65
66
8-2 実験概要
鉄筋の有無による共振周波数の違いを計測するため、計測対象はコンクリート内部の樹脂 シース管内部が空洞になっている供試体
a
と樹脂シース管中に鉄筋のある供試体b
用い、5
GSa/s
のサンプルレートで波形を取得した。寸法はいずれもW150
×H150×D400 mm であり、計測対象および打撃に用いたドライバーを
Fig. 8-2-1
に示す。また、計測点はFig. 8-2-2
(a)受信波形(b)周波数スペクトル Fig. 8-1-2 衝撃弾性波法結果例
-3
-2 -1 0 1 2 3
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
1次モード 2次モード
67
に示した点とし、計測点1、2、3
に関してはコンクリート上面に
AE
センサを配置し、コンクリート上面に打撃を与えた。また、計測点 鉄筋端部にAE
センサを配置し、AEセンサとは反対側の鉄筋端部に直接打撃を与えた。な お、いずれの計測においてもAE
センサと計測対象はろう付けを行い、弾性波が伝わりやす いよう計測を行った。68
(a) 供試体 a(鉄筋無し)
(b) 供試体 a(鉄筋無し)側面
(c) 打撃に用いたドライバー
Fig. 8-2-1 計測対象および打撃に用いたドライバー
69
(a)供試体 b(鉄筋有り)
(b)供試体 b(鉄筋有り)側面 Fig. 8-2-1 計測対象
(a) 計測点
(b) ろう付けの様子
(c) 計測点 4 の様子 Fig. 8-2-2 計測点
コンクリート上面
計測点1
計測点2 計測点3
計測点4
70
8-3 衝撃弾性波法による鉄筋コンクリートの固有振動数計測
・供試体 a 計測点 1
供試体
a
はコンクリート内部の樹脂シース管が空洞となっているものであり、計測点1
は コンクリート上面端部の点である。実験によって得られた受信波形と、その波形をフーリエ 変換して得られた周波数スペクトルをFig. 8-3-1
に示す。(a) 受信波形
(b)周波数スペクトル Fig. 8-3-1 供試体 a 計測点 1 結果
-4.00E+00
-3.00E+00 -2.00E+00 -1.00E+00 0.00E+00 1.00E+00 2.00E+00 3.00E+00
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
71
Fig. 8-3-1
より、2600 Hz 、5000 Hz、7300 Hz付近でピークがみられ、これらが固有振動数であると考えられる。
・供試体 a 計測点 2
計測点
2
は鉄筋直上のコンクリート端部の点である.実験によって得られた受信波形と、そ の波形をフーリエ変換して得られた周波数スペクトルをFig. 8-3-2
に示す。(a) 受信波形
(b)周波数スペクトル Fig. 8-3-2 供試体 a 計測点 2 結果
-3
-2 -1 0 1 2 3 4
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
72
Fig. 8-3-2
より,2600 Hz 、7300 Hz付近でピークがみられ,これらが固有振動数であると考えられる。
・供試体 a 計測点 3
計測点
2
は鉄筋直上のコンクリート端部の点である。実験によって得られた受信波形と、その波形をフーリエ変換して得られた周波数スペクトルを
Fig. 8-3-3
に示す。(a) 受信波形
(b)周波数スペクトル Fig. 8-3-3 供試体 a 計測点 3 結果
-3
-2 -1 0 1 2 3
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
73
Fig. 8-3-3
より、2600 Hz 、5000 Hz、7300 Hz付近でピークがみられ、これらが固有振動数であると考えられる。
計測点
1
および3
においてほとんど同様の位置にピークが見られた。また、計測点2
についても
5000 Hz
付近でのピークは確認されなかったものの、2600 Hz、7300 Hz付近でのピークはみられた。以上のことから、コンクリート内部が空洞となっている供試体の固有振動
数は
2600 Hz、5000 Hz、7300 Hz
程度の周波数であると考えられる。・供試体 b 計測点 1
供試体 b はコンクリート内部の樹脂シース管中に鉄筋があるものである。計測点 1 はコン クリート上面端部の点である。実験によって得られた受信波形と、その波形をフーリエ変換 して得られた周波数スペクトルを
Fig. 8-3-4
に示す。Fig. 8-3-4より、1000 Hz付近にピーク がみられ、これが固有振動数であると考えられる。74
(a) 受信波形
(b)周波数スペクトル Fig. 8-3-4 供試体 b 計測点 1 結果
-3
-2 -1 0 1 2 3
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
75
・供試体 b 計測点 2
計測点
2
は鉄筋直上のコンクリート端部の点である。実験によって得られた受信波形と、その波形をフーリエ変換して得られた周波数スペクトルを
Fig. 8-3-5
に示す。Fig. 8-3-5 よ り、1000 Hz付近にピークがみられ、これが固有振動数であると考えられる。(a) 受信波形
(b)周波数スペクトル Fig. 8-3-5 供試体 b 計測点 2 結果
-3
-2 -1 0 1 2 3
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
76
・供試体 b 計測点 3
計測点
2
は鉄筋直上のコンクリート端部の点である.実験によって得られた受信波形と、そ の波形をフーリエ変換して得られた周波数スペクトルをFig. 8-3-6
に示す。Fig. 8-3-6より、1000 Hz、 4300 Hz、 9000 Hz
付近にピークがみられ、これが固有振動数であると考えられる。(a)受信波形
(b)周波数スペクトル Fig. 8-3-6 供試体 b 計測点 3 結果
-4
-3 -2 -1 0 1 2 3 4
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
77
・供試体 b 計測点 4
計測点
4
は鉄筋端部に直接AE
センサを接触させた点である。実験によって得られた受信 波形と、その波形をフーリエ変換して得られた周波数スペクトルをFig. 8-3-7
に示す.Fig.8-3-7
より、500 Hz、1000 Hz、4400 Hz付近にピークがみられ、これが固有振動数であると考 えられる。(a)受信波形
(b)周波数スペクトル Fig. 8-3-7 供試体 b 計測点 4 結果
-4
-3 -2 -1 0 1 2 3
-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
A m pl itud e[V ]
time[s]
-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
P ow er[dB V ]
Frequency[Hz]
78
計測点
1、2、3
ともに1000Hz
付近でピークが見られた。また、計測点3
においては1000
Hz
のほかに4300 Hz、9000 Hz
付近にピークがみられた。以上のことから、コンクリート内部に鉄筋がある供試体の固有振動数は
1000 Hz、 4300 Hz、 9000 Hz
程度であると考えられる。また、計測点
4
の結果から、コンクリート内部の鉄筋自身の固有振動数は500 Hz、 1000 Hz、
4400 Hz
程度であると考えられる。以上の結果より、コンクリート内部が空洞となっている供試体においては一次の固有振
動数が
2600 Hz
程度、コンクリート内部に鉄筋が存在する供試体においては一次の固有振動数が
1000 Hz
程度という結果が得られた。このことから、鉄筋コンクリートの固有振動数は内部に鉄筋が存在しない場合と比較すると低い。鉄筋の振動周波数は加振周波数の二倍 であり、本実験で得られた固有振動数は本論文で用いた加振周波数
263 Hz
及び465 Hz
で鉄 筋を加振させた際の鉄筋振動周波数526 Hz、930 Hz
に近いことがわかる。また、鉄筋自身 の固有振動数も一次が500 Hz、二次が 1000 Hz
程度と、本論文で行った実験での鉄筋振動 周波数と近いことがわかった。また、𝐸 𝐷 :動弾性係数 [N/ 2 ]、 L:供試体長さ [mm]、 d:円柱
供試体の直径 [mm]、b、 t:角柱供試体の断面の各辺の長さ [mm]、m:供試体の質量 [kg]、T:
修正係数とすると、JIS A 1127よりコンクリートの固有振動数𝑓
1
は式(8-3-1)、鉄筋の固有振 動数𝑓2
は式(8-3-2)より算出できる。𝑓 1 = √ 𝐸
𝐷𝑏𝑡
39 47×10
−4×𝐿
3×𝑇×𝑚 (8-3-1)
𝑓 2 = √ 𝐸
𝐷𝑑
41 61×10
−3×𝐿
3×𝑇×𝑚 (8-3-2)
これらの式を用いて算出したコンクリート及び鉄筋の固有振動数はそれぞれ
2580 Hz、487 Hz
となり、実験で得られた固有振動数と近い値となる。このことから、実験により得られ た固有振動数は信頼性の高い結果であるといえる。以上より、第