 2 0 0 0 0 0 0 0 2

1999 3 1 0 0 0 0 0 0 4

2000 4 0 0 0 0 0 0 0 4

2001 3 0 1 0 0 0 0 0 4

2002 3 2 0 0 0 0 0 0 5

2003 5 4 1 0 0 0 0 0 10

2004 5 1 0 1 1 0 0 0 8

2005 4 0 0 0 0 0 0 0 4

2006 2 1 1 0 1 0 0 0 5

2007 4 2 0 0 0 0 0 0 6

2008 2 1 0 1 0 0 0 0 4

2009 5 1 0 0 0 0 0 0 6

2010 1 0 0 0 0 0 0 0 1

2011 2 2 0 0 1 0 0 0 5

2012 2 1 0 1 1 0 0 0 5

合 計 58 35 5 3 5 0 0 0 106

所属庁

2004年 1月

2004年 10月

2005年 10月

2006年 10月

2007年 10月

2008年 10月

2009年 10月

2010年 10月

2011年 10月

2012年

10月 累計

第1期 第2期 第3期 第4期 第5期 第6期 第7期 第8期 第9期 第10期

任官者数 任官者数 任官者数 任官者数 任官者数 任官者数 任官者数 任官者数 任官者数 任官者数 東 京 民事家事 7 5 10 2 8 1 10 5 5 9 8 8 1 4 4 9 1 12 5 114

横 浜 民事 2 2 1 1

家事 2 1 3 2 2 16

川 崎 民事 1 1 2

さいたま 民事 1 1 2 11

家事 2 1 1 2 1

千 葉 民事 2 1 1 2 1 10

家事 1 1 1

大 阪 民事 4 4 3 6 3 5 2 6 2 5

家事 3 2 1 5 1 4 2 2 2 62

堺 民事 1 1 1 3

京 都 民事 2 1 1 2 2 1

家事 1 1 1 1 1 14

神 戸 民事 2 2 1 1 2 2 1 14

家事 1 1 1

名古屋 民事 3 2 4 6 3 5 40

家事 3 3 1 2 3 2 1 2

広 島 民事 2 1 1 1 1 1 1

家事 1 1 10

福 岡 民事 2 2 2 3 2 3

家事 1 1 1 1 1 1 20

小 倉 民事 1 1 2

仙 台 民事 2 1 1 1 1 1 1 10

家事 1 1

札 幌 民事家事 2 1 1 1 2 1 2 1 3 1 1 2 1 19

高 松 民事 1 1 1 1 1 5

合  計 30 28 32 58 17 50 22 49 22 44 352

【注】2012年度は10月1日現在の数である。

(単位:人)

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