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行政電子化の意義と課題

ドキュメント内 The Executive Magazine from Unisys INDEX Vol.81 (ページ 56-66)

社団法人 行政情報システム研究所 理事長 百P 英氏

行政電子化の意義

●行政システムの全面的見直し−BPRの行政版

行政電子化は、行政改革を実施するための重要な手段 としての意義を有する。昭和30年頃から、わが国の行 政にもコンピュータが導入された。その頃の行政の電子 化は、コンピュータを用いた行政機関内部の大量定型業 務の処理が中心で、省力化・効率化が主な狙いであった。

最近は行政機関相互間はもとより、行政と国民(住民) との間もネットワークを整備して、いろいろな事務を処 理するという形に大きく変貌しつつある。つまり、行政 の電子化は、 手作業部分を機械処理に置き換える と いうだけではなく、最もその効果を発揮するために、行 政のシステム(行政制度、組織、運営など)を見直すこと が要請されている。

具体的にどういう面の見直しをするのか、住所変更に 伴う手続きのワンストップ・サービスを例に挙げる。

住所変更は、関係機関にいろいろな手続きをする必要 があるが、関係機関の中の1カ所で手続きを済ませる場 合、制度面では、①関係機関の所掌事務、権限、管轄区 域の問題、②当該事務を処理する職員の身分問題(市町 村の職員が国や都道府県の窓口事務を処理する)などが ある。

また組織の面でも、これまでの縦割りのピラミッド型 の組織でよいのか、国民全体に身近な分野は総合窓口の 組織にしたらどうか、行政の運用面でも仕事のやり方や 手順は従来通りでよいかなどの見直しが要請される。

いずれにしても見直し時に一番重要なことは、行政サ ービスのカスタマーである住民のニーズや利便性の観点 からの見直しの必要性である。

●時間的、空間的制約からの解放

情報通信技術が発達すると、「時間的、空間的制約か ら解放される」と言われる。今まで何時間もかかってい た事務処理が瞬時に処理されることもあるが、一番典型 的なのは ノンストップ・サービス で、「24時間365

日いつでも都合の良いときにサービスが受けられる」と いう時間的な制約からの解放である。

空間的な制約からの解放として、国民が役所の窓口を あちこち駈けずり回るのではなく、行政サイドが情報を 動かして、国民は窓口1カ所に行けばすべての用が足り る ワンストップ・サービス がある。

その延長線上に、電子図書館、電子博物館、遠隔医療、

遠隔教育などが考えられる。また、今は住民票やパスポー トは自分の住んでいる市町村や都道府県でしか入手でき ない行政区域に基づく居住地申請が立て前になっている が、これを全国どこにいても行政サービスを受けられる ようにする マルチアクセス・サービス もある。

●行政情報の電子的提供の拡充

課題−電子政府・電子自治体の実現 (1)政府における行政情報化の動向と課題

①インターネット・ホームページによる

情報提供内容の充実、タイムリーな提供など 柱の1つは、ホームページによる情報提供内容の充実 である。国も地方公共団体も、積極的に情報提供の推進 に取り組んでいる。今、国関係では400数十のサイト

でホームページが開かれ、自治体でも全都道府県・市区 町村で約1,000超のホームページが開かれている。最 近は提供される情報の中身も充実してきており、ガス事 故に関するきめ細かな情報、学生向け就職・アルバイト・

宿舎情報など、日常生活に役立つ情報も提供されてきて いる。

また、いくつかの省庁で官報公示と並行してインター ネット上で入札公告の情報を流している。さらに、郵政 省では、購入する物資のカタログ情報、あるいは納品検 査の申請の受付、競争に参加するための資格審査の受付 もインターネット上で行っている。電子認証制度が確立 されると、文字通りの電子入札が実現されると思われる。

さらに、いろいろな許認可の申請・届出、行政手続きや 申請様式の案内をインターネット上で国民に提供するこ とも行われつつある。

②各省庁クリアリング・システムおよび 総合案内クリアリング・システムの整備

総合案内クリアリング・システムは、私が在籍する行 政情報システム研究所が政府から委託を受けて作業して いる。現在、国の400数十のホームページは、どこに どういう情報があるか、初めから終わりまで見ないとわ からないという状態で不便である。また、各省庁が縦割 りでホームページを作っているため横のつながりがな い。そこで、政府全体を通じる横断的な総合案内版「総 合案内クリアリング・システム」を立ち上げ、その中に、

ホームページの政府横断的な検索案内機能を持たせよう という作業が進められている。

●申請・届出手続きの電子化

政府の計画によるとワンストップ・サービスの整備方 針に基づくオンライン化推進方策を2000年度末まで に策定することになっている。このワンストップ・サー ビス整備方針は、段階的に進める予定である。

*第一段階:各種の許認可、届出の手続き案内、申請書 の様式などを国民に情報提供する。

*第二段階:入手した申請様式に必要なデータを入力し

て各省庁に送り返す。この申請・届出のオンライン化 の推進方策を2000年度末までに策定する。

*第三段階:これらの各種手続きの中で、関連あるもの を一括処理する。

上記に関わらずオンライン化できるものは各省庁で積 極的に進めていく。例えば、登記情報のオンライン化は、

すでに国会で法案が成立しており、今年から幾つかの登 記所で登記簿をインターネットで閲覧できる仕組みが稼 働する予定である。特許出願のオンライン化も、すでに パソコン通信で実施中だが、これをオープンなネット ワーク(インターネットなど)で特許出願できるようにす る取り組みが行われている。

また、今年1月から、通産省の新世代統計システムが 運用を開始し、所管の企業を対象とする統計調査、工業 動態統計、商業動態統計調査などを、データの収集から 統計調査結果の還元に至るまで一貫してネットワーク上 で行うシステムが稼働する。労働省も、労働統計オンラ イン・システムの試行運用を本年度中に開始する。また、

郵政省も電気通信事業者からの料金・財務状況の報告を 昨年からインターネットで受け付けている。いずれにし ても、政府の行政手続きのオンライン化は非常に急速な 勢いで進んでいくものと思われる。

ネットワーク上のやりとりをする場合、解決すべき課 題が幾つかある。1つは、ネットワーク上の本人確認、

または認証(第三者による本人確認の証明)の必要性であ る。2つ目は、許認可の申請や届出、役所側の処分情報 などが本当に相手方に到達したかという到達確認の問 題。3つ目は、電子文書が本当に本人の意思に基づいて 作成され、かつ改ざんされていないという電子文書の真 正性の確保の問題がある。

さらに、ネットワーク上で手数料をどう払うのかなど の問題もあるが、総務庁が学者などによる検討会で研究 しており、今年度中には何らかの方向性付けがなされる と考えられる。

次に、ネットワーク上の本人確認、認証の問題、電子 文書の真正性の問題について、政府部内でどのような取

り組みがされているか簡単に紹介する。

まず、許認可の申請、届出などの行政手続きをネット ワーク上で行う場合、「申請する側が本人かどうかとい う認証」と「許可または不許可する政府・自治体サイドの 認証」の双方の認証が必要になる。現在のように本人が 役所の窓口に出頭して必要な申請書に一定の事項を記載 し提出する場合は、本人であるかどうか、提出された申 請書の中身が正しいかどうかは、あまり問題にならない。

しかしネットワークを通じてやりとりをする場合、相手 が見えないため、本人かどうか、電子文書が途中で改ざ んされていないかが問題になる。

そこで申請者側の認証については、申請者が企業であ る場合、「商業登記制度に基礎をおく電子認証制度」を法 務省で検討中である。おそらく今年の国会に法案が出さ れ、運用テストが始まると思われる。企業が、商業登記 簿に登録されている企業に間違いないかどうか、また代 表者が正当な権限を持っているかどうかを証明してほし い場合、登記所か認証センターが電子証明書を発行する 仕組みになる。企業の場合、これが政府に対する有力な 本人確認、認証の手段として使われると考えている。

もう1つは政府サイドの認証の問題である。ネットワー ク上で労働大臣の許可が出たものを、電子的に送る場合、

本当に労働大臣の発した許可なのか、中身が改ざんされ ていないかが申請側としては問題になる。これに関して、

政 府 サ イ ド の 認 証 は 、 Government  Public  Key Initiatives(政府の公開キー認証基盤)という形で、総務 庁の下で検討が行われようとしている。公開カギ、ある いは秘密カギという暗号技術を利用した仕組みになると 思われる。

●ワンストップ・サービスの推進

①ワンストップ・サービスの整備方針に基づき、

行政手続きの案内・教示、様式のオンライン提供 から段階的に実施

各省庁のホームページの行政手続案内情報を政府横断 的に検索できる総合行政サービス・システムを2000年

度中に立ち上げる。省庁間、または国と自治体の間の連 携を図りながら、ワンストップ・サービスを総合的、計 画的に進めていくことも決められており、国と地方が一 体となったワンストップ・サービスを進めていく。

②手続きのオンライン化、ワンストップ・サービス の基盤となる研究開発などの推進

③当面のワンストップ・サービスの実現

法務省では、前述の「商業登記情報に基礎を置く電子 証明書を登記所から発行する制度」のシステムについて、

本年度中に運用テストまたは運用されると思われる。郵 政省では、郵便局でさまざまな手続き・サービスの申し 込みを可能とするキオスク端末の設置、テレビ電話相談 機能を付加する実験、自治体の要望による住民票の写し などを交付する自動交付端末設置の試行作業も行われる。

輸入品を積んだ船が入港する際、港によっては港湾管 理者、海上保安庁の港長の許可が必要となる。その許可 手続、また貿易管理法で許可が必要な場合の輸出入の許 可手続、動植物の検疫が必要な場合の手続き、食品衛生 上の許可が必要な手続きなどを1つの画面上で処理する ため、輸出入港湾手続きのワンストップ・サービスのシ ステム開発が行われている。

現在、港に接岸して貨物を下ろす際の通関手続は、

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