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流通業SCMにおける需要予測ならびに Logisticsの重要性

ドキュメント内 The Executive Magazine from Unisys INDEX Vol.81 (ページ 44-56)

岡本 竜馬氏 株式会社

三井物産戦略研究所 流通エンジニアリング室 SCM推進チーム 三井物産株式会社 運輸第三部LSSチーム 神田 正美氏

株式会社

三井物産戦略研究所 流通エンジニアリング室 SCM推進チーム チームリーダー

神田 正美氏 岡本 竜馬氏

はじめに

我々は「SCMとは、サプライチェーンであると同時に、

デマンドチェーンのマネジメントでもある」と考えてい る。消費者に対して「顧客満足を最大限にするために、

製造・配送・販売に従事する各業者が協働して、これに当 たるもの」と解釈している。

顧客満足度を上げるのものがECR(エフィシェント・コ ンシューマ・リスポンス)の概念である。効果的な販促・

品揃え・新商品導入、および効果的な商品補充を行うの がECRの考え方で、ECRを確立するのがSCMという取 り組みである。

効果的な販促・品揃え・新商品導入は、カテゴリー・マ ネジメント、マーケティング、スペース・マネジメント が受け持つ分野であり、効率的なSCMである。一方、

効率的な商品補充を行う部分が「ロジステックス」であ り、効率的なSCMである。したがって、その両方をう まくリンクさせるために、「製造・配送・販売の各部隊が 協働化という形で取り組むもの」がSCMである。

流通業SCMが必要とされる環境

当社では、通産省の支援を受けて、製・配・販、つまり メーカー/卸売/小売業の3者の需要予測をベースとした SCMの仕組みづくりに取り組んでいる。メーカーと販 売会社、あるいはグループ内での製・販のSCMの例は多 く見られるが、資本関係がまったくないメーカー、卸売、

小売業の取り組み例は日本にはなく、今回が初の取り組 みであった。

今、日本の企業は、製・配・販のSCMに取り組むべし との意識が強くなってきている。その背景には、小売業 全般が消費者の多様化および消費低迷で苦しんでいるこ とが挙げられる。

メーカーと小売業の間に立つ卸問屋も苦闘している。

卸問屋は、商流・物流を受け持っているが、流通業全体 の厳しさとともに次第に口銭が少なくなる一方で、小売 からジャスト・イン・タイム配送の要求と各店舗向け同時 間帯1日3回配送を強いられて、物流面の厳しさを商流 で何とかカバーしている。これでは効率の良いデリバリー 計画を立てたくても、現実面ではサービス・レベルを維 持しながらの効率達成は難しい。

さらに小売の戦略として、これまでは問屋別に、エリ アごとに競わせながら流通コスト削減策が取られてきた が、最近はさらなる削減を求めて、例えば、関西地区な ら関西地区全体を1つの卸問屋に物流を任せてしまう 一括物流方式を採用する例が多くなってきた。一方で、

他の問屋に対しては、商流だけは従来の形を残すが、それ も機能が満たせないと切るかもしれないという小売サポー ト機能を重視するやり方に変わってきた。

しかも、一括物流を受け持った卸問屋は、今度は物流 の専門業者と競争しなければならないということで、卸 問屋も大変な時代を迎えている。そして、メーカーも消 費ニーズの多様化の中、ヒット商品といえどもライフサ イクルが短くなり、作れば売れるではなく、消費者嗜好 を捉えても、いつまでも収益に貢献するわけではないの で同様に苦しんでいる。

製・配・販のすべてが苦しんでいる。しかし、実態は、

苦しいのではなく、消費者の真のニーズが各々的確に把 握されていないからだ。これまでは、小売側が消費者 ニーズを考えて、それに見合った新しい業態を作り、そ の新しい業態をメーカー、卸が支えてきたという状況に あった。正確には小売がメーカーや卸に「手伝いをさせ ていた」と言える。

SCMの考え方は、「手伝いをさせること」ではなくて、

皆が一体となってパートナーシップの下に、協働しなが ら消費者ニーズを点と捉えるのではなく、面として立体

流通業SCMにおける需要予測

三井物産戦略研究所 神田 正美氏

的に捉え、最適な業態、事業に取り組むことである。

また、メーカー、卸、小売にしてもよく調べてみると、

重複する業務が営業面、物流面でたくさんある。近年で は、1日3回配送が当たり前になったことから毎日オー ダーや週3〜4回オーダーが一般的に行われているが、

「本当に、すべての商品に対し3回配送や毎日に近い オーダーが必要なのか」といったことなどを見直してみ ることにした。

我が国初の製・配・販SCM実現に挑戦

アメリカでは、従来の商習慣にとらわれることなく、

効果が上がると思えば、どのような経営手法も当たり前 に導入し、効率的に使いこなしている。トヨタのカンバ ン方式、コンビニのジャスト・イン・タイムなどは自分た ちがさも開発したように採用し、効果を上げている。し かし、日本の場合は、業界ごとに商習慣もあって、それが 壁となってできにくい。そのような状況下で、我々は本 当にSCMという3者協働体制が可能になるのかという問 題に挑戦した。すなわち、小売業第4位の「マイカル」と日用 雑貨卸最大手の「パルタック」および洗剤・ホームサニタ リーなどのワールドワイドな大手メーカー「P&G」という 組み合わせで、「SCMにおける需要予測および同予測に 基づく自動補充発注システム」の実現に向け取り組んだ。

こうした取り組みを机上の空論で終わらせないため に、いままでの業務ルールを含めて、我々が考えている 新しい日本型のSCMの概念を取り入れれば、本当に効 果が上がるのかを、具体的に定量目標を立ててその実現 をサポートするシステムを作り、昨年10月から12月ま での約3カ月間かけて実証実験を実施した。

それに先立って98年12月に関係各社を集めキックオ フ・ミーティングを行い、以降分科会、ステアリングな ど毎月2〜3回会議を行い、商品、店舗、センターおよ び業務内容を具体的に決めて、昨年10月からの実験に 漕ぎつけた。

実験対象の商品、 店舗、 物流センターの概要

実験対象商品は、P&Gが生産するランドリケア、

ホームサニタリー、ヘアケアのカテゴリー全単品を対象 とし、「マイカルSATY」の標準的な生活百貨店である

「新金岡店」を実験対象店舗とした。

実験センターは、日用雑貨卸問屋パルタックが運営し ているマイカル近畿全店(41店舗)の一括物流を受けてい る物流センター「近畿暮らしの街3PLセンター」である。

この製・配・販の3者の組み合わせでSCMの実験をスター トさせた。

3者によるサプライチェーン・フローは、図1のような 形になっている。

マイカルの店頭在庫(バックヤードを含む)は約30日で ある。そして、新金岡店は、非常にうまく運営されてお り、実際の店頭在庫は30日を割り、業績もSATY店の 中では優良店である。

栃木工場:紙製品 高崎工場:洗剤・シャンプー 明石工場:紙製品 滋賀工場:Max Factor 海外工場:

A社 B社 C社 栃木工場

高崎工場 明石工場 海外工場

渋沢 営業倉庫

(全国8倉庫) 共同物流

①ベンダとの在庫水準の共有

②カテゴリ別

  保管〜ピッキング〜配送

③売出し品のクロスドック

暮らしの街3PLセンター

(マイカル→パルタック)

マイカル近畿

(41店鋪)

1日 受注後1〜2日 1日

P&G

図1 3PLサプライチェーン・フロー

また、パルタックの暮らしの街3PLセンターも同様に 非常にうまく運営されているセンターである。

P&Gは、外資系で売上4兆円以上をあげている大メー カーで、合理的な経営をしている。

この3者によってサプライチェーン・フローのさらな る効率追求を狙ったのが、今回の実験である。

ABCによる徹底したコスト構造を分析

実施ステップとしては、図 2に示すように、まず ABC(Activity  Based  Costing)によるコスト構造の分 析を行った。各社が実施している営業活動、製造活動、

管理業務など一切合切の業務フローをコスト分析するこ とによって、以下のような「改善機会の発見」を試みた。

*効率的な業務処理をしているのか

*3者の業務で重複している部分はないか

*商談、発注方法、品揃え方法、在庫水準はこれでよい のだろうか

*店舗とメーカー間で決定すること、小売本部とメーカー の間で決定すること、など分けてルールを決めたらど うだろうか

*オーダーの回数を減らせないだろうか

などをはじめ各種改善機会を発見して、「新しい業務モ デル」と「サプライチェーン管理モデル」を構築した。

同時に、メーカー、小売、卸売が、それぞれバラバラ に実施していた販促活動を効率化するため各社協働によ

る販促を整理した。

消費者がどの商品をどれだけ購入するかという需要予 測をするために「店舗・商品のクラスター分析」を行った。

つまり、店や商品の特性・属性を分析して消費者の立場 に立って店・商品をクラスター分けした。その結果に基 づき「クラスターに応じた需要予測モデルの構築」と「ク ラスターに応じた店頭政策の立案」を試みた。

特売の売上見込みが欠品や在庫過多という大幅な振れ を招いていたが、今回の需要予測は、この見込みによる 振れを避け、ネットの売上増に結びつくかがポイントに なる。今までは、経験と勘で、各店から物流センターに オーダーがいく。センターは在庫の有無を確認して各店 に配送する。そのオーダーは1個からケース単位とバラ バラで、センター在庫が少なくなってくると、センター がメーカーにオーダーを出す仕組みになっている。その 方式で本当によいのであろうか。

メーカーは、小売段階で、どの商品がどれだけ売れる かを把握したい。販売情報と生産活動をリンクさせ一致 させれば、究極の効率化が図れるからだ。現在、一般的 にセンターはどこでも在庫が減ってくると、それを補充 するという補充システムはできている。

しかし、小売業は、特売を土・日に行うことが多い。

普通、特売がかかると通常日の2〜3倍は売れる。しか し、隣のライバル店も同じ日に特売をすると2〜3倍の オーダーは多すぎて売れ残ってしまう恐れがある。その 予測は店長、あるいは売り区長クラスの経験と勘で行わ れてきた。結果的には、オーダーが多すぎて「在庫過剰」

となるか、逆に「欠品」を生じるかの2現象が起きてしま う。この問題を何とか解決したいというのが、今回の 我々の取り組みであった。

コスト構造を分析しコスト削減項目を抽出

取り組みは、各社のコスト構造分析から始まった。そ のため、図3のように3者の利益構造を開示してもらい 明細費目ごとの数値を共有した。こうしたコスト構造の 中で、どの部分のコストを削減できるかを皆で協議・検 討した。

SCM化の目的が、「流通コストの削減」だけでは不充

ABCによるコスト構造分析 業務フロー分析

クラスターに応じた需要予測モデルの構築 クラスターに応じた店頭政策の立案 改善機会の発見

新しい業務モデルの構築

サプライチェーン 管理モデルの構築

販促パターンの整理 店鋪・商品 クラスター分析

*ABC:Activity Based Costing  活動別に単価×時間×頻度でコスト把握

実験の実施 図2 実施ステップ

ドキュメント内 The Executive Magazine from Unisys INDEX Vol.81 (ページ 44-56)

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