第3章 文献レビュー
3.2 シニア人材の活用に関する先行事例文献
3.2.1. 行政の取り組み
(1)中小企業庁:企業等OB人材活用推進事業
日本商工会議所(2007)から、本事業の概要を知る。
事業概要
企業等OB人材活用推進事業は、経営戦略の見直しや新事業展開のために人材を必要と している中小企業と、退職後も自らの知識・経験・ノウハウを生かしたいという意欲を持 つ企業等OB(OB人材)とのマッチング(出会い)を支援する中小企業庁の事業である。
中小企業庁では、本事業を日本商工会議所に委託し、日本商工会議所から各都道府県に 1 ヵ所設置した地域協議会への再委託により実施している。
平成15年度の事業開始から平成19年までに、全国で6,297人が「OB人材データベース」
に登録され、支援可能分野別の延べ人数では 14,000 人を超える規模となっている。また、
企業とOB人材のマッチングが成立した件数は2,829件にのぼる 。全国協議会が実施した 実態調査 によると、本事業を通じてOB人材を活用した中小企業の7割以上が、OB 人材 の活用によって経営に役立つ成果があった、8割以上が今後も本事業を活用したいと答え ている。また、登録OB人材の8割近くが、今後も事業に参加する意欲を持っている。
事業の目的
本事業は、次の目的をもって実施されている。
①中小企業支援人材の確保
一般に、中小企業は人的な資源が十分ではなく、特に、経営戦略の立案等を担う人材や 新事業展開のための人材が不足していることが多い。こうした中小企業に対して、大企業 や中堅企業、研究機関等を定年退職したOBがアドバイザーとして助言を行うことにより、
大企業・中堅企業がもつ経営ノウハウや技術力が中小企業に移転され、経営戦略の見直し や新事業展開が加速することが期待できる。
中小企業は、内部に経営ノウハウや技術力が不足していても、その不足を埋めるべき人 材を新たに雇い入れることは容易ではなく、また、相対的に資金力が十分ではないため、
民間の専門コンサルタントからノウハウを求めることも容易ではない場合が多い。
②企業等OBに能力活用・生きがいの場を提供
中小企業庁の施策という位置付けから、本事業の主目的はあくまでも中小企業支援であ るが、併せて、企業等を定年退職したOBに、出身企業において長年培ってきたノウハウ や経験を活用する場を提供することが期待されている。また、企業等OBは、自らが持つ ノウハウや経験を中小企業に対して提供することで、現役時代に十分取り組むことができ なかった社会貢献や地域貢献を果たすことができる。
大企業・中堅企業で定年まで勤め上げ、無事にリタイアして年金生活に入ったOBは、
お金の面でも時間の面でも比較的余裕がある。生活のために収入を得ることよりもやりが い・生きがいを重視するOBを起用することで、支援に対する報酬を比較的安価に抑える ことができ、企業の費用負担を軽くすることができるという想定が前提になっている。
本事業の実施は、中小企業庁から日本商工会議所を通じて全国の商工会議所に委託され ている。商工会議所は、地域の総合経済団体として幅広い事業を実施しており、中小企業 支援は商工会議所活動の大きな柱である。従って、地域の中小企業がどのような経営上の 問題点や課題をもち、どのような支援ニーズが存在するかを日常的に把握している。加え て、全国で 520 の商工会議所が活動しており、その全国的なネットワークを活用すること で、本事業のために新たな組織を立ち上げることなく全国での事業展開が可能になってい る。
事業のしくみ
本事業の基本的なしくみは、以下の通りとなっている(図 3-4 参照)。ここで、各地の商 工会議所は、企業等OBの発掘・登録、中小企業の相談の受け付け、及び中小企業と企業 等OBとのマッチング支援という役割を果たしている。
①各地の商工会議所が中心となって、中小企業への支援意欲がある企業等OBを発掘し、
「企業等OB人材データベース」に登録する。
②各地の商工会議所が中小企業からの相談を受ける。
③相談内容をもとに、専門分野や経歴などを考慮した上で、登録OB人材の中から適任と 考えられるOB人材をピックアップし、中小企業に紹介する(マッチング)。
④中小企業とOB人材の意志が合致すると、マッチングの成立となる。報酬、支援期間、
支援回数等の具体的な支援条件は、活用企業とOB人材との直接交渉によって取り決める。
図 3-4 事業のしくみ 出所:日本商工会議所(2007)
本事業を推進するための組織の中心は、都道府県単位で設置された地域協議会である(図 3-5参照)。地域協議会は、各都道府県の県庁等所在地の商工会議所または幹事商工会議所 に設置され、地域における事業推進機関として人材のデータベース登録やマッチング等の 活動の中心となっている。地域協議会以外の各都道府県内商工会議所は、地域協議会と連 携を取りながら、人材の発掘や登録を行うとともに、管内中小企業の相談窓口となる。日 本商工会議所は、「全国協議会」として、全国的な普及啓発活動、関係機関との連絡・調整 などによって、事業の全般的な推進のために活動している。また、構築した「OB人材デ ータベース」は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が提供するインターネット上のポー タルサイト内で公開される。中小企業基盤整備機構では、OB人材マッチング事業の関連 事業として、OB人材の中から特に優秀な人材を登録し、企業の要請に応じて派遣する「企 業等OB人材派遣事業」を実施している。
(出所)日本商工会議所webサイト
(http://www.objinzai.jp/user/index.shtml)
本事業は、中小企業庁の委託事業であることから、委託費で運営費を賄っている。商工 会議所は、マッチング事業の提供に関して、中小企業からもOB人材からも料金は徴収し ていない。
図 3-5 OB人材マッチング事業の組織 出所:日本商工会議所(2007)
事業の実績
本事業の実績概要を次に示す。
①OB人材の活動状況
平成18年9月末までの登録OB人材数は6,297人(分野別の延べ人数では約14,000人)、
マッチング成立数は 2,829 件(分野別の延べ件数) となっている。ただし、日本商工会議所
(2006) によると、登録OB人材のうち実際にマッチングを受けて中小企業の支援を経験し
た人はおよそ4人に1人(23.9%)であり、全体の半数以上(55.0%)は支援案件の紹介を受けた 経験もない。
②活用実態
実態調査 によると、中小企業が本事業を利用することを決めた理由(複数回答)は、「豊富 な知識やノウハウを持つ人材が活用できるので」を約8割(79.6%)の企業があげ、次いで「実 務経験がある人材が活用できるので」を約5割(49.2%)の企業があげており、OB人材の豊 富な知識・ノウハウと実務経験に対する期待がうかがえる。
中小企業がOB人材を活用した分野は、「技術・製品開発」が最も多く、次いで「生産管
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全国協議会
(日商)
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大手・中堅企業 中小企業庁
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連携
県内の商工会議所 OB人材の
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3-6 市場環
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